1『俺たちの日常』
これからよろしくお願いします。
更新は不定期です。
俺の名前は古井隼也。
まぁ、どこにでもいる普通な中学生だ。
いきなりだが、『日常』ってなんだと思う?
辞書には「常日頃」や「普段」と書かれている。
しかし、誰しも同じ事をして生きているわけではない。
人それぞれ違った生き方があり、恐らく生きることに正解というものは無いのだろう。
それなのに『日常』という言葉はあたかも生きる正解の道を指しているように俺は思う。
と、偉そうに講釈垂れてはみたが、たかが公立中学に通う一学生のくだらない考えだ。
人それぞれの考え方がある以上、俺と違う考えを持っている人は五万といるだろう。
それを否定するつもりは毛頭ないし、そんな権利も持ち合わせちゃいない。
しかし、これから書いていく俺のこの一風変わったコメディのような生活は果たして『日常』と呼べるのか、少し考えてみてほしい。
答えは幾らでもあるだろう。
そして、その答えが読者の皆様の生活をほんの少しでも色鮮やかなものに出来たらいいと思う。
さあ、8行くらい後から俺の日常について語るとしよう。
ま、気楽な感じで読んでくれ。
ーーとある月曜日の休み時間ーー
「なぁ隼也、四時限目の体育ってなにするんだっけ?」
こいつ名前は峰村敬之。俺の親友だ。
渾名はノリ。
小学校低学年の頃からつるんでいる。
中学になってバスケ部に入ったのもコイツに誘われたからだ。
真面目なのか不真面目なのかよく分からない性格をしていて、手をつけられないこともしばしばある。
それでも、根っこはいい奴だ。多分。
「今日は卓球じゃなかったか?」
「そっか。サンキュー」
そう言ってノリは去っていった。
何がしたかったんだ。
俺は手に持っている教科書に目を落とす。
座学は割と得意だ。学校では上位10%程度には入っている自信がある。
そうは言っても歴史なんかは覚えないと点数取れないからな。だからこうやって休み時間を削って軽く復習してるわけだ。
次の三時限目は国語か。古文めんどくさいんだよな〜。
などとどうでもいい事を考えつつ、足利義満だの金閣寺だの教科書に書いてある大事なデータをありったけ頭に詰め込んでゆく。
そうこうしてるうちにチャイムが鳴る。国語の始まりだ。
俺は歴史の教科書を片付けつつ、大きくあくびをする。
古文は眠たくなるからな。今のうちに欠伸しておけば少しは授業中の欠伸は我慢できるだろう。分からんが。
「しゅんっち、悪いけど教科書見せてくんね?」
そう声をかけてきたのは隣の席の三浦咲夜だ。
学校あるあるの隣の席は異性ルールに則り、俺の席の隣は勿論女子だ。
その隣の席の咲夜が俺に教科書を見せてくれと言っている。
異性耐性が平均より低いであろう俺は異性と話すのは少し苦手だ。
まぁ、咲夜はやけに馴れ馴れしいお陰で話しにくさ倍増なんだがな。
しかし、こんな事でいちいちラリってたらきりがないと思い、普段の口調を取り繕って応える。
「忘れたのか?まぁいいや。ほらよ」
そう言って雑に閉じた教科書を咲夜に渡す。
咲夜は目を少し見開き、
「え、しゅんっち、見せてくれるだけでいいんだけど...」
と言ってくる。
しかし俺はこういう古文なんかは色々書き込みたくなる性格だから、教科書の本文をそっくりそのままノートに既に写してある。だから正直教科書がなくても問題ないのだ。
「本文ノートに写してあるし使っていいぞ」
「そうは言っても...」
「しかもこの程度の文なら暗記してある」
「えぇ...(ドン引き)」
「なんだその顔」
「いやぁ...凄いなぁと思いまして...」
絶対嘘だろ。ドン引きした目で俺をみてたぞ。
そう思いつつ、俺が返事をしようと口を開いた瞬間、
「そこ!うるさいぞ!」
国語の教科担任が叫んでくる。
お前が一番うるせぇよ。と心では思いつつ、
「すいませんでした。」
と一応謝っておく。
そうすると、教師は鼻をフンと鳴らし、長々しい説明に戻る。嫌味っぽいな、あの教師は。
(しゅんっち、じゃあ教科書借りちゃうね)
(ああ)
(あと喋ってた責任負わせちゃってごめん)
(そんな事気にすんな)
そう小声で会話しつつ、お互い授業に集中することにする。
咲夜はチャラいくせに集中力は高いんだよな。
尊敬する。
そんなこんなで授業は進んでいくが、ここからは特にハプニングはなかったから割愛させて貰おう。
そして今日一番のハプニングは給食時間に起こる。
ーー給食時間ーー
さて、四限目の体育でいい感じに腹も減り、給食が美味しく食べらそうだ。
などと考えつつ俺は給食受け取りの列に並ぶ。
今日の給食は白米、粉吹き芋、コロッケに豚汁だ。勿論定番の牛乳ももれなく付いてくる。
好き嫌いはあまりないが、コロッケは好物だ。余ったらジャンケンで取り合いになる事間違いなしだし、今のうちから何出すか決めておくか。
そんな事をぼんやりと考えつつ、何も考えず給食を受け取り席に着く。
・・・あぁ腹が減った。何も考えたくない。
そうボーっとしていたらいつの間にか食い始めの挨拶の時間が来たようだ。
「手を合わせてください」
「「「はい」」」
「感謝して食べましょう。美味しい給食いただきます」
「「「いただきます」」」
中学生にもなってこの挨拶はないだろといつも思う。
まぁ俺は声に出して「いただきます」を言う派ではないからそこまで関係ないのだが。
などと自分の世界に入って考え事をしていたら、急に背中に熱さを感じた。その次にグッチョリとした濡れた感覚。そして豚汁の香り。
俺は大きくため息をつく。絶対背中に豚汁掛かった。
そう思い後ろを向くと、涙目で申し訳なさそうにしているクラスメイトの女子が棒立ちしていた。
その女子の手にはやけに少ない豚汁の器がある。
全てを察した。
しかも運の悪いことにこの女子は気が弱いタイプだ。
俺は普段口数が少ないこと、あまり笑わないこと、溜息が癖ついていることなどの理由で一部の生徒から「仁王」というあだ名をつけられた事がある。
多分それを知っていて俺が怒らないか怖がっているのだろう。
「怪我してないか?」
取り敢えず俺はそう声をかける
やっぱり女子と話すのは苦手だが怖がられていては始まらない。そう思い適当に心配することにする。
「は、はいっ!」
「ならいいが...」
怪我が無いならまぁいいだろう。
俺はテッシュをポケットから出すと床に溢れている豚汁を取り敢えず吸い取る。
「あ、あぁ...あー、あ...」
こぼした奴が何か言おうとしているが、「あ」だけでは残念ながら俺には理解できん。
「どうした? 『あ』だけじゃ分からん」
「う、うん...」
「で、どうしたんだ?」
「ご、ごめんなさい!」
なんだ、謝りたかったのか。確かに制服からはいい感じに味噌の香りがするが、別に謝るほどのことでは無い。と、思う。
「別に気にしてない」
「それでも...」
「まぁ部活のTシャツ着りゃあいいし」
「え、あ、うん...」
「失敗くらい誰でもする。いちいち気に病むな」
「うぁ...ん、ありがと...」
実際部活の前に着替えないで済むと思えば得したとも思えるしな。
それにいちいちこの程度の事で悩む必要はないだろう。
「先生、着替えてきていいですか?」
「どうぞ」
「ありがとうございます」
俺は許可を取りトイレに入る。そこで部活のTシャツに着替え、学校指定のジャージを上から羽織る。
これで万事解決だろう。
俺が教室に入ると、床の豚汁が綺麗に拭かれていた。その横にはテッシュを持ったノリの姿が。
「ノリ、悪りぃな。あんがとさん」
「どういたしまして。貸し一個な」
「はいはい」
そんなくだらん会話をしつつ俺たちはお互いに席に着く。
貸し一個って言ったって精々コーラ一本奢らされる程度だろう。
俺は薄い笑みを浮かべつつコロッケを口に運ぶ。美味い。
それを見ていた咲夜が一言、
「しゅんっちが笑いながら食べてる風景ってなんか怖い」
余計なお世話だ。
親友に感謝しつつ好物を食えば流石の俺でも笑みの一つ浮かべるぞ。
「なんか不気味っていうか、悍ましさを感じるね」
俺のメンタル壊しにきてるだろ。
それとも俺は笑ったらいけないのか?
「あ〜珍しいもの見れた」
謎の満足感出すな。
俺の笑顔がそんなレアだって思われてたなんてな。
その会話を聞いていたノリが、
「おーい、そこ、いちゃつかないでね。」
誰がいちゃついているだコラ。
そもそもまともに女子と会話できん俺がいちゃつくなんて夢のまた夢だろう。
流石に俺も言い返しておくか。
「ノリ、嫉妬すんなって」
「うるせぇ非リア」
ノリまで俺のメンタル壊す気満々だな。怖っ!
確かにあいつには彼女いるけどな。何人目かは忘れたけど。
「はいはい三股さんは静かにしましょ?」
「今は二股でした〜」
「それ自慢じゃねぇからな?ドヤ顔で言うなよ?」
そう言うとノリは黙る。
そして2人同時に吹いた。
「じゃあお前も頑張って彼女作れよw」
「余計なお世話だ」
勿論これがふざけて言っていることはお互い理解している。
全く、最高で最低な親友を持ったものだ。
そんなこんなで一日は過ぎてゆく。
いい感じに刺激があり、かといって平和な『日常』は明日も続くのだろう。
次回とその次の回で主な登場人物は全員出す予定です。




