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異世界転生は友と共に!  作者: 鬼桜天夜
第1章 『騎士の國 オルフェウス』
5/22

腐敗の香り

改めて、読者の皆様、読んでくれてありがとうございます!

(これが言いたかっただけです)


by鬼桜天夜

「着いた!」


「は、速すぎでしょ、俺風魔法使わなきゃ追いつかなかったんだけど」


「ごめんって」

あれからフォーさんの力のお陰で私と緋華李が1番初めに居た草原に送ってもらい、そこから走ってきたのだが、なんだこの空気は?

どんよりして、前に来た活気はなく、重い。


「なぁレオン、おかしくないか?」


「本当だ、嫌な空気がする。早めに2人と合流しよう」




「ここが原因、だけど」


「デルバルドさんの酒場、だよな」

前の賑わいもない、どういう事だ?


「行ってみよう」




「なっ、何だ、これ!?」

開口一番、私は叫んでいた。いつ見ても硝子のコップに金色の明かりが注がれていて、騒がしいテーブルはちゃぶ台返しされ、賑やかさは喧騒へと変貌を遂げていた。


「何だこれ!待ち合わせはここなのに、!?なんっで、アイツらっ、!」

戸惑いつつも当たりを見回して、ふとレオンの顔を見ると、心做しか顔色が悪い。


「あそこの人、知り合い?」

レオンの見ている先には、3、いや4人か。いかにも不良ですと言わんばかりの金髪が居て、おそらくそいつがリーダー格なのだろう。面倒くさいな、早いとこ抜け出して、


「ッ!行こうッッ!!」


「えぇ!?いやちょっレオン!」

顔色が悪いと思ったら急に険しくなってたが、なにかトラウマでもあるのか?


《主、思考を巡らしている暇は無いように見えるが》


「そうだった、ありがとフォーさん!」




「お嬢さん達、いい度胸してるな。俺らにぶつかって来るとはよ」


「貴方達が、ぶつかって、来たのに、言いがかり、良くない」


「そうよ!だいたい肩がぶつかった程度でうるさいんですけど!」


「ホォ?お前ら楯突くか?この俺に?」

二人に立ち塞がる男が、青筋を立てて怒り始める。



「"円卓の騎士候補"が落ちぶれたな!」

酒場の中心で口論をしていた不良チームと緋華李とアリアの2人の間に、血相を変えたレオンが風魔法を使い庇うように割り込む。


「あぁ?あぁ、その声はよく覚えてるぜ?レオン!」

円卓の騎士候補という耳慣れない言葉に疑問を抱きつつも、藍華も後を追う。


「あ、レオンさん!藍華も!」


「候補だったのはお前もだろ?何だ?コイツらには"あの秘密"は言ってないんだな?だからそうやって仲良しこよし出来るんだよなぁ!?」


「っ!!」

レオンもその円卓の騎士候補だったのが今の発言で分かるが、だった?それに秘密ってなんの事だ??




「そこら辺にしろ!!」

レオンと金髪の間に流れ出る異様な空気。今にも剣を抜きそうな空気に周りが気圧されていると、デルバルドが声を上げる。


「!?」


「チッ、じゃあな。"風葉のレオン"様?」

藍華の隣を通り過ぎる時、一瞬、あの銀色の目がこちらを向いたのは気のせいだろうか。



「捨て台詞カッコよ・・・」


「変なとこ空気読まなくていいから」

おふざけもさておき、色々整理したいな。この騒動が、何かの前触れじゃなきゃいいが。







「おらテメェら!荒らされた分は片してから酒飲めよ!」

そして数分後、デルバルドさんが指揮を執り、店内の片付けを進める中、私たちは店内のまだ荒らされていないスペースで休憩していた。先程まで私達も手伝っていたのだが、デルバルドさんと他のお客さんの心遣いで、休憩させてもらっている。



「とりあえず、合流できて良かった」


「8日ぶりだね、藍華!会いたかったよー!」


「え?8日?」

行き帰りで最高で3日ぐらいのはず。森に居たのが1日もかかってないのに。

まさか、


《主、アトラスは時間の流れが外界より遅いのだ》


「なるほどね、道理で。ならますます迷惑をかけた。すまないレオン」


「気にしないで。待ち時間の潰し方は心得てるんだ」


「てか何その子!?梟だ!」


《こやつが貴様の無二の友か…阿呆そうだな》


「めっちゃ失礼!」


「アトラスの、長、初め、まして」


《貴様、占星術師にしては幼いな。まぁ、肉体の年齢など、さしたる基準でもないか》


「挨拶が出来て何より・・・レオン、大丈夫?」

さっきの金髪さん。かなり重要な事を知ってたっぽいし、気になるな。でもそれよりも、レオンの事が気になる。


「っ・・・」


「ねぇ藍華、今はそっとしておいた方が」


「レオンッ!」


「っ!」

視線が交わった時、彼の瞳孔が開いていたのがよく分かった。

人は驚いた時目が点になるとよく言われるが、本当にそうだと痛感した。


「昔何があったかとか、今何考えてるのか知らないけど、大事なのはこれからなんじゃないの!」


「・・・うん、そうだね、アイカの言う通りだ」


「あれ、あの二人あんなに仲良かったっけ」


「いい、事だと、思う、よ」

野次がうるさいが無視だ無視。


「とりあえず話し合いだな、アリア時間大丈夫?」


「大丈夫、だよ」


「よし、ならば作戦会議だー!」

緋華李の言う通り、こっから仕切り直しだ。あんなに険悪な感じだったけど、周りの人はそれに少なからず面食らっているように見えた。あの口喧嘩


「まずさっきの人、誰」


「あいつは、"エリア"。俺と同じ"元"円卓の騎士候補。仲は良かったよ、それなりには」


「えぇっ?凄いギスギスしてたよね?」


「昔からそういう奴さ。でも、あれから変わってしまった」


「その円卓の騎士候補っていうのと、なにか関係してるのか?」


「円卓の騎士候補。王都ナイティルを守護する円卓の騎士。誰か1人が抜けたら、その穴を埋めるために2人、円卓の騎士候補ができる」


「そんな制度が…」


「そして俺とエリアが候補になったんだ。でも…俺は、あの城から逃げ出した」


「逃げ出した?」

レオンがその事を口にした時、目を伏せたのを見えた。余程辛い思い出なのだろう。


「っ、」


「あ、言いたくないなら別にいいよ!」

緋華李も空気を読んだのか、フォローを入れる。





「ありがとう」


「よし、レオンの事は一旦保留だ。作戦会議の方をしよう」


「そうだった!藍華、そっちは上手くいったの?」


《主、貴様あれは言わなくて良い事なのか》

あぁ、まだ言わなくていいだろう。


「フォーさん、もとい森の賢者(フォレストセージ)が仲間になった」

今更と言われればそうだが、紹介だけでも済ませておいた方がいいと考えた。


「そうだ、フォーさんってやっぱり普通の梟じゃないんだよね?」


「まぁ、そうだな」


「へぇ〜?」


「…そのうち教える」


「分かった!」

眼力と圧が、我が友ながら恐ろしいな。思わず背筋に来た。


「そういえば、魔法の件はどうなったの?」


《それは我から説明しよう。結論でいえば、魔法は使えぬ。しかし、別の権能(スキル)を引き出した。これから旅をしていき、己を鍛えれば、魔法が開花するかもしれぬがな》


「そうなんだ!良かったね!」


「あぁ」


「役に立てて、良かった」


「アリアの助言があったからだ。ありがとう」


『それじゃあ緋華李達の事も教えてよ。2人のことだ、新しいものを得ているんだろ?』


「当然!私から説明していい、アリアちゃん」


「うん」


「実はね、私魔法使えるようになったんだ!」

冷たい風が、酒場に流れ込んで来た。


「それは、そうだろうな」


「反応が薄い!それでね、なんとなんの属性でも使えるんだ!えっへん!」


「それは凄いな」

このリドルムでも、全属性を行使できる人はそう多くはない。

しかし彼女には大きな問題があった。それは


「でもね、"補助系魔法"しか使えないんだよね」

ん?藍華は自分の耳を疑った。


「この世界ではよくある話ですよ。1属性だけしか使えないという事は皆そうですが、ある種の魔法しか使えない。そういう事例も少なくはありません」

なるほど。デルバルドさんから貰ったリンゴジュースを飲みながら考える。アトラスまでの短い旅の時に聞いたが、魔法を持っていても、そもそも魔力の量や魔法の素質が無ければ、扱う事もままならないとか。

だからこの大きな港町に来て、魔法を使って仕事をする人を第一に見かけなかったのは、そういう事があるからだろう。


『要は緋華李は、全属性の魔法が使えるけどサポートにしか回れない、そういう事でしょ?』


「なぁんか嫌味に聞こえるなぁ。そういう藍華だって、レオンさんみたいに戦えないじゃん」


「それは」

レオンの声を遮るように、ニヤッという効果音が着きそうな不敵な笑みを浮かべる藍華。


「ふっ、それは昔の私の事かな?」


「なっ、まさか!」


『私はこの身体能力を活かして、剣術を多少学んだんだよ』


「ずっずるくない!?」


「だから、腰に、レオンさんの、細剣、あるんだね」


「そういう事だ。もし戦うとなったらお前は後衛だな、緋華李」


「藍華が前線に出るのは凄い嫌だけど、まぁその分私がサポートすれば良いんだもんね!任せてよ!」


「それじゃあ今日一晩はゆっくり休んで、明日の朝からギルドに行きましょう」


「それが1番か、またデルバルドさんにお世話になってしまうとは」


「んな小せぇ気にすんなよ!」


「わっ、デルバルドさんいつの間に」


「乗りかかった船は、使えるだけ使っとけって話だ。当分はここが拠点になるなら、俺と交流して損はないぜ?」


「自分で言うか?」

ボソッと小声でレオンが言うと、


「なぁんか言ったかぁレオン!」


「なっ!頭ぐりぐりしないでください!」

年の差はかなりあるが、それでも父と息子のようなやり取りを微笑ましく見る傍ら、藍華は少し考えていた。確かに2人とも戦う術を得たが、死ぬ可能性があるのには変わりない。

密かに彼女は、もう二度と傷つけさせないと、友を護ると決意するのであった。


「よし!今日は解散!さぁ藍華もう寝よ〜って、どうしたの?」


「なんでもない。明日に備えて早く寝るぞ」


「ん?うん、そうだね」











翌日、ギルドの位置を2人は知らないため、レオンが迎えに来てくれるとの事なので、2人は酒場の前で待っていると、

「あぁ、おはようございます。遅かったですか?」


「いや、集合5分前だ。おはようレオン」


「おはようございます!レオンさん!あそうだ昨日少し思ったんだけど、藍華とレオンさんいつの間に敬語を抜く仲になったの」


「同じ釜の飯を食べれば少しは仲良くもなるだろ?」


「そ、そうですよ!それにヒカリさんも言ってくれれば敬語くらい!」


「へぇー?いいよぉ?私は」


「も、もうヒカリさん!揶揄わないで下さい!」

何故緋華李がレオンを揶揄うのかよく分からない。仲良くなった相手に敬称を無くすのは普通ではないのだろうか。

そんな疑問を抱きつつも、一行はギルドがある場所へと向かう。



「デルバルドさんの酒場に負けず劣らずの人の往来だね」


「そうだな」


「ここが、國に2つあるギルドのうち1つ。ウリハラのギルドです。治安は中々良い方だと思いますよ」

酒場デルバルドもかなりの大きさだったが、このギルドもそこそこに大きい。見たところ、宿屋も兼ねているようだ。

ギルドに多少の興味を持って、もっと言うとワクワクしながら入ってみると、そこは、


「なぁ、緋華李」


「うん、なんとなく、言いたいこと分かるかも」

2人は同じような顔をしながら、同時に叫ぶ。


「大き過ぎない!?」

中はファンタジー小説などで見るよりはるかに賑わっており、飲食ができるテーブルまである始末。周りを見渡すと、冒険に行くでは無いであろう人たちもチラホラと混じっている。


「そこまで驚くほどですかね?まぁナイティルよりは敷地もありますからね。規模はそこそこでしょうか」


「なぁレオン。これだけの規模のものはやはり少ないのか?」


「そうだな。他の国のところにも何度か行くことはあったけど、ここまで大きくはないかな」


「他国にも支部みたいな形であるのか」


「まぁ無い国もあるみたいだけどね」

レオンと藍華が話している中、緋華李はというと、


「すいません!ギルドの受付したいんですけど!」

コミュ力の高い緋華李は、もう受付のお姉さんに話しかけていた。

受付にいる人は三十路辺りの年代に見えるが、薄く化粧をしていて、若く見える。スピネルに例えるのが相応しい紅く宝石のような瞳に、それと同じ色のような綺麗な赤の髪。大人のお姉さんのようにも見えるが、何故か背筋が凍るような、じっと視線を向けられているのは、気のせいなのだろうか。


「あら、ギルド加入希望者ね?こんなに元気な子が入ってくれるのは嬉しいけれど、レオン?あなたのとこの子でしょう?」


「おはようございます、メルティさん」


「挨拶できる人は好きよ、レオン。そこのキレイな藍色の瞳をしたあなたも、この白銀の瞳の子のお連れかしら?」


「初めまして、メルティ、さん、でいいんですよね?私はアイカと言います、そっちにいるのがヒカリです」


「えぇ、メルティよ。アイカとヒカリね、よろしく。ギルドの加入希望と聞いたのだけれど、間違いないわね?」


「はい。それで、ギルドに加入するにはどうすればいいんですか?」


「詳しい説明を省くと、1つ課題を出させて貰って、それに合格すると、晴れて団員になれるってところよ」





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