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魔法の覚え方

 ミリアも同じ宿屋で泊まっているらしく、1階の酒場で夕食をすることにした。

 勿論、ギルドに報告をしてからだ。


「ギルドの人に褒められちゃったね」


「ふふ、結構な数を討伐しましたからね。今日は有難うございました!」


「こちらこそ。そういえば、レベルも上がったと思うけど魔法は覚えられたの?」


 ミリアは朝の時点では魔法を使えないと言っていた。

 しかし、今は一日の狩りでそこそこレベルが上がっている。


「それが、まだ……6レベルも上がったんですけど……」


 中々に死霊術師(ネクロマンサー)の魔法は難易度が高いようだ。


 そういえば、魔法ってどうやって覚えるんだろう?

 もしかすると僕も習得できれば、魔道士系のジョブを手に入れることができるかもしれないんだよね。


「そもそも、魔法ってどうやって覚えるの?」


「やはり、レベルを上げて自然と覚えることが多いみたいですよ。

 スクロールや魔法道具を使った時に習得したりと、珍しい例もありますが」


 魔法道具といえば、露店を見た時に火を付けたりする物が売られていた。

 今度、ぜひ試してみよう。


「はいよ、お待たせ! 熱いから気をつけて食べるんだよ!」


 ゴトッとテーブルの上に、湯気が立ち込めた皿が置かれた。


 ぐは、良い匂い!

 何の肉かは分からないけど、見た目はまんまクリームシチューだ。

 匂いに釣られて、お腹がぐぅ~ぐぅ~と鳴る。


「ミリアちゃん、どうしたんだい。男連れなんて珍しいね!」


 料理を持ってきた女将さんが声を掛けてきた。


「あ! いえ、その……今日はシンジさんがパーティを組んでくれたので、それで……」


 ミリアが顔を赤らめて、もじもじと答える。


「おや! それはよかったねぇ~。兄ちゃん、良いやつじゃないか! ミリアちゃんが死霊術師だからって、仲間に入れてくれないらしいんだよ。こんなに素直で可愛いんだから、何も気にするこたぁないのにねぇ」


「あぅ……そんな、可愛いだなんて……」


 褒められて、一層もじもじしてしまうミリア。


 僕も女将さんに同感だ。

 やはり、可愛いは正義なのである。

 見るが良い!

 照れてピコピコするエルフ耳を!


「あ! ジョブと言えば、ずっと気になっていたのですが、シンジさんのメインジョブって何になるのですか?」


「……ミリアちゃん。冒険者に手の内を聞くのはマナー違反じゃないのかい?」


「つい……すみません! 忘れて下さい!」


 女将さんは、アハハッと愉快そうに笑いながら厨房に戻った。


 とはいえ、ミリアが気になるならば話してもいいとは思う。

 それにまぁ……、言えば分かるかな。


「僕のジョブは……『浪人』だよ」


「……えっ?! あー、ジョブ判定の儀式がまだだったんですね」


 と、まぁこんな感じ。

 僕が「浪人」と発音しても、相手には「無職」と翻訳されて伝わるのだ。


「違うよ。ジョブ判定はしたけど、無職ってジョブになっちゃったんだ」


 僕はステータスプレートをミリアに見せる。


【シンジ・ヒサダ】


 メインジョブ:無職

 LV:1

 性別:男

 賞罰:なし



「ちょっと情報が古いけど、ごめんね」


「ほ、本当に無職と書かれていますね……」


 ミリアはプレートを覗き込み、呟く。


 あれ? メインジョブが無職って、一般的には珍しいのかな。

 教会じゃ「ハイハイ、さようなら」って感じだったから、割とよくあるダメジョブなのかと思っていた。


 今後、僕は社会的に差別されたりするのだろうか。

 ……不安になってきた!


「でも、シンジさんはお強いですし、関係ないですよ! それに無職ということならば、このまま他のジョブを自由に経験できますしけね」


 あー、補助ジョブってもしかして、ジョブ判定をしていない人向けの職業体験枠なのかも。

 というか、その枠が使えるのもバグじゃないの!?


「ちょっとかっこ悪いけどね! でも、選択の自由がある方が僕の性にあっていると思うんだ」


「ふふ、さすがシンジさんです!」


 僕は無職になってから2日目だというのに、知ったような口を利いてみた。

 しかも、真なる無職ではない。

 だが、時には流れに身を任せることも重要なのだ。



 ◇



 その後は、当たり障りのない雑談が続いていた。


「そういえばエルフってことは、実は年上だったりするのかな? てっきり、同い年くらいだと思って話しちゃってたけど、違ったら失礼だったなと今更気が付いたよ」


「ふふ、大丈夫ですよ。私は見た目通りの年齢です。今、15歳ですね。母なんかは私の10倍以上は生きてますが」


 なんて年の差の激しい親子なんだ!


「はぁ~。やっぱり、エルフは年齢のスケールが違うね。そんなに生きてから成人なんだ」


「いえ、母はハーフエルフでしたので、長い間、身を落ち着かせられる場所が無かったそうです。そのためにエルフでも晩婚になりますね」


 この世界でも定番のハーフエルフ差別は存在するようだ。

 いや、言い方的には”あった”のだろう。


「ということは、最近はハーフエルフへの偏見はなくなったんだね。良いことだ」


「完全にではないですけどね。私のフルネームはミリア・アーベ・ローランドなのですが、この”アーベ”のミドルネームが、混ざっている先祖の名前です。ハーフやクォータのエルフは、ミドルネームを名乗ることが義務付けられています」


「アーベ? 安倍? 日本人みたいなミドルネームだね」


 あ、やべっ!

 思ったことを、そのまま口にしてしまった。


「え、ええ、おじいちゃんは日本人でした。むぅ?」


 しかも、当たってしまったようだ。

 ミリアが露骨に訝しげだ。


「ちょっと、日本語に詳しくてねー」


「本当ですか!! お願いがあります!!」


 あれ? 思ったのと違う食いつき方されてしまった。

 知りたい日本語でもあるのだろうか??


「……僕にできることなら協力するよ」


「ありがとうございます!! 後でお部屋の方に伺わせてください! 準備してきます!!」


 ミリアはタタッと二階の宿屋部分へ駆け上がっていった。


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