副会長のハーレム計画
普段、使われてない教室で俺の膝に頭を乗せ、俺に語りかけてくる少女を見る。
「あのね?私、今日は仕事したくない」
「まぁ、そんな日もありますよねー。って、その前に膝から降りません?恥ずかしんですけど……」
「むー……、ダメよ!昨日たくさん甘やかしてくれるって言ってたもの!今日は楓君にたくさん甘やかして貰うの!」
「そうは言っても仕事出来ないんですけど……」
そう言いながら机の上に山積みになっている資料を見る。
俺の仕事は生徒会長補佐。生徒会の中でどこの委員会にも属さない、生徒会長直属の役職だ。ちなみに三週間前に会長が作った。
そして、俺の膝の上でダダ甘えしている少女こそ、夏乃 葵。生徒会長その人だ。
薄く青光りする黒色の髪は艶やかで、シミ一つない白色の肌にパッチリ二重に藍色の瞳、通った鼻筋の下には桜色の薄い唇が付いている。圧倒的な美しさに、モデル顔負の体型で会長に告白する人は後を絶たない。まぁ、未だに一度もその告白を受けていないらしいんだけどね。
「むー、仕事なんて忘れて私に依存すればいいのに。スンスン」
「そんなこと言われてもって、ちょ!匂い嗅がないでください!」
「そんなケチなこと言わないで!はぁ〜!楓君の匂い、もう!最っ高!クンカクンカ!……あら?楓君から私以外の女の匂いがするわ?」
「あの、急に素に戻らないでください?びっくりするんで」
そう言って俺の服に顔を押し当て深呼吸をする会長。そして、目のハイライトが消えた。
「なんで貴方から二宮さんの香りがするのかしら?浮気?ねぇ、浮気じゃないわよね?」
「顔が近いですって。今日たまたま日直だっただけですよ。」
「そう、日直だったのね。安心したわ。でも、この匂いだけは許しておけないわね。うりゃ!」
「会長!?頭を俺に擦り付けて来るんですか!?本当に何してるの!?」
会長は顔を上げてドヤ顔で言う。
いつの間にか目のハイライトも戻っていた。
「マーキングよ?他のメス猫達に楓君は私の所有物だって主張してるの。だって、」
会長はそこで言葉を切ると、頬を染めながら俺の瞳を見つめてくる。その顔は恋する乙女の顔だ。
「貴方は私の右腕だもの……」
俺は考える。なんでこうなってしまったのか。
──────────
事の発端は三週間前だった。いや、かなり前から兆候は出ていた。
生徒会長、会計、書記の三人が女子で、副会長と俺こと相談窓口とクレーム対応が男子。普通にバランスの良い生徒会だったと思う。
だが、副会長の渡部はそれが嫌だったらしい。生徒会メンバーが決まった当時から、俺に対しての当たりがかなり強かった。
目の前でに広げられた、投票用紙を見て目を伏せる。
秋原 楓の人員交代を希望。
賛成 3票
反対 1票
俺、実は嫌われていたのかもしれない……。
「お前って、成績、顔、身体能力、全部へーぼん過ぎるんだよ。華のない奴は生徒会にゃいらねーんだよ」
そう言って近付いて来た渡部は耳元で囁く。
正直気持ち悪いからやめて欲しいのですが。
「俺の生徒会ハーレム作るためにお前は必要ねーんだわ。」
そうか、そう言う事だったのか。
俺は全て理解した。生徒会発足の時から当たりが強かった理由、俺が必要ない理由を。納得はしてないけど。
「会長には話、通してるから、解任は決定事項だ。さ、会長に挨拶して帰った帰った。仕事は俺が引き継いどくからさっさと帰るんだな」
そう言ってシッシッと手を降ってくる渡部を一瞥して踵を返す。
「じゃ、失礼しましたー。」
そう言って部屋を出るも誰も顔を上げない。
今まで一緒に仕事してきたんだから挨拶の一つぐらいあってもいいだろう。
腹を立てながら廊下を歩く。
「チッ!」
舌打ちしてみるも、誰も居ない廊下に音が吸い込まれていき、虚しくなる。
早く帰ろう。早く帰って今日は林檎に甘えまくってやる。膝枕はもちろん添い寝付きのフルコースだ。ヤッホウ!!
ふぅ、何とかメンタルを立て直しに成功。
さて、会長には色々世話になったから早めに挨拶しに行こう。あの人は生徒会で唯一俺に優しくしてくれた人だ。
高い学力も運動神経もないそんな俺が、会長のおかげで生徒会に入れたが、こんな形で辞めることになって本当に申し訳無いと思う。
できることならもう少しだけ会長の下で働きたかった。なんてことを考えている間に、もう会長室についてしまっていた。
新作です。
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