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第一話 魔女様と愛息子

 三年前、聖女召喚に成功したマルドゥーク王国の王太子率いる勇者たちによって、魔王は討伐された。

 魔王討伐から三年。強大な力を持つ魔王の手によって破壊しつくされて街や村は少しずつだが復興していったのだ。

 そして、魔王軍によって、一番初めに侵略された土地にあるハジーナ村もまた、復興を遂げていたのだ。

 

 ハジーナ村の住人たちは、復興にはもっと時間がかかると思っていたが、それよりも早い段階で普通の生活に戻れたのは、村に住みついた一人の魔女のお陰だと誰もが言ったのだ。

 

 ハジーナ村に住みついたのは、灰色の髪と菫色の瞳の美しい少女だった。ただし、怪我でもしたのか、その左目は黒い眼帯に覆われて見ることは出来なかった。

 灰色の髪の少女は、ジグと村人に名乗った。

 そして、復興のあまり進んでいない村の外れにある土地を非常に高い値段で買い取り、そこに家を建てて住みついたのだ。

 初めは、胡散臭い魔女を村の人間は毛嫌いしたものだった。

 しかし、村の外れに住むようになった魔女は、人見知りで恥ずかしがり屋の女の子だと人々は知ることとなるのだ。

 

 ジグが住むようになって半月ほどした時だった。

 あっという間に、魔法を使って家を建てたジグは、広い土地に薬の材料になる薬草を植えたのだ。

 それだけではなく、自分で食べる分の野菜なども植えていたのだ。

 ジグは、育てた沢山の野菜を持って、村の人たちが集まる集会場に向かったのだ。

 そして、小さな声で「食べきれないから、あげます……」とそれだけ言うと、顔を真っ赤にして走り去ったのだ。

 それまでは、声をかけても下を向いて、もごもご何かを言うだけで、胡散臭くて気味が悪いと思っていた住人たちは知ることとなったのだ。

 ジグが人見知りで恥ずかしがり屋なだけなのだということを。

 それからは、遠巻きにしていた住人たちは、野菜のお礼だと言って、ジグの家に挨拶に来るようになったのだ。

 村の人たちに面と笑顔を向けられたジグは、恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めながらも、小さく笑うのだ。

 その顔はとても可愛らしいもので、今まで何を怖がっていたのかと住人たちが拍子抜けするほどだった。

 

 それからは、ジグの魔法の助けで、遅れていた復興作業はあっという間に終わっていたのだ。

 壊された建物の修繕はもちろん、農作業の手伝いも積極的にジグは力を貸したのだ。

 ハジーナ村は、魔王軍が攻めてくる前よりも、建物や田畑が立派になるほどだった。

 

 一年ほどで、復興が完了したハジーナ村は、のんびりとした元の生活に戻って行ったのだ。

 

 それから時が経ち、ジグがハジーナ村に住み始めて三年の年が経過していた。

 ジグは、家を改築して魔法薬店を開いていた。

 その店は、怪我や病気に効く薬が安価で売られていたのだ。

 

 そして、ジグの好意で時たま、村の子供や希望する大人たちに文字の読み書きや算術を教えることもしていたのだ。

 ジグは、村の人々から「魔女様」と呼ばれ、慕われるようになっていた。

 

 その日、ジグの魔法薬店には、沢山の子供たちが遊びに来ていた。

 

「魔女様、イヴくんとお外で遊んでもいい?」


「魔女様~、昨日貰ったお菓子美味しかったよ。ありがとう」


「イヴくん、魔女様~」


 顔見知りの子供たちに笑顔を向けられるジグは、柔らかい微笑みを浮かべながら、子供たちの頭を優しい手つきで撫でる。

 そして、自分の足に抱き着いている可愛い愛息子のイヴァンを抱き上げて言うのだ。

 

「イヴ、みんなが、イヴと遊びたいんだって」


 ジグがそう言うと、イヴァンは、天使のような微笑みを浮かべてコクリと頷くのだ。

 

「うん。イヴ、おにいちゃんたちとあそぶ!!」


「ふふ。それじゃ、お庭に行こうか?」


「うん!! まぁまもあそぶの!」


「ふふ。それじゃ、行こうか」


 ジグは、可愛い一人息子のイヴァンを抱っこしたまま、店の外に出たのだ。

 店の前の広々とした庭先で、イヴァンと村の子供たちが楽しく遊んでいるのを見て、ぼんやりと思うのだ。

 平和になったなぁ、と。

 

 そして、可愛い可愛い一人息子のイヴァンを見つめる。

 ぷにぷにとした柔らかいほっぺと、金色の柔らかい髪と蜂蜜色の瞳の天使のような息子を見て、思うのだ。

 魔王を倒すことが出来て本当に良かったと。

 

 そう、ジグは、三年前の魔王討伐の勇者パーティーで、魔法使いとして力を振るっていたのだ。

 そして、魔王討伐後、誰にも行方を告げず、逃げるようにハジーナ村に移り住んだのだ。



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[気になる点] サブタイトルが魔女様と愛息子とありますが、愛息ではないでしょうか?
[気になる点] 〜のだ。 が連続していて違和感があります。
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