次なる目的地
「ほんとにお別れをしなくていいのか?ウリハラはお前にとっても大事な町だと思っていたが」
王都ナイティル、門前。早朝の薄明が雲を突き抜け、目の前を照らし出していた。
レオンの王宣言やらなんやら、もう考えるだけでいまだに頭痛いからしないけど、とにかく諸々の翌日、私たちはオルフェウスを旅立とうとしていた。
私たちとしては、ウリハラに一度戻ってから出立したかったが、レオンたっての希望で今日になった。
なんでも、合わせる顔がないとか。
あれだけ慕われていた癖に、もはや嫌味にまで聞こえてきたわ。
ちなみに、レオンは王様になってその後の事は大丈夫なのかという疑問は、たった一つのアイテムで解消されることとなった。
あの玉座にあったAIが、レオンと王都の通信を可能にしているらしい。新たに身に着けていたイヤホンらしき機械で、通信が可能ということだ。急なハイテク機能には、さすがに私もわくわくしたものだ。
「だからこそだよ。俺は必ず生きて帰ってくる」
それ死亡フラグって言うんだが、まぁ、レオンならなんとかするか。
《俺も聞いた事あるぞ、死亡フラグ。それが立ったら百パー死ぬんだろ》
だからそれをへし折ろうってんじゃん。
ジャック相手だから強がってしまったが、まだまだ私の実力はレオンに及ばない。もっと強くならなければ、もう、守ってくれる人いない。
「改めて確認するけど、レオンの目的は魔王討伐、もとい、真実の解明。私たちは各国を旅しつつ、ほぼ忘れかけてたけど、ギルドの依頼もこなしていく。
レオンは大丈夫?やっぱり、私たちの旅についてくるんじゃ効率悪くない?」
「いいんだ。それに、俺はこの國から出たことがない。一緒に来てくれる人がいると心強いしね」
そうか。失念していたけど、彼もまた、私たちと同じなのか。
ある種の感慨を抱いていると、緋華李からちょいちょい、と肩を叩かれる。
「藍華さんや。そう邪険にせず、仲間に入れてやんなさいな」
不敵な笑みを浮かべて、わざとからかってきた。
そんなのに反応してたらキリがないので、軽く流す。
「別に邪険になんか…でもそうだな。こちらとしてもありがたいし、ぜひ」
そう続けると、急にレオンが胸を抑え出した。
「うっっっ」
「ど、どうしたんですか!?」
私がびっくりしすぎて言葉を失っている中、緋華李が屈んだレオンに駆け寄る。
「だ、ダイジョブですヒカリさん。アイカの微笑みにノックアウトされただけですから」
「ん??」
私の聞き間違いか??
レオンの顔を確認するが、見上げるその顔には、今まで見たことのないような妖艶な笑顔が張り付いていた、
イケメンこわ。
「俺言ったでしょ?素直に生きるって。だから、もう色んなこと隠してるのはやめることにする。あっ、もちろん、モラルは守るけど」
立ち上がり、あの笑顔のまま近づいてくる。
あわあわしてる緋華李、早く答えろと言わんばかりのレオン。
しかし、もう色々と、私は手一杯なのだ。
「ぷっ」
「ぷ?」
レオンとヒカリの声が重なった。
「プレイボーイだー!!」
「え俺!??」
「あっはははは!二人とも待ってよー!!」
それは誤解だ!!、なんて叫びながら、レオンは走り出したアイカの背中を。
ひまわりのような、鮮やかな笑顔で二人を追いかけるヒカリ。
追いかけられるアイカの顔も、リドルムに来てから一番の笑顔を咲かせていた。
この場にいる誰もが、あぁ、こんな穏やかな時間が、いつまでも続けばいいのに、そう思った。
人間ではない彼らも、それは同じだ。
《愉快で飽きないねぇ》
《このような旅も、乙なもの、か》
《アンタは一々言うことがジジ臭いんだよ》
仲はいまだに不仲だけど、確かにそこに、一種の絆が芽生えかけていた。
振り返り、友を見る。
私は一人じゃない、そう強く実感する。
たとえどんな困難に当たっても、挫けても、私は一人じゃない。離れ離れになっても、心が、繋がってるって信じて思い出そう。
目の前に広がるこの夜明けと、共に。
─ 完 ─
色んな小説に手を出していたら、いつのまにかこんなに遅くなってしまいました。鬼桜 天夜です。
ここまでお付き合いしていただき、本当に感謝と嬉しい気持ちでいっぱいです。
次もなんとか頑張ります。
なんとか、はい…
諸々はさておき、ぜひ、これからもよろしくお願いします!
by 鬼桜 天夜




