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異世界転生は友と共に!  作者: 鬼桜天夜
第1章 『騎士の國 オルフェウス』
11/22

玉座に御座すは

「今日は晴天だ、我が(つるぎ)も喜びに打ち震えている。だが、俺は正反対に怒りに打ち震えている。何故か分かるか?アロンダイト卿」

正面から一人の騎士が出てきた。この白亜の壁のような白い騎士は、ガシャガシャと鎧の音を鳴らしてこちらへゆっくりと歩み寄ってきた。

腰にある剣は、アロンダイトが持つ剣よりも一回り大きく、大剣と呼ぶべきものだった。騎士は分厚い鎧で私より大きい様に見えるが、声からして年端もいかないようだった。口元は見えているが、目元は鉄の仮面によって隠されてる。


「えっと、あの人は?」


「俺の友ですよ」


「誰がだ!今日という今日は王都へ帰さないぞ、アロンダイト卿!」

剣をすぐさま抜き放つと、こちらへ、というよりアロンダイトへ突進してきたのだ。鎧を着ているのにも関わらず、目で追うのがやっとのスピードだった。すると体が急に右へと揺らいだのだ。咄嗟のことに何が何だか分からなかったが、上で金属の擦れる音を聞き、音源を確かめた。そこには太陽の描かれた大剣と、それより少し小さいが、力強い剣がぶつかり合っている。

私の脇腹はアロンダイトの左手で押さえられていて、かろうじて吹き飛んでいないが、もしそれが無かったら尻もちは確実に着いていた筈だ。右手に剣を持っている、当然だが鞘から剣を抜いたという事になる。あの一瞬で剣を抜く、そして私を抱えるという二工程をしたのか。しかも見ない(ノールック)で。


「そう牙を剥かないでくれ、我が友よ」


「友とこれとは話が違うだろうと何度言えば解る!」

白騎士は一層握る力を強めて剣に体重をかける。それに対し、アロンダイトはどこか余裕そうに見える。片手であの大剣を静止させる力の持ち主ということか。いや、そうじゃない、


「ははっ、我が友らしいな。今日という今日は、と言う割に手加減してくれているとは」


「口を閉じろ、アロンダイト卿ッ!」


「だが我が友よ、客人が居るのにそうカッカして、後悔するのは貴卿の方だぞ?」


「客人だと?貴様この期に及んでどこまでも…」

そこまで言うと、多分苦笑いをしているであろう私と、白騎士の視線が合った。口元が見えているので、唖然としているのが見て取れる。


「客人…ってことは、六芒星(ヘキサグラム)と戦ったっていう?」

こちらが見ても分かるように驚くと、攻撃をやめた。警戒は解いていないのか、剣は持ったままだったが。


「流石、ご明察だ」

アロンダイトは私を離すと、剣を収めた。そしてこちらを向いて、私へ手を向けた。


「こちらの方が今日、我らが女王と謁見を行うアイカ様ですよ」


「アイカ様…あぁ!レオンが連れて来たヒカリ様が言っていた方か!」

ヒカリとレオンはやっぱりこの王都へ来ていたのか!


「あのっ、二人は無事ですか?」


「えぇ、王都の宿にて休んで頂いています」


「じゃあ後は頼みますよ、私は大人しく湖の警護に戻りますので」


「こういう時にだけッ貴様という者はッ!」

颯爽と馬に跨り手網を引くと、ヒヒーンという馬の声と共に、アロンダイトは森の方角へ走り去って行った。

二人で見送ると、私達は同じタイミングで目を合わせた。気まずい空気が流れている、正直言うと、この人と会話したのってついさっきのヒカリ達についてだけ。つまり、気まずい。


「はぁ…全く、アロンダイト卿は相変わらずだ」

白騎士は額を指で押さえると、もう諦めたのか私の方を向いた。


「アイカ様、貴方も王都へいらしてください。ひとまず仲間と合流したいでしょうし」


「そうさせてもらいます」


「私はここの守護があるので同行は出来ませんが、王都の兵士には円卓の騎士 "ガラティン"の承諾を得ていると言えば大丈夫ですから」

ガラティン。恐らくガラティーンが語源なのだろう、そしてこれで分かった。円卓の騎士は、私が知っている円卓の騎士が持つ、円卓の騎士の武器の名を持っているのだろう。うん、実に分かりにくいな。


「分かりました、ガラティンさん、またいつか」


「あぁ、またいつか」

私はガラティンの横を通り過ぎると、そのまま真っ直ぐに王都ナイティルへと足を進める。ここら辺は平原でもなく、普通の大地が平に広がっている。ウリハラからここまで草原や森が多かったので、荒廃した様に見えてしまうのは錯覚だろうか。

円卓の騎士。数はあまり限定おらず、有名な騎士は何人といる。その中でも、今日会ったアロンダイト、ガラティンの所有者は最初に上がるであろう名前だ。

でも何故武器の名前なんだ?名付けによって何か強化(バフ)があるにしろ、偉人の名前で事足りるはず。気にしすぎか?


《主、解析が終わったぞ》


《おい爺、主語が足んねーぞ》

まぁまぁそんな喧嘩腰で行かなくても。で、何の話?


《それは失礼した。あやつら円卓の騎士が持ち合わせていた、剣についてだ》

おっタイミングいい。フォーさん、教えて。


《承知した。主の読み通り、両剣の名はアロンダイト、ガラティン。主が知る逸話通りでは無いだろうが、概ねそうだろう。

アロンダイト、刃こぼれを知らぬ片刃の剣。ガラティン、日の元では三倍の力を放つ両刃の大剣》


《名だたる聖剣達の中でも、かなり有名な二つだな》


《あやつらの名では無いだろうが、円卓の騎士としての名は、携えた剣の名のようだ。そして何故剣の名のかは、主との誓約故だろうな》

誓約?私の権能(スキル)とはまた違うのか?


《契約の権能(スキル)より力は強くないだろうが、それでも女王の魔法により、相応の力を増しておる。

剣の名を与えられた事により、円卓の騎士は強化されているという事だ。剣の名を使ったのに私情を挟んでいるかは分からぬが、それにより、携えた剣との繋がりが増しておるのは事実だ》

剣との繋がり、か。やっぱり剣にも意志とか宿るものなのか?

彼女は歩みを止めず語りかける。


《主の世界にもあっただろう、ツクモガミ、とか言うたか》


《意志を宿せる程の使い手は一国に一人や二人、酷けりゃ誰も居やしないだろうな。だが、永年(ながねん)武勇を積んだ武具、生命(いのち)を与えられた神器とかは関係無しに憑依(つい)てる場合が多いな》

武器に意志が宿る、剣との繋がり、まだまだ考えるものが多そうだな。




壮大な城壁を横目に、兵士が数人いる正門に辿り着く。ガラティンと話していたのを見ていたのか、顔パスとはこの事で、何も言わず通してくれた。槍や剣を持った兵士達は、この國の敬礼なのか、武器を掲げ立っていた。前世にもマーチングはあるが、本場というか戦士がやると、威圧感が違うな。マーチングではなく、普通の敬礼のようだけど。

正門を潜り、一歩王都へ入り込むと、そこは私の予想とは随分と違っていた。王都は賑わう訳でもなくて、ただただ人が住んでいた。いや、こう言うべきか。人が住んでいるだけなのだ。賑わいも活気も生気も営みも、何もかもが薄れていた。人が居るのならあるべきはずのものが、無い。一目瞭然だったのもう一つ、ここは碁盤の目の様な都だということ。規則正しい街並みは、それこそ怖さを感じる程だ。お店には笑顔は無く、井戸端会議に花は咲かない。子供達もそんな雰囲気なのを察知しているのか、暗い顔をしている。とりあえずギャラティンに教えてもらった宿へ行くことにした。歩きながら見る街の人々は、やはり浮かない顔をしていた。


《なんじゃこりゃ、王都ってのはこんな辛気臭い場所なのか?》

皮肉たっぷりにジャックが言う。今回は私も同意見だ、ウリハラとのギャップがあり過ぎる。


《ホゥ…思っていたよりも重度だったようだな》

思っていたより?


《噂話だが、あまり良い事は聞かなかった故な。もしやと思っていたが、真実だったようだ》

アトラスの森は人が入る事は少ないはず、それなのにそんな不穏な噂が届くなんて、相当酷いのだろう。

そして、いつの間にか目的の宿へ着いたようだった。流石と言うべきか、王都というだけあってホテルも豪勢で装飾も綺麗だ。まぁ、賑わいとイコールじゃないのが残念だけどね。


「…藍華っ!!」


「ごめん、待たせた」

緋華李はこちらへ突進してきたが、私は軽く躱すと、レオンの方へ駆け寄る。ヒカリが入口へそのまま走っていくのは、見てないことにした。


「ガラティン卿とは会った?」


『あぁ、ガラティン卿以外に、アロンダイト卿にもお世話になってしまった」


「アロンダイト卿…懐かしい名前だ。俺のことは、何か言ってた?」


「二番目に仲がいいってさ」


「そうか…そっか。それよりも、妖精の森を抜けてきたんだろ?見ただけだと、何も無いように見えるけど」


「大事無いよ、心配してくれてありがとう」


「(いいッ!でも久しぶりにあの視線はダメだってッ!)」

私がお礼を言うと、レオンはごもごも言いながら後ろを向いてしまった。今のって私が悪いのか??


《え、お前マジ?爺、こいつ素なのこれ、そしたらかなりやばいと思う》


《残念ながら元来持ち合わせた性根のようだぞ。こればかりは慣れるしかなかろう》

馬鹿にしてるだろ、してるよな。脳内組に怒りを覚えつつも、私は友の方を向く。


「女王様との謁見は二時間後だってよー」


「謁見?六芒星(ヘキサグラム)と戦った時の話をするんだったっけか」


「そうそう!それと他の話もあるらしいんだけど、それはレオンさんがしてくれるって」


「じゃあもう行っておいた方がいいんじゃないか?ここからお城まで距離があるみたいだし」


「藍華は疲れてないの?だってかなり時間経ってるし…」


「平気だ、レオンを連れて早速行こう」

レオン、と人声かけると、さすがに気づいたのかこちらへ駆け寄ってきた。


「もしかしてもう行くの?俺は構わないけど、アイカの疲労が溜まってるんじゃ」


「大丈夫だ、早く用事を済ませてしまおう」


「…ありがとう」

彼は礼を言うと、消えゆきそうな笑顔をしていた。レオンの待遇を考えると、私が想像している以上の悲劇に見舞われていてもおかしくはなかった。私も緋華李もそれに気づき、一瞬空気が静まると緋華李が口を開いた。


「よしっ!それじゃあ街をブラブラしながらでも行こうよ!」


「寄り道は無しな」


「そんな殺生な!」

観光しないとかおかしい!スイーツ巡りは!?とか何とか言っているが、そんな事をしていたらいつの間にか時間が無くなっているので、また今度と言って流した。




城まではそこそこの時間を使い、外の壁のように白い王城は、人を選ぶような、拒むような雰囲気を感じた。それが気のせいでは無いと、私は知っている。

城の内部は人が少なく、不気味とすら思った。煌びやかな絵画に丁寧に磨かれた床や壁。それらも、ここまで来ると寂しさを感じてしまう。

侍女かメイドか、洋城なので、多分メイドと呼ぶべき女性が四人。そして一般兵が居り、メイドの一人が先導してくれるようだ。

大人しくついて行くと、大広間、次に長い通路を抜けて、一際大きい扉の前に着いた。


「この奥に女王陛下がいらっしゃいます。再びご確認させて頂きますが、アイカ様、ヒカリ様、レオン様でお間違いないでしょうか」

黒髪のメイドが佇まいを崩さず、こちらへ尋ねてくる。決まりなのだろうが、大変だなと他人事のように思う。さっきから思ったが、この女性、あまり顔色が優れないが大丈夫なのだろうか。


「はい、間違いないです」


「感謝致します。それでは、失礼します」

スカートの裾を持ち、恒例のお辞儀をすると、戻って行った。悪評高いオルフェウスの女王様、どんな人なのか。私が一歩踏み出し、取っ手を握り締めて力いっぱい押すと、ギギギッという音と一緒に扉が開いた。


「…よく来た、私がこの国の王、モルガン・ペンドラゴンだ」

玉座は変わった形をしていた。ソファの様に横に伸びて人一人が寝転がれる広さはある。見ただけでも分かるぐらい、あのソファは硬いようで、寝たら首が寝違えりそうだ。

モルガンと名乗った女性は、まだ若く、二十代にいくかいかないかという所か。背に持たれ、指と足を組んでこちらを見据えている。

王の間には臣下と思われる人が一人。そして見るからに強そうな騎士が三人。

一人は柄の長い長槍を持った、銀髪で固い印象を受ける。あの二人よりは軽装備の男性の騎士。その騎士の隣に居る、竪琴を持ち鎧等を来ていない、隣の騎士と同年代位の女性

。最後の一人は二人とは距離を取り、我関せずという態度を取っている。体格だけで判断すると男性だが、声を聞いていないし兜をしているので分からないからひとまず私は気にしないようにした。


「モルガン陛下の御前だぞ!頭を垂れよ!」

隣に立っているオジサンと呼ぶに相応しい歳の男がいた。立ち位置的に側近か秘書か、傍づきには違いなようだった。

頭を垂れよねぇ、フォーさん、作法ってあるの?


《あるがお前じゃ無理だろう》

お前はまた人の事馬鹿にする。


「必要無い」

尖った氷柱(つらら)のような、心臓を貫かれたかと錯覚してしまう程冷たい声。挨拶の声色が嘘みたいだった。いくら王と言えど、臣下にそこまで恐ろしい事をするかと、私は正気を疑った。

私だけでなく、きっと誰でもあの言葉を向けられると気持ちが悪くなると思う。


「もっ、申し訳ございませんっ!」

顔を青ざめ、音速と見紛う速さで膝をついて、彼が頭を垂れたのだ。同じ場面に会ったら、私もそうしていただろうか、あまり考えたくはないが。


「顔を上げよ、サヴァルティア。私はそのような些事を気にするほど暇ではない」


「我らが王のご慈悲なる御言葉、有り難き幸せに御座います」


「早く下がれ」


「はっ!」

顔色一つ変えずに言うと、私たち、というよりレオンの方を向いた。目をより一層、冷ややかにして。


「貴殿の顔を二度(ふたたび)見ようものとは、いくら私と言えど、思いもしなかったな」


「無礼は承知の上です。ですが、(おの)が責務を果たすべく…」


「口を開くな」

レオンが自分のことを毛嫌いされていると嘆いていたが、正直甘く見ていた。発言を赦さない、生を謳歌することを憎み、存在証明を今にも断ち切らんとするその想いが、私にも伝わるほどの彼女の声。

それが王の威光ならまだ生易しい。でも、これは私情だ。私情だからこそ、彼女の本性の恐ろしさをひしひしと感じる。


「…っ」


「私は今、貴様に問うた訳では無い。言っただけだ、その顔と声を見聞きする事すら忌々しい。だが、招いたのはこちらだ、旅の者へは相応の態度で示すのが王としての義務」

「だが」、というと、私を向いた。


「わざわざ貴様に問う必要もない。そこの旅人よ、カルバス坑道で戦ったのは、リリスという女の姿をした魔物で間違いないな」

まさか私に話を振られるとは思っていなかったので、ワンテンポ返事が遅れてしまった。


「魔物かどうかは知りませんが、リリスと名乗っていたのは間違いありませんよ」


「…心得た。それだけでも十分な情報だ、礼を言おう旅人。もう用は無い、ウリハラへと戻って良いぞ」


「…え?」


「それはあまりにも酷な話です、女王!二人は死地に巻き込まれただけで、何も利益が無いのに王都まで来た、その事に対して褒美もなしというのは如何なものかと!」

レオンが前へ出て怒鳴るような声で言う。


「…貴様にそのような事を言われるいわれは」

魔力でも漏れ出ているのか、怒りの制御が徐々に外れていくのと一緒に魔力が出ていくと、突然、後ろの大扉が凄い勢いで開いた。


「緊急のご報告です!女王陛下!!」


「疾く言え」


「はっ!!西の辺境付近から抵抗軍(レジスト)が王都へ向かっている模様!既に迎撃態勢を取っておりますが、いかが致しましょう!」


抵抗軍(レジスト)?」

私と緋華李は同時に首を傾げていた。初めて聞く第三勢力、これはまた、波乱の予感がするな。



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