第四話 視察団
ハジーナ村に王都から視察団がやってきたのは、春先のことだった。
魔王討伐から丸三年が経過していた。
ハジーナ村の村長は、ジグの力もあって、早々と復興を遂げていたため、王都に支援要請をすることを早い段階で取りやめていたのだ。
王都側は、その分他の場所の支援要請することができると、感謝状を贈ってきたほどだった。
国中の混乱も治まり、支援を不要とした村や街の状況を確認すべく、王都から視察団が各地を巡っていたのだ。
そして、ハジーナ村にもその視察団がやってきたという訳なのだ。
視察に行った村や街の負担にならないように、最低限の人数でやってきた視察団は、騎士と学者と思われる人員で構成されていた。
騎士が五人と学者が二人という、七人の視察団は、ハジーナ村に到着して、その様子に感嘆の声を上げたのだ。
「おお、すげーな。ここって、最初に魔王軍に攻められて、酷いありさまだったって聞いてたんだが……。報告の通り、いや、それ以上だな」
「ああ、建物も見た限り、耐久性に優れた作りになっているな。きちんと、工事がされている」
「田畑も他の村や町よりもいい状態ですね。少し話を聞いて、他の地域でも試してみたいですね」
村を見た視察団のメンバーは口々に村の状態を褒めたのだ。
村を案内していた村長は、誇らしげな様子で、視察団のメンバーの質問に答えていく。
一通り村を見て回った視察団は、一度村長の家でお茶を飲みながら、復興に当たっての詳しい話を聞いていた。
「報告書にあった以上ですね。素晴らしいです。特に、田畑の状況が他と比べても段違いです。肥料はどうされているのですか?」
少し興奮したように学者がそう質問すると、村長は嬉しそうに答えた。
「そうでしょうとも。うちの村の肥料は魔女様の特製なんですよ。実は大きくて、味もいい。さらには、次の年も土の状態がいいんですよ」
「魔女様?」
村長の言葉に、首を傾げながら学者が尋ねると、恥ずかしそうにしながら村長は説明していた。
「すみません。魔女様は、魔王討伐後にうちの村に住むようになった、魔法使いの少女です。もう、それはそれは、美しい少女でして。可愛いだけじゃなくて、優しく思いやりのあるいい子なんですよ。魔女様は、私たちの村の復興に力を貸してくれただけじゃなく、今は、村の子供らに勉強を教えてくれるんですよ」
そう言って、実の娘でも自慢するかのように興奮気味に村長は言ったのだ。
そんな村長の言葉に、その場にいた全員が興味を持つのだ。
「ほう、素晴らしい魔法使いですか」
「美少女……」
「優しくていい子ですか」
それぞれが、まだ見ぬ魔女様と慕われる少女に興味を示したのだ。
しかし村長は、視察団の面々を見て、残念そうに言うのだ。
「はぁ。皆様のような、学者様や騎士様なら、きっと魔女様とお似合いでしょうな。しかし、本当に残念ですが、魔女様は……」
村長がそこまで言った時だった。
家の外から、村長に緊急事態を告げる声が聞こえてきたのだ。
「村長!! 大変です。子供たちが、勝手に森に入っていっちまった!!」
その言葉を聞いた村長は、顔色を青くして椅子を倒しながら立ち上がっていた。
「な……なんだと?! 今は、冬眠明けの熊が出る可能性があるから、子供たちだけで森に入ってはいけないと言っておいたのに……。なんてことだ……」
村長のその言葉を聞いた二人の騎士が同時に立ち上がり、家の外に駆け出していたのだ。