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異世界転生は友と共に!  作者: 鬼桜天夜
第2章 『花の國 フロウターレ』
22/22

クイズ大会、開始!

グラディウスの言うアヴルーガという場所は、私たちが旅立った國、オルフェウスを背に、さらに内陸側に歩いた所にあると言う。

私の置かれた状況を簡単に整理すると、怪しい奴に脅されて友達とお別れさせられ、協力を取りつけられた。更に、あの後聞いた話によれば、残された時間は一週間ほどしかないという鬼畜条件付き。


その内の二日を使い、アヴルーガへ向かうそうだ。転移魔法みたいなご都合魔法があれば話が早いが、とても高度な魔法で、とてもじゃないが無理だ、と速攻で却下された。

なので、地道に徒歩で、しかも休みもほとんどなしで歩き続ける羽目になっていた。


「二日も歩き詰めだと、流石に疲労が溜まるな。ちなみに聞くけど、グラディウスは大丈夫そ?」


「俺は平気。歩くのは慣れてるしなぁ。俺の心配はいいけど…ほら、気が緩んでるとこに付け込んでくる」

なにが、と聞くのは無粋というもの。こういう時に限って邪魔をする存在というのは限られてくる。


「ゴブリンの群れ?明らかにこっちを狙って動いてる」


「理由はどうあれ、障害は排除するぞ。あっちもどうせ殺意マシマシなんだ、セイトウボウエイってやつ。

 あ、そいえば戦闘は大丈夫?また腰抜かさない?」

意地の悪い笑みを浮かべ聞いてくる。煽り性能が高いようだが、残念ながらこいつの前であんな醜態はもう犯さない予定なのでガン無視だ。


「掘り返さないでくれる?もう平気だからご心配なく」

真正面から突っ込んでくる数十体のゴブリン達は、どこか血走った目でこちらへ走ってきている。様子がおかしいのは間違いないが、今はそれを探る時間も惜しい。

細剣を素早く抜き放ち、向かってくるゴブリン達を立ち止まって見据える。武器も大振りなものを持ってるやつも混ざってるが、危険そうな奴はいないと見て良さそうだ。

だが、それよりも気にかかる事がある。


「何であなたは寝っ転がってる訳!?」


「何でって、俺の出る幕じゃないから?いやぁ、前の戦闘で、誰かさんを守るのに無駄な体力使っちゃったからなー」


「痛いとこつくじゃん…ならそこで見学してろ。これぐらい一人でやれる」

今まで対峙したゴブリン達とは違い、喋ることもなく、ただ咆哮して襲いかかってくる。

驚きはすれど、不意をつかれることはない。寝っ転がっている彼の方に意識が向かないようにだけ気をつけつつ、迎撃を始める。

全員、虚をつくような攻撃はしてこないので、隙を見せたら喉元を貫いて終わり。一斉に襲いかかって来るが、冷静に、常に周囲と自分に気にかけてれば問題はない。


だが、攻撃を捌く中で、ふと思う。

ゴブリンの振りかざしてくる腕をかわして斬りつけ、そのまま回し蹴りを決める。

誰かを傷つける、殺す。そんな事が、いつの間に、そんな淡々とこなせるようになっていたのか。

戦う理由も、信念もあるのに、この空しさの様なものは何だ?


棍棒を振り回してくるゴブリンの頭上を飛び越え、勢いを殺さず回転して首を刎ねる。残るは一体。振り返った先にいるゴブリンは、もう戦意を失っており、虚ろな表情をしていた。


私が一つ歩みを進める度に、怯え、恐怖し、今にも逃げ出そうとしているようだ。それに比べ私ときたら、酷く冷静だった。自分でも気味が悪い。

剣が届く距離まで歩いて、切先を突きつける。


ここで殺すのは簡単だ。でも、このゴブリンの顔に、もうこちらへ危害を加えるつもりは無いと書いてある。緋華李なら、どうしているだろう。

この場に居たら、私を止めて、諌めるのだろうか。

無抵抗の人間…ゴブリンか。とにかく、そんな奴を殺して、私はもう一度、清々しい気持ちで彼女の側に立っていられる?


確かに、彼女を脅かすのなら容赦はしないが、これは私の問題だ。


「……て」


「エ??」


「…いって。戦う意志のない奴を、殺す気は、ない」

力なく垂れる腕に、もう力は入らない。私の意思が伝わったのか、ゴブリンの大きな足音が遠ざかっていくのが聞こえる。


「甘くね?」

地面を見つめていた私に、覆い被さる様にグラディウスが来た。


「あの時殺したら、もう、戻れない、気がしただけ」


「…よし、進むぞ。もう半日もしないで着けるはずだ」












「何もないじゃん」


「あぁ、何もないな」

そう言い、少し開けた場所を見渡す。習うように私も草原を見る。

少し、とは言ったものの、街中の公園より二倍は広さがあるように見える。

あるのは草木だけ。本当に何もない。


「白装束達に跡形も無く消されたとか?」


「はは。ファンタジー小説じゃあるまいし」

いや、私からすればこの世界そのものがファンタジー小説みたいなものだが。


「魔法があるんだから、何があったってそこそこ納得するわ。で、アヴルーガとやらはどこにあるの?また私に見えてないだけ?」

あの幻影を見せられていたみたいに、グラディウスのハンドパワーが無いと見れないとか。


「見えてないってのは半分正解だ。正確に言うと、これからやるのは、行く為の通路を浮かび上がらせる」



「叡智の守り手、仰々しい言い方だが、要は秘密主義どもの集まりなわけ。そこへ行く為のセキュリティの頑丈さも、憎たらしい事に比例する。

 だからって何かが襲ってくるわけじゃないぞ。入るために必要なものはシンプル、知恵だ。

 これから試されるのは己の知恵とひらめきと、少しの度胸だけ。でも、俺は助けてやれないからそのつもりでな」

それが、最後に聞いた言葉だった。

体の倦怠感から、意識が沼に落ちていく感覚。自動的に目が閉じられ、とぷん、と全てがシャットアウトされた。






体感的にはお昼寝をした程度だが、どのくらい時間が経ったのか。記憶ははっきりしているが、いかんせん体が怠い。


「…なるほど。こういう事ね」

瞼をなんとか上げると、夜空があって、横には花が咲いていた。目を動かしてみても、あるのはおんなじ景色がずっと続いているだけで、さっきいた場所とも空気が違う。

どこからか吹く風に巻き上がる花びらを眺める。


《えー、もしもし。聞こえますかぁ?えっ、電話じゃないんだからいいってぇ?もー、こーいうのは気分ですよ》

あまりにも敵とか妨害とかないからぼけっとしていた。

女性の気怠そうな声で、どこからか分からないが声が聞こえてくる。


《おっとと、そっちのけで失礼しました。(わたくし)、アヴルーガの、いわゆる門番みたいな役割でして。

 お連れの方から説明があるとは思いますが、私からいちおう、説明をば。

 我らが貴方に試すのは、貴方の知恵とひらめき、そして少しの度胸。ざっくりまとめてしまえば、クイズです》

同じ決まり文句、アヴルーガの関係者、という線も疑ってもいいかもな。魔法に対する知識量も頷ける。

木霊するかのような響き渡る声を頭の中で反芻。


まず、ここがアヴルーガなのは間違いないと見ていい。これから行われるのはクイズで、必要なのは知恵、ひらめき、度胸。そして、クイズを正解する事が出来れば、アヴルーガへ行ける。


《まぁ私としてもさっさと門前払いしてしまいたいので、早速行きましょう。

 私から出すのは、水平思考ゲームです。貴方はご存知であると聞き及んでいますので、追加ルールを。

 貴方の回答権は二度、質問できる回数は十。そして、回答を二回間違えれば、貴方にとって一番大切なものをお支払いしていただきます》


「一番、大切なもの」


《はい。それが何であるかは、貴方ご自身が理解していらっしゃると思いますので、説明は省きましょう。

 お題の書かれた札を出します。質問は大声で叫んで下さいねぇ、判断つかないですから》

カチッ、という機械的な音の後、目の前に文字の書かれた木の板が現れた。

書かれていたのはこうだ。




ある女が男の家に行き、ノックをしても返事がなく、鍵が開いていたので家に上がり込んだ。

女は家に上がると、泣きながら家を出た。その理由は?




ふむ。

事実だけが列挙されている、よくある水平思考ゲームの文章だ。

水平思考ゲーム、一般的にはウミガメのスープと呼ばれる。私も何度かやった事があるが、難しいものは難しい、ピンキリだった印象だ。

しかし、今回のクイズは単なる遊びじゃない。でも、代償があまりにも大きいだけで、一発で正解してしまえば問題はない。

引っかかることはあるが、置いておいた方がよさそうだ。気持ちを切り替えて、空中にぶら下げられた問題を見上げる。


女は家に上がってから変化があった。

女が男の家に行った理由。


まず気になるのはこの二点。これの答えがどうなるかによって話は変わってくる。時間制限は無いし、よく考えてやらなきゃ。


ま、よく考えても結論変わらないし、息を吸い込んで質問を声に出す。

「女はなにかものを見て泣いたー!!?」

言われた通り、お腹から思いっきり大声で質問する。誰かに広められるわけでも無いし、恥を捨てて言うが、恥ずかしいものは恥ずかしい。


《はい…ふふっ、ふっ。え、マジでこの人大声で叫び出したんですけど》

この門番さては隠キャか?と問い詰めたくなると同時に翻弄されたことへの羞恥心が湧き上がる。


「お前会ったら覚えとけよ」

空に向かって睨みつける。

相手からは見えているのか、そうすると笑い声は鳴りを潜めた。単純にミュートしただけ、とかかもしれないが。


ひとまず門番のことは置いといて、クイズに正解しなければ次は無いのだから、頭をリセットさせる。

概念的な事ではなく、女はものを見て泣いた。今のところ死体が思い浮かぶが、さて。


「男と女は恋仲?」


《はい》

今度は真面目に職務を全うし、私の問いに答えた。


男と女は恋人同士、女は何かを見て泣いた。

今考えてるのは、男は誰かに襲われ、その死体を女が見て泣きながら家を出た、という筋書き。

これで、一回解答権を消費しても良いが、やるなら一発でクリアしたい。質問できる回数はまだ八回もある。


「女は玄関より奥へ入った?」


《いいえ》

玄関で全てのことが片付いた。その一瞬で、その女が泣くほどの出来事が起きたということだ。


「女は男を殺した?」


《いいえ》

家に上がった後に殺してない。てなると、玄関にいた男の元へ行き殺したって線はなくなったな。

殺したのではないなら、殺されていた?


待てよ、男はその時死んでいたか、と聞いてもいいが、それだと違った場合、もう一回質問しなくちゃならなくなる。私の考察と答えが百八十度違ったらゲームオーバーだ。それだけは避けないといけない。


女はなにかを見て泣いた。私はこれを男の死体だと仮定しているが、もし違ったら?そうなると、死んでいたかを質問するのではなく、男を女は見たのかを確認しなきゃいけないのか。


「男は女の見える場所にいた?」


《いいえ》

何?

男の死体を見たわけではないってこと?



・女は何かを見て泣いた(男の死体以外)

・男と女は恋仲

・女は玄関から動いてない

・女は男の姿を確認していない


男は殺されたと思ってそれを前提条件として置いていたが、そもそもが違うのか?

女が幽霊の線…はないはず。それだったらノックをして、なんて表現はしない。

痴情のもつれ…玄関によく置かれるもの…


まさか。


「男は、家に入ってきた女とは別の女と居た?」


《…はい》


「確定だな」

第三の要因として、出題者の質問から返答までの妙な間。答えを確信するには十分すぎるものだ。


「答えは、玄関の写真立てには別の女との写真が飾られていて、男とその別の女は情事の真っ最中だった」

もう億面することもない、堂々と言い放つ。

正解なのは分かり切っているから、この静寂も怖くない。


《正解です。一発クリアお見事です。うちのトップもびっくりの成績》



《固定観念をぶち壊す大胆さと、そこから新たにロジックを組み立てなおす冷静さ。とても素晴らし、おっと、少々お待ちください…はい。転移魔法、障害見当たらず。

 講評はここまでで。では、改めてようこそ。

 ここはアウルーガ。多くの叡智を管理する場所。私たちは、訪問者を歓迎します》

アナウンス口調で言われると、目の前が眩い光で包まれ、下から突き上げるかのような浮遊感が私を襲う。酔うような感覚もなく、ただ足元が無くなる感覚だけがほんの少し怖かった。


私はゆっくりと目を開け、その光景に唖然とするしかなかった。

真っ先に目に入るのは、街を行き交う人、人、人!

一花祭にも引けを取らない大賑わいを見せる街並みに加え、人だけでなくまさかの魔物まで普通に人と会話を楽しんでいる。それこそ、理想郷という言葉が似合う世界だ。

中世的のヨーロッパ的な古い建築物は変わらず、ここがどこか分からないが、もう既に日は昇り朝を迎えていた。首都シェフィールとの違いを上げるとするなら、やはり魔物と人間の共存と、それと中心部にそびえる大きな教会のような建物だ。


周りを見渡しても、グラディウスの姿は見当たらない。多分、私は転移魔法で飛ばされ、グラディウスとバラバラになったといったところか。


《グラディウスの生態波動は、あの教会から出ているようだ。まずは合流するが吉だろう》

すると、驚いたことに今まで沈黙していたフォーさんから吉報が入る。しかし、そこで不思議に思う。フォーさんはできる助言はできる限りして下さっているのに、今になって口を開いたことだ。

立てられる仮説としては、わざとあっちが教会び誘導しているか。

どちらにしろ私の取れる選択肢は少ない。

一度伸びをして、新たな冒険に足を踏み出した。














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