生徒会長でも恋がしたい
昨日投稿した分の、最後に少し付け足しています。そちらをよんでから最新話をお楽しみ下さい。
「さてと、秋原君の仕事も決まったし、一応書類だけ作っておきましょうか。」
会長はそう言うと、机の中から一枚のA4用紙を取り出す。
そのプリントには承諾書との文字が書かれており、俺の名前や生年月日、スマホの番号は疎か、既に担任印から校長印まで必要なもの全てが全て記入済みだった。
「秋原君、あとは君がここに印鑑を押すだけよ。持ってきてるかしら?」
「いやいや、ちょっと待ってください?まだ俺これ書いた覚えないんですけど!?」
「そりゃそうよ。だって私が書いたんだもの。」
「あははははー、さすが会長!仕事が早いですね!ってなるかぁ!!なんで俺の個人情報をここまで書いてるんですか!?」
「あら、案外ノリいいのね。さすが私が見込んだ男だわ。」
「いいから答えてくれませんかね!?」
「うふふっ、秘密よ」
どうやら会長は教えてくれないらしい。
だが、それは会長にとって最も良くない形で暴露された。
「葵ー、まだいるー?今日も葵の大好きな彼の隠し撮り持ってきた……よ…っ!!……うぅ、いったぁー……!」
(バサバサ!!!)
突然入ってきた先輩が壁にぶつかり落とした写真の束。それが数枚、俺の方へ床を滑ってくる。
……っ!!俺の写真っ!?
落とした張本人を見ると「アチャ〜」と言って会長を見る。
俺も釣られて会長を見ると、いつも冷静沈着な彼女が顔を真っ赤にしてアワアワ言っていた。
「……会長って、俺のこと好きだったんですか?」
「ち、ちちち、ちが……」
「もー、葵ったら、そろそろ素直になったらどうなの?そこまで顔赤くして言っても説得力ないよ?」
「そそ、そんな……、私はいつだって、す、素直よ?」
「ほーん?じゃ、秋原君のことをどう思う?」
「熱心に業務に取り組む素晴らしい人間よ」
会長は徐々にいつもの冷静さを取り戻していく。冷静な会長も素敵だけど、やっぱさっきまでのテンパってる会長、可愛かったなー。
「もう、葵ったらいい加減、観念したらどーなの!?秋原君だっけ?見てよこれ!」
そう言って会長の友達はいつも会長が使ってる机の引き出しを開け、大きめのアルバムらしきものを取り出す。すると、
「にゃあぁぁぁぁ!!!!!!!!」
会長が奇声をあげたと思えばダッシュで先輩の方へ走っていく。
「秋原君!パスっ!」
「おっとと。」
アルバムが宙を舞い、俺の手元に開いた形で収まる。そこにはさっきと同様、色んなアングルから取られた俺の写真が。ってなんで体育のあとの着替えシーンまであるんですかね!?
「会長……?」
「……きゅ、きゅぅぅぅぅ…………」
両手で顔を抑え、謎の声をあげる会長。そうです。それが見たかったんですよ。
そんな会長は顔を再び真っ赤にしながら涙目で叫んだ。
「ええ!認めるわよ!私は秋原 楓のことが好きなのよ!!いっつも楓君のことを考えてるし、思ってるの。思ってるのぉ!!」
「あの、会長?大丈夫ですか?幼児退行してません?」
「葵は君の話をする時はだいたいこんな感じだよ?で、君は葵のことどう思ってるのかな?」
「俺は、頼りになって、優しくて、美人な先輩だと思ってますけど。」
「恋愛対象としては?」
「考えたこともなかったですね」
「むぅぅぅー!!!なんでよ!葵、こんなにアピールしてたのに!絶対、惚れさすと思ってがんばったのにぃー!!!」
「会長!?マジでキャラが不安定なんで一旦落ち着きましょう!?」
「あははー、葵のアピールはいつも遠回しすぎるんだよねー」
そう言いながら先輩は会長を「おー、よしよし」と撫でている。どう見ても楽しんでるようにしか見えないな。
俺も撫でちゃダメかな?会長が可愛すぎてやばいのだが。というか、先輩と会長が百合っぽくて尊い。今ならご飯三杯はいけそうだ。
〜なでなでタイム(好きなBGMでも流しながら百合をお楽しみ下さい。)〜
なでなでタイム終了後、対面にはまだ若干泣き目の会長と、妙にツヤツヤした先輩が座っていた。
「……っと、じゃあこれよろしくお願いします」
「ええ、確かに受け取ったわ」
承諾書に印鑑を押して、会長に渡す。それを受け取った会長はもう一枚プリントを出し、
「これにも印鑑を押してもらえると嬉しいのだけれど。」
「これは?」
よく見ると婚姻届と書いてあった。ちなみに先と同じく後は俺が印鑑を押すだけになっている。
「いや、俺はまだ十六なんですけど!?それに交際もしてませんよね!?」
「いいねぇ葵!アピールはやっぱストレートに行くべきだよ!」
「そこ!むやみに会長を煽らないでください!?」
「そうよね!やっぱり自分の気持ちはちゃんと伝えるべきだわ。」
「その通りなんですけど、もうちっと自重も大切だと思いますよ?」
ダメだ……、俺がどんなに突っ込んでも二人してポワンポワンした空気を出している。もう帰ろっかな。
「じゃあもう俺帰りますね。」
「あ、待ってちょうだい。」
そう会長に呼び止められる。
会長は俺の前に立つと、少し頬を染めて、
「その、あんまり言っても説得力ないかもだけど、秋原君のことを好きだからってだけの理由で、仕事を斡旋した訳じゃないのよ?ちゃんと貴方を評価してるわ。そこのところ、勘違いしないように。」
「しませんよ。会長がそんなことする人じゃないって、ちゃんと知ってますから。」
「そう言ってもらえて嬉しいわ。」
そう言ってにっこり笑う会長。不覚にも見惚れてしまう。
それでも恥ずかしかったのかすぐ後ろを振り向き声を大きくする。
「明日から覚悟するといいわ。ガンガン、アピールするわよ!」
「程々にお願いしますよ。」
「ふふっ、考えておくわ。それじゃご機嫌よう。」
「ええ、お疲れ様でした!」
「またねー!明日から頑張れよ?少年!」
俺は声をかけてくれた先輩にも会釈をして会長室をでる。
「ははっ、」
自分の口からでた声に少し驚きながら、考える。果たして、今の笑いは明日から始まる新しい生活への楽しみか、はたまた、さっきまでの余韻か、どちらだろうかと。
まぁ、多分どっちもだろうな。
そう思いながらすっかり暗くなった空を見上げ、俺は家へと歩きだした。
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楓が帰った後の会長室。
「さて、桜子?あなたやってくれたわね?」
「何がー?」
「何が?じゃないわよ。あのタイミングで入ってきて、写真ぶちまけて、よくもそんなシラが切れたものね。」
「まぁまぁ、怒んないでよ、葵ー。結果オーライじゃない」
「まぁそうだけど……」
「それにさ、私は応援してんのよ?あんたの恋路を。」
「あれで応援してるとかよく言えたものだわ。まぁきっかけが作れたから良かったけど。」
「そうよ。さて、こっからは本当に葵の頑張り次第だよ!早いうちに秋原君を籠絡しちゃいなさいな!!頑張れ、親友。」
「ええ、頑張るわ、親友。」
そう言って、二人の少女はティーカップをカチンと合わせ、そのまま口に運んだ。
その部屋から見える夜空には多くの星々が瞬いていた。まるで一人の恋する乙女を応援するように。
会長も恋する乙女の一人だったようですね。
どーもMomijiです!
面白いと思ったらブクマ、ポイント評価よろしくお願いします!次回!気になってる読者もいることでしょう!林檎ちゃん登場です!出来れば今夜、出来なければ明日朝に投稿します。よろしくぅ!!