魂の叫び
半角キーボード打ちなので、段落などのスペースがないです!申し訳ありません。
短めなのでサクって読めます。
「アニミズムとは、生物・無機物を問わないすべてのものの中に霊魂、もしくは霊が宿っているという考え方。19世紀後半、イギリスの人類学者、エドワード・バーネット・タイラーが著書『原始文化』の中で使用し定着させた......か」
自室で小説を読んでいた青年は読んでいたページにしおりを挟み、机に置いた。
「バイトの先輩から小説譲ってもらったけど、やっぱり読書苦手だなぁ。まだ半分もいってないや」
青年の住んでいるのは10階建てマンションの7階。1人暮らしをする際、親が、最初の数ヶ月だけ家賃を免除するというということでこのマンションに決まった。
と言っても、まだ職にありつけずにバイトで食い繋いでいる日々を暮らしている。
「やべ! そろそろバイト行かなきゃ!」
部屋の時計を見た青年は急いで支度を始める。
ちなみに間取りは1LDK。かなり広い方。
しかし片付けが苦手なのでかなり部屋が汚い。物が散らかっているなどではなく、ホコリなどがかなり目立つ。
そこで彼が取った行動は......
「今日も頼むよメイ」
「はい! 綺麗にしますねご主人様!」
私はある日この家にやって来た掃除屋さん。
と言うより住み込みで働いてるからメイドと言った方が正しいかな。
今のように頼まれたら掃除をする関係。普段はある空き部屋を使わせてもらっている。
「よし! 今日も頑張るぞ!」
今日もご主人様からの期待に応えるべく、張り切っていると玄関から物音がした。
ガチャ
「行ってらっしゃいませ!」
バタン
返答はなかった。きっと急いでいたんだろう。
「もう! またこんな汚くなってる。早く終わらせよ♪」
***
「ふぅ、終わった終わった!」
時計を見ると、短針が17時を回ろうとしていた。
ご主人様が帰ってくるのは18時過ぎだから、自分の部屋で待っていよう。
「あ! ベッドの下掃除するの忘れてた!」
ホコリが溜まりやすいベッドの下を掃除し忘れていたメイは、急いでベッドの元に向かう。
「じゃあ早く終わらせ......」
ここで私は変な事を思いついてしまった。
いつもはご主人様を目の前にすると、緊張しちゃって言えないけど......この形なら恥ずかしくないし、ちゃんと好きという気持ちを伝えられると。
「......よし」
覚悟を決めた私は、早速その作業を始める。
ベッドの下のホコリをかき集め、2つの文字を作りあげる。
「ここをこうして......出来た!」
完成し、ウキウキ気分の私はご主人様がどんな反応をし、どのような返事をしてくれるかなど、色々妄想しながら自分の部屋に戻った。
***
ガチャ
「ただいまー」
バイトでクタクタになった青年が帰ってきた。
そしてそのままにベッドにダイブしようとしたが......
「何だ? これ」
青年がベッドの前にホコリの山があることに気づいた。
「ちゃんと掃除しなかったのか? ってこれ何か文字っぽいような......」
「どうかな?」
ドアの隙間からご主人様の様子を伺ってみる。
「気づいてくれるかな......『スキ』って」
青年がその文字の意味に気づくと複雑な表情を浮かべた。
と同時にその場を離れ、ほうきを持ってきてホコリの文字を掃除した。
「やっぱり、雇われの身との関係はダメ......なのかな」
「いやいやまだ分からない! きっと確信を得てないんだわ! 次もやってみよう! もしそれでダメだったら、キッパリ諦めよう!」
そう言い聞かせた私は少し早いが、お腹も空いてないし眠りにつくことにした。
***
「あ! そろそろバイト行かなきゃ」
翌日のお昼すぎ、青年はバイトに行く準備をする。
「ご主人様! 今日もお掃除任せてください!」
私はいつも通り、元気にご主人様と接触する。
「......今日はやめとこう」
少し考える素振りをして、青年はそう答えた。
「......分かりました」
私はご主人様の前なのに少し落ち込んでしまった。
「じゃあ行くか」
「い、行ってらっしゃいませ!」
私は元気が無いのをバレないように大きな声でそう言った。
ガチャ......バタン
今日も返事はなかった。まるで無視されているように。
「うぅ、断るならハッキリ断って欲しいな......」
その後、特に2人は交わることなくその日は終わった。
***
「今日バイト行けば明日は休みだし頑張るか」
「きょ、今日はどうしますか? ご主人様」
「......よし、掃除頼むぞメイ」
「は、はい!」
掃除をお願いされただけで嬉しくなる。
もうこれがご主人様に思いを伝える最後のチャンスだと思うと、不安と期待が押し寄せてくる。
「私が伝えてるって分かるようにするにはどうしよう......」
ガチャ
メイが色々アイデアを出している間に、青年は玄関のドアを開けた。
「行ってらっしゃいませー!!!」
外にも聞こえる程の声でそう伝える。
すると彼は振り返り少し首を傾げた。
が、特に気にすることなく出ていってしまった。
バタン
「よし! ご主人様には申し訳ないけど、たくさんのホコリを使わせてもらいます!」
メイはいつもより張り切った様子で掃除、いや愛のメッセージ作りを始めた。
***
「......出来た!」
やっと出来た。前回は2文字だったが、今回は『ダイスキ』と書いてみた。
時計を見ると、もうご主人様が帰ってくる時間だ。
早く自分の部屋に戻らなければ......
「うっ......」
お腹が空きすぎて気分が悪い。いつもより張り切ってしまったから?
私は耐えきれず、動けなくなってしまった。
「もう、ダメ......」
『ダイスキ』の文字の横で私は意識を失った。
***
ガチャ
「......ただいまー」
青年はいつもより遅い時間に帰ってきた。辺りは若干暗くなっている。
「疲れた。いつも以上に」
そう言いながら部屋の電気のスイッチを押す。
「ん......え?」
一瞬目が眩み、再び目を開けると、そこにはメイとホコリで出来上がった『ダイスキ』があった。
「......よし」
「捨てるか」
そう言うと青年はほうきを持ってきてホコリの文字を掃除し始めた。
「この掃除ロボット『Meiy』高かったんだけどなー。バッテリーも長持ちするし、部屋の構造も覚える優れ物って説明書に書いてあったのに......」
「まぁ家出る時とかピーピー鳴ってたし、きっと寿命だったんだろう」
掃き終わった青年は、バッテリー切れのメイをゴミ袋に入れた。
読んでくださりありがとうございました。