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異世界転生は友と共に!  作者: 鬼桜天夜
第1章 『騎士の國 オルフェウス』
12/22

抵抗軍

「…」


「あらら、またですか?」


「また…か」

隣合った騎士達が、ポロッと口に出した"また"という言葉。こうやって王都が攻められる事は二度以上あるのだろう。


「西の辺境、マギナダイ辺りだな」


「開戦距離到達までおおよそ十分から十五分かと!」

レジスト、抵抗の名が付く軍だ。つまるところ、王への反逆者と言ったところだろう。常々思っていたが、この女王敵を作るのが趣味なのだろうか。そうでもなければ、こんなに反発する人々も居ないだろうに。


「フェイルノート、ロンギヌス。鎮圧に向かえ、止むを得ぬなら多少の犠牲は出して構わん」


「かしこまりました」


「王の意向のままに」

柔和な声と堅い声。相反(そうはん)する音色は、どこか悲哀を含んでいた。二人は私たちの横を通り過ぎ後ろの大扉から出ていくと、女王(かのじょ)は私たちへ向き直して言う。


「見ての通りこれから立て込みそうなのでな、お帰り願おう。下げろ」

そういうと、先程まで待機していた兵士がこちらへ来て、あっという間に私達を外へ追い出した。


「あっという間って、この事を言うんだな」


「何なのあの態度!失礼しちゃう!」


「そう怒るなよ緋華李、怒ってたってなんも始まらないだろ」


「そうは言ってもさー!」


「…モルガン」


「ん?どうした?レオン」


「ううん、何でもないよ。それより、これからどうする?一度ウリハラへ戻る?」


「いや、実は寄りたい所があるんだ。構わないか?」


「別にいいけど、どこ行くの?」


「ちょっと確認に、ね」





「って、なんで今まさに戦場になりそうな所に立ってるのよ!」

私が確認したかった場所、もとい団体とは、さっきナイティルに来ているという抵抗軍(レジスト)だ。円卓の騎士の敵対勢力となる抵抗軍、それがどんな奴らなのか知りたくて、わざわざ二人を連れてきたのである。


「情報収集は大事だってどこのアニメも言うだろ?特に推理もの」


異世界(リアル)とフィクションを混同すんな!」


「ふぃくしょん?」


「レオンさんは気にしなくて良いですから」


「おっ、噂すれば接敵しそうだな」

荒野の遥か彼方に相対する二軍。ピリピリとした空気が遠くにいる私達にまで伝わってきそうだ。


《ウム、我も行くとするか》

はい?行くってどこに。


《何を呆けておる、無論、あの両軍の間に決まっている》

はぁ!?何言ってるんだよ!フォーさんいくら本体がここに無いからって、調子に乗りすぎじゃないか?


《誰が調子に乗っておる。精神状態の我は万人から見えぬ、所謂(いわゆる)透明化が可能なのだ》

へぇー、つまり又聞きできると。


《それと、無属性魔法 間者の悦楽(かんじゃのえつらく)によって、お前達も話が聞けるぞ》

…因みに名付け親だれ。


《何を気にしているのか知らぬが、名付けは我だぞ》

特に気にする素振りもなく、堂々と言う梟に私は呆れ半分の顔をしてしまう。


《爺はちょぉっと天然入ってるからな。"森"の賢者だけに》

はいはいつまんないこと言ってんなよ。フォーさん、頼んでも良い?


《承知した》

今日は頭から出てきて私の頭を踏み台にすると、軍勢が睨み合っている戦場へ飛んで行った。あの梟いつか焼き鳥にしてやる。


「フォーさんのおかげで、私達も話を聞けるようになったから、ここでまったりしてよっか」


「えぇ!?あの梟ちゃんってそんな事出来るの!?」


「流石は森の賢者、その手の細工はお茶の子さいさいというわけか」

二人が感心しているのは構わないが、あの賢者が褒められるのはなぁ、気に食わないな。


《嫉妬か?》

若者がおじさんに負けて良い気はしない。


《カカッ!あの爺が聞いたらしばらくは自慢してきそうだな》

やだなぁ、言わないでおこ。


《主、着いたぞ。今から声を届ける》

頭に声が響くと、目の前に片耳だけにはめるタイプのイヤホンが出てきた。この時代にイヤホンなんて絶対に無いので、フォーさんが記憶を覗き見したとかそういう理由だろう。やましいことなど無くはないけど、無許可で見るのは、些か人としてどうかと思うのだが。


「これは、なんだ?」


「イヤホン…だよね?」


「イヤホンで合ってるよ。レオンは見た事ないよね、それに穴があるんだけど、その穴を自分の耳に向くようにはめて」

私の説明で一通り理解出来たようで、指示通りにすると、急にビクッと身体を震わせた。


「えっ!?あ、アイカっ!もしかしてこれ、あっちの声が聞こえてる!?」

驚きもそうだが、彼も男子だ。未知のものにワクワクするのも道理というもの。少年のように目をキラキラとさせこちらを見ている。


「そうそう。っと、そろそろ喋るっぽいね」




「我が名はオルフェウス円卓の騎士ロンギヌス!この白亜の城に何故攻め入る!抵抗軍(レジスト)の筆頭騎士よ!」


「我が名は抵抗軍(レジスト)筆頭騎士渡邉 千鳥(わたなべの ちどり)。それはこちらの言い分だ、円卓の騎士」


「…これは一体なんの真似ですか。ここ最近、抵抗軍(レジスト)の活動が活発化している。貴殿の入れ知恵でしょう。チドリ殿」


「僕は正義とシュヴァリエさんへ命を捧げる身。シュヴァリエさんの悩みの種を殖やしているのはそっちだ、円卓の騎士。それに、モルガンの最近の統治は目に余る」


「…つまりなんと言いたいと」


「看過できないって言ってんだよ、ロンギヌス」


「我が女王の(めい)は貴方がたの鎮圧。犠牲を出さぬ方が、両軍の為にもなりましょう、ここは一度引いてください。それに、どちらに犠牲者の天秤が傾くかなど、明白です」


「あぁ?そんな理屈タラタラ述べに来たんじゃないんだよ。今すぐ女王に会わせろ、こっちは押し通る気で来たんだ。そっちがどうなのかは知らない、ただ、王の間へ行く」


「十文字槍…こちらへ向けるか」


「はっ。そっちだって構えてるくせに。いいぜ、大将どうしの決闘と洒落込もうか」




「なんか思った以上にバチバチしてるな」


「いやいやいや!?何呑気に構えちゃってるの!決闘って、多分どっちか死ぬまで決着つかないでしょ!?止めなきゃ!」


「確かにまずいな…渡邉千鳥、間違いなく抵抗軍(レジスト)一の強さを持つ戦士だ」


「知ってるのか?」


「一対一で()り合ったことは無いけど、彼の槍裁きは凄まじかった。それに、あの十文字槍"六文(ろくもん)"も隣国の名工が造った槍。円卓の騎士と張り合える人なのは確かだよ」

渡邉…どう考えたって日本人の苗字だ。隣国の名工、もしかして。


「隣国って、どんな所?」


「そっか、知らないよね。三つある隣国の内の一つ、シャン・ド・フィオーリ。刀鍛冶の技術が高いのも特徴だけど、もう一つ、その国には凄い特徴があるんだ」


「それは?」


「自分の目で見た方が良いと思うな。俺も風の噂でしか聞いたことないから、この一件が一段落したら行ってみたいと思ってる」

どうやら日本では無いみたいだな、似た国ではあるみたいだけど。


「ちょいちょいちょーいっ!未来の話も良いけど、いま!あの衝突をどう阻止するかが重大なの!」


「ごめんって。緋華李にここまで言われたら仕方ない、レオン、お前は間に割り込む勇気ある?」


「君が行くならどこまでも。ただ、仲裁なら作戦を立てなきゃ話にならないよ。例えば、どちらかに着く…とか」

彼は真剣な口調で言う。

「反逆者となるか、王都の犬となるか・・・か」


「藍華言い方…」


「現実なんてそんなものだろ。それに、普通に仲裁に入ったんじゃ板挟みになって、こっちが潰されるだけだしな」


「ん〜それはそうかもしれないけどさー」


「俺から一つ、提案していいか」

レオンが神妙な面持ちで言うので、私もついつい畏まってしまう。


「…なに?」


抵抗軍(レジスト)側へつこう」


「いや、何言ってるんですか!?レオンさん!だってそれって、あなたの友達を、裏切る事ですよ!?」


「・・・友と女王を止める為か?」


「うん、渡邉が言っていることは、事実正しいんだよ。抵抗軍(レジスト)へつく事によって、王都の軍より規模は小さいとはいえ、勝ち目はあるはず」


「…私は構わないよ」


「藍華も何言ってんの!?」


「王都の様子はおかしいと思ってたんだ。それに、國っていうのは、いつだって革命を必要としているものだろ?」

腰に手を当て笑みを浮かべると、私の友は長いため息をつくと、こう言った。


「レオンさんにはお世話になってるし、何より、私も王都の人達が幸せに生活している様には見えなかったからね。分かった、こーさん」


《話はまとまったか?》

ジャックか。話はまとまったけど、お前が気になるのは予想外だな。


《気にはかけてたぜ?一応。それより、爺さんがいい加減早くしろだってさ》

うぇ、マジか了解。


「そうと決まれば速く行こう」

待ってましたと言わんばかりに、レオンが前へ出ると、魔法を発動した。


「俺の風魔法で一気にあの場所まで飛ばす。準備は良いかなんて聞かないよ!」

私と緋華李の手を取ると、右足を後ろへ下げ、腰を低く構えた。


「嘘ですよね!?というか驚き過ぎて疲れたんですけど!!」


「これは私も待ったを掛けたいんだが!」


「時間は待ってくれないっよっ!!」

顔面に強風が当たる。髪の毛が何本か抜けてもおかしくはなかったが、髪がなびいているのを感じたのでひとまずは良かった。数秒もしたら私達はロンギヌス、渡邉の間に割っていっていた。だがタイミングが悪かったのか二人とも槍を前に出していて、私達に驚いているマヌケ顔を晒していた。この國にカメラがあるなら、今すぐ持ってきて欲しいほどに。


「その勝負、待った!!」

空中で剣を抜き放ち、槍が交差する一点を斬る。狙い通り、槍はずれ、二人の立ち位置が変わる。


「誰だっ」


「王の間へ来た客人…!」

二人は同時に言い、同タイミングで私達も地上に立つ。

私は隣を見やる。その顔は風で見えなかった。


「ロンギヌス卿、ここは引いて下さい」


戯言(ざれごと)を吐くな、レオン。言葉で分からないのならば、この槍を振るうのみ。お前も女王に仕えた身、なら分かるだろう」


「知っています。知っているからこそ、俺は貴方達に剣を向ける」

彼は愛剣を友に向ける。それにどの位の覚悟が必要なのか、今の私は、まだ知らない。


「…フェイルノート」


「あら、なにかご用ですか?」

金髪の女性は、未だ遠くを見つめていた。


「多少の荒事は私と女王陛下が認める。割り込んだ反逆者(ども)も含めて捕虜にします」

その言葉を聞くと、ゆっくりとロンギヌスの方を向き、そして私たちの方を向いた。


「ごめんなさい、レオンとレオンのお友達さん。貴方たちの武運を祈っているわ」

そうおかしなことを言うと、手に持っていた琴を弾いた。その音は美しく、荒野に吹く潤いをもたらす風。この荒野が、緑の草原に戻ったように感じた。でも、本能が危険信号(シグナル)を発している。


「…緋華李危ない!!」


「私!?」

隣に居た緋華李の前が、妖しく紫色に光ったのを見逃すはずは無かった。剣で弾くと二擊三擊と、計六回ほどの攻撃を受ける。


「音の振動?振動を刃にしているとか?」


「惜しいわね、でも、答えを教えてあげるほど私は優しくないの」

続けざまに攻撃が浴びせられるが、矛先が私に向いてるのでまだ安心というものだ。気を抜いたら、一瞬で真っ二つになりそうだけど。


「お前ら一体…」


「味方ってだけ分かってもらえれば良いですよ」


「さっき死にかけてたのに余裕!?」


「レオンさん、私は藍華を信頼しているんですよ」


「護られてる側がイキるな!」

私が攻撃を捌き続けている間に雑談とか、どんな教育受けてるんだ。


「渡邉さんで合ってますね!緋華李のこと頼みます!レオンはロンギヌスの阻止を頼む!」


「りょーかい」

レオンが軽く了承する一方、肝心の渡邉さんは、


「なんで僕がこの女を守らないといけないんだ!それに、お前ら決闘に割り込むなど礼儀を知らなすぎる!」

などとワーキャー言っているが、ご生憎こちらは手が離せない。緋華李にアイコンタクトを取ると、分かったのか、説得をしてくれているようだった。

これで思う存分戦いに専念できるというもの。

でもあくまで相手を撤退させるだけで、致命傷を与える訳では無い。相手は殺すつもりでも。





「俺は貴方と戦いたくない、それは分かってくれますね?」


「それはこちらも同じだ、だが引く訳にも行かない」

二人は着実に距離を詰める、確実に、カウントダウンは進んでいく。


「やることは一緒ですよ、理由や思想が違うだけで」

彼は手に取る。固く、固く握り締めて。


「違いない」

彼も構える。矛先をレオン()に向けて。


「そこを引いてもらおうか!!」

彼らは同時に言い放った。そして地面を蹴る。

風邪魔の拡散(ブースト)もあり、レオンが数秒(コンマ)の差で敵の懐に入る。

だが相手も想定内なのか、下段からの攻撃に対し、槍の柄で上から抑えつける様に、槍を振り下ろしてくる。

両者とも分かりきっているからか、フルパワーではなかった。もうその目は、次へと進んでいた。


「流石というところですか。でも、俺にも、負けられない意地があるんですよっ!!!」

下段からの攻撃を中断し、槍を受け流す形をとると、見事に攻撃は地面へと道を逸らされた。そしてすぐ様跳ぶと、今度はレオンが上から剣を振り下ろす。

しかし、当然と言うべきか、攻撃を真っ向から受け止め弾き返した。

レオンは反動を利用し距離をとる。

彼らの戦い方は、ほぼ正反対に近い。どんな状況でも見極め、順応して攻めるレオン。

相手の搦め手も、全て防御して反撃を行う、不動の守りから反撃(カウンター)を決めるロンギヌス。


「言ったでしょう。もう、私は後には引けないと!!!」

そんな円卓の騎士ロンギヌスが激昂する姿に、背後の騎士達は、驚きが隠せない様子だった。


「らしくないですね。いつも凜然としている貴方が、そうも心を乱すなんて」


「きっとレオン、貴方には分からないですよ。翼を持つ、貴方には」


「翼…?何を言って…」


「言葉は無用!!」

彼はそう言い、先程とは比較にならないスピードで猛攻を仕掛けて来た。





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