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異世界転生は友と共に!  作者: 鬼桜天夜
第1章 『騎士の國 オルフェウス』
16/22

いらない家族

更新が遅い中(私のせいですが)、読んでくださる方々がいる事が、なによりも励みになっています!

最近、戦闘シーンで悩んでおり、前回は短くなっています。すいません…


by鬼桜天夜

「これは…」


「レオンじゃないか。一歩遅かったじゃ…あぁ、それが理由か」


「それで友達を危険な目に合わせてたら、意味ないですよ。にしても、円卓の騎士最強である貴方が、夜とはいえ手酷くやられましたね、さすがだ」


「俺を労うのか、友人を褒めるのかどっちかにしろ」

そう笑いながら呟く彼は、両腕が血塗れになっていて見るに堪えない姿で壁にもたれていた。


「どこまでやったんですか?」


縛呪解放(マレシオ・アンロック)まで使って負けたさ。昼間だったら絶対に負けてないが、まぁ、良いガッツだったと思うぜ。宣言通り、友人を守り切ったしな」


「…ガラティンさんがそこまで褒めますか。はは、妬けちゃうな」


「気持ち悪りぃ」


「本気なんですけどね」

もう一度アイカとヒカリを見て、確信する。彼女らの成長スピードは常人のものとは比べられないほど早い。


「俺も、負けてられないな…」


「…俺はもう動けん。それに、女王の間の前でこんな大騒ぎしたんだ、じきに首が飛ぶ。負けた俺が言うのも無責任な話だが、後は頼んだ」

そう言うと、事切れたように意識を手放した。


「ほんっと、無責任な話ですよ」

彼から離れ、数歩歩いた先に、彼女たちが転がっていた。どちらも意識はないらしく、息はある。

遠目からは確認していたが、いざこう見ると容体だけでなんとなく想像がつく。

アイカは外傷が酷く、特に火傷だ。どれも魔法で治るし、後に残りそうなものでもない。なにより、()()()()()で治っていっている。

次にヒカリさんだが、こちらは体力の消耗がアイカより激しいようだ。魔法の乱用が招いたものに違いないだろう。だが、こちらも時間があれば完治するものだ。


宣言通り、守り抜いた、か。きっと、納得してないんだろうなぁ。

でも、それは同じだよ、アイカ。俺だって、最後のいいとこだけ掻っ攫うだけの、泥棒だしね。

あぁ、でも。君はやり遂げたんだ。


「なら、俺も。俺にだって出来るはず」

言うは易し。後はやるだけだ。

アイカの額の傷口を手持ちの布で縛る。これで止血と菌が入るのは防げるはずだ。


立ち上がる膝は、もう震えていない。

空は夜明け前と言ったところだ。その明かりが、やけに寂しく見える。外の騒ぎもいよいよ最初より罵声が響き渡り、これ以上はただの混戦と成り果てかけていた。


躊躇ってる時間は無い、な。


大扉は何千倍もの大きさに見えるが、威圧感に負けてる場合じゃないぞ!俺!



力を込めると、ゆっくりとだが開かれていく。この扉は女王の意思が反映されているものだから、あいつの中で俺は脅威になる敵認定されてない。

苛立ちもあれど、かえって好都合だ。

城下町の喧騒など全く聞こえてこないここは、女王の心そのもののように思えた。


「…反乱軍の強者(つわもの)が来るかと思えば、よもや貴様か。言葉を交えるのも忌々しい、憎々しい、腹立たしい。

それに、ふむ。他の騎士どもも劣勢か。だが、そうだな。

私が玉座に座って以来の窮地だと認めよう。

そして、私はここから一歩も動かぬ」


「舐めてるのか?」


「貴様如きに本気になったなどと、死んでも死にきれないからな。安心しろ、最期くらい慈悲を持って殺してやろう」


「思ってもないこと言うなよ。勝つのは…俺だ!!」

新しい剣を抜く。前から使っていたかのような馴染みようだ。それを見て一層嫌悪感を滲ませるモルガン。

俺がどの部隊にも配置されず、単独行動をしていた理由はこれだ。

キャメロットに古くから伝わる聖剣伝説。その真偽を確かめに行っていたのだ。


「ああああ!聖剣!!それをこちらへ向けるな…!!反吐が出る!」


「お前を倒す為なら何だってするさ。ここで死んででも!!」

金色の線がモルガン目掛けて一直線に向かっていく。しかし阻まれるのも当然か。

空間から突如現れた無数の闇に、八方を塞がれて思わず立ち止まった。牽制なのか知らないが、俺がその程度で止まると思うな!

一斉に襲いかかる魔法を瞬時に斬り払う。

モルガンの使う闇の魔法とは相対的なこの聖剣は、淡い光を放ち魔を寄せ付けない。玉座までの短い道が、途方もなく長く感じる。これまでの経験、出会い、道のりを鮮明に思い出す。


「私がっ!!聖剣程度に遅れを取るはずは!!」

広範囲魔法の影響でボロボロになった床を飛び越え、後数歩で届くというところで、目を見開いた。


モルガンが無造作に見せてきたのは、先程まで廊下で倒れていたアイカだった。襟首を掴まれ、その顔は上からじゃ確認できない。

足元の血溜まりが痛々しく、切先が鈍りそうだ。

真っ青な空に太陽の輪郭がすべて顔を出した頃、玉座の赤色を明るく照らしている。


「言っただろ。お前を倒す為なら、何だってするって」


「くっ…!!」

モルガンは膝をつき、斬り落とした左腕が床に落ちる。

左手で掴んでいたアイカはやはりというべきか、主人を失い人形に戻っていた。そういう小細工の準備が抜かり無いところは、昔から変わらないな。



聖剣の放つ力が強すぎるのか、俺自身の風魔法が掻き消されてしまう。


「最期だ。慈悲をかける気はないが、遺言は聞いてやる」


「…」


「なんか言ったらどうだ?」


「貴様のような…貴様のような愚弟に、情けをかけられるつもりはない…」


「…そうか。やっぱり、そうだったのか。俺の、唯一血の繋がった」


「黙れ!!!」


「貴様が…貴様さえ居なければ…!私が正統な王として、この國を治められたのに…。忌々しい、忌々しい…」


「そう思いたいならそう思いながら死んでいけ。だけど俺は…お前の事は思い出せないし、騙されたし、今もくっっそ恨んでるけど、姉さんが居たってだけで、少し救われてもいるんだ」


「…レオ」


「…ごめんな」

玉座ごとモルガンの胸を一刺し。最期まで持っていた杖が呆気なく床へと倒れる。







「ね、ねぇさん!待ってよ!」


「早く行くぞ、レオ」








「…あぁ、もう。朝日で前が見えないな」

姉だったそれに落ちる水が何であるかなんて、自分でも分かってた。でも、それを自覚してしまえば、膝から崩れ落ちてしまいそうだった。

キュインキュイン、と何やら慌ただしいサイレンが部屋に鳴り響く。

まさかあいつ!この期に及んで死んでも最後の抵抗か!?


『No.99(ナインティーナイン)。条件を満たしたため、誓約に基づき、発動します。

続いて、緊急シークエンスの条件もアンロックします。緊急シークエンス…アンロック完了しました。条件を満たしている事を確認…同時並行で緊急シークエンスを稼働させます』

機械的な声が室内で響き渡る。

女性のような声は、モルガンをどこか彷彿とさせる。


「はぁ!?」


『No.99(ナインティーナイン)第一工程(ファーストアクション)…危険性、汚染度、音声チェック、全システムオールクリア。システム、稼働します。暗転します』


《このようなものを残すのも一興かと思ったが、やはり止めるべきか?

まぁ良い、今そこでこれを聞いている時、我は絶命しているはずだ。誰かは知らんが、その一点にのみ、評価に値する。

王とは後へ託すもの。我はそんなものに興味は無いが、我にしかできぬこと故、声にて記そう。

巨悪とは深淵に潜み、現世を嘲笑うものたちのこと。だが、深淵は魔界の限りではない。

眼を鍛えよ。真実を見抜け。殺された私の言葉では、いまいち説得力に欠けるがな。

…我が城の最深部へ行け。そこで見た事は他言無用にしろ。あれを見てどうするか、それが王からの勝者へ贈る戦利品だ。


…話したいことはあらかた話した。ゆけ、我を殺した者よ。我が屍を越えて、世界を存分に開拓するがいい》


「…悪名に恥じない意地の悪さ、だな」


『No.99(ナインティーナイン)第二工程(セカンドアクション)…準備完了しました。固有名、レオン。権限の一部譲渡を許可…完了しました。

固有名、レオン。生体認証による地下室への入室が可能となりました。並びに、その他の権限も解除。詳細は地下室で閲覧可能となります』

地下室、と聞き慣れない単語やら、急に色々な情報が詰め込まれる。


『No.99(ナインティーナイン)最終工程(ファイナルアクション)…緊急シークエンスと連携…受諾しました。

こちらの音声は、固有名、レオンへ…貴方に向けた音声です。暗転します』


《もしもの奇跡。有り得ざる天命が働いた時の為に、これを遺す。我が唯一の汚点。一度追放した筈が、再び私の元へと舞い戻った小さな獅子。

私の、弟。

あの時お前を追放した事を、私は後悔していない。

私の野望のためだけに、お前を排除した。國全員の記憶の改竄をし、私ですら、お前と顔を合わせたあの日まで、忘れていた。

姉らしい事など何一つとしてしてないが、一つ、お節介を焼いてやろう。

地下の惨劇。我が國に永く続く過ち。いや、我が一族と言うべきか。

とにかく、お前がこの先、諸外国、果ては別の領域に足を踏み入れるならば、奴らに気をつける事だ。()()()の奴らはどこにでも潜んでいる。それも古くから。新興の魔王どもなぞ可愛いものだ。

奴らは闇に潜み、弱みに漬け込む。正体も、目的も知らぬ。ただ言えるのは、邪悪とは奴らのことを指すのだろう。

…私から言える事はもう無い。貴様は嫌いだ。生涯、好きになる事はないだろう。

ですが、性懲りも無く、これまでの事を思い出しても尚、私を姉として想うのならば。忘れないように。全てを糧にして、前に進みなさい。

それが姉としてかける、唯一の言葉です》


「…なんだよ。最後の最後に……うっ、うぅぁぁあああ!!」

その日、終戦を告げるように、男の泣き叫ぶ声がキャメロット中に聞こえたと言う。













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