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異世界は期待を裏切らない?

 それから僕は、手こずりつつも十匹程の一角兎を狩った。


 1回あたりの戦闘時間は短いものの、僕が挑発を入れた一匹はこちらへ疾走して来るが、それ以外の兎は蜘蛛の巣を散らして逃げてしまう。

 警戒した兎は穴に籠もってしまい、いっこうに出てこない。

 視界に入らない相手には、挑発を使えない。


 仕方なく離れた場所を探す、の繰り返しで草原を歩き回る方が遥かに大変だった。



【シンジ・ヒサダ】


 メインジョブ:浪人

 LV:9

 HP:506(+215)

 MP:227(+75)

 STR:87(+37)

 VIT:63(+29)

 AGI:81(+22)

 INT:57(+15)

 SAN:44(+15)


 スキル:

 刀術<Lv1>、槍術<Lv2>、弓術<Lv1>、挑発<Lv->


 魔法:

 メニュー操作、自動翻訳



 しかし、夢中で兎を倒しまくった成果は出ている。

 槍術スキルもLV2まで上がっていた。


 その頑張りのお陰で、すっかり日が落ちかけている。

 街から出た時には既に良い時間だったのだ。


 草原で草を食べる蟷螂(カマキリ)を糸を吐くバッタが捕まえて、UFOキャッチャーのような脚をした蝶々がそのバッタを連れ去っていく姿が興味深く、見かける度に何度も観察していた、とか全く全然関係ない。


 いや、そんな逆の食物連鎖を見てしまったら、釘付けになるのはしょうがないのだ!


 言い訳は後にして、僕は慌てて全力疾走した。


 しかし、全く息が切れる気配がない。

 これもレベルアップした効果かな?

 このペースなら、今日中に街に着けそうだね。



 ◇



 辺りが暗くなり、狼の遠吠えが聞こえた時には本格的に焦ったものの、日が沈んでから暫くして僕は街に着けた。


 ん~、今日は何だかんだで疲れた!

 辺りも真っ暗だし、もう休みたい。


 宿屋を探してみよう。

 異世界の冒険といったら宿屋だ!

 お腹も空いたしね。


 新しい街は魔物の侵入を防ぐ高い壁に囲まれており、入り口の門には衛兵が立っている。

 僕は、兵士にステータスプレートを提示して街に入った。


 門から殆ど歩かずに宿を見つけられた。

 門前宿は木造の質素な見た目ではあるが、酒場と宿屋を兼ねているようで、入り口の方から良い匂いが漂う。


 中に入ると、ガヤガヤッと酒場らしい喧騒が広がった。


 僕が空いているテーブルに座ると、


「いらっしゃい! 何にするかね? 今日のおすすめは、ロムルバスのムニエルだよ!」


 と、女将さんらしき人が注文を取りに来た。


 なんだろう、ロムルバスって??

 ムニエルだから魚だよね。


「それじゃ、そのおすすめをください」


「あいよ! すぐに持ってくるよ!」


 暫し待っていると、白身魚のムニエルが出てきた。

 早速、僕は口にしてみる。


 ……うん、普通に食べれる。


 多分、川魚なのかな?

 しかし、やや塩気が薄い。

 やっぱり塩は貴重なのだろうか。


 しかし、サービスで出してくれた野菜のスープは、想像以上に美味しい。

 トマトスープのような酸味があり、それでいて優しい味付けだ。


 食事も終わり、一息ついた時だった。


「おい! 坊主!! 見かけねぇ顔だなぁ?!」


 ジョッキを片手にガラの悪いおっさんが、僕の隣にどかっと腰を下ろした。

 おっさんは肉体に自信があるのか、かなりの軽装で露出が激しい。


 怖いし、いろいろ見たくないので目を逸らす。


「無視すんのか、ああっ!?」


 ……酒場でチンピラに絡まれるとか、異世界の鉄板だ!

 しかし、実際に絡まれてみると超怖い。


 流れに乗るならば、強い酒を飲んで仲良くなるのが正解だろう。

 だが、僕はお酒が飲めない。


「……す、すみません。お酒は飲めません……」


 ビビったせいで、自分でも意味不明な返事をしてしまう。


「ああ!? 何いってんだお前?!」


 ひぇ・・・! ごめんなさい! ごめんなさい!


「ガキに無理やり酒を飲ませる気なんてねぇよ! こんな時間に酒場に居るとあぶねぇぞ!? さっさと帰んな!」


 普通に心配してくれたようだ。


「……帰る場所がねぇなら、うちに泊まるか?」


 なんなの異世界人、優しい、愛してる。


 しかし、宿に泊まる体験をしたかったので、おっさんの申し出を丁重に断り、今日はここで一部屋を借りることにした。



 ◇



「ふぁ……流石に今日は疲れた……」


 異世界召喚、買い物に魔獣討伐。

 振り返えれば、一日で馬鹿みたいにいろいろな出来事があった。


 しかし、本当にゲームみたいな世界だと思う。

 本当はVRMMOとかいうヤツなんじゃないだろうか?

 ゲームのウィンドウみたいなのも表示されるし、そう言われたほうが納得できる。


 あ! ウィンドウで思い出した。

 結局、補助ジョブってなんで開放されたんだろう?

 反対にスキルは全く増えなかったし。

 アニメみたいに二刀流とか出来たら面白いんだけどなぁ。


 まぁ、挑発スキルがあるし、攻撃を見切ったりできればパーティで盾役になれそうだ。


 > スキル「心眼」を習得した。


 うお! なんか増えた!

 スキル名から察するに、見切り系のスキルなのかな?


 ……しかし、また異様なタイミングだね。

 ベットで寝そべっていただけなんだけど。


 僕が考えたことが都合よく開放されると言うよりも、後出し感が漂う。

 今、二刀流スキルも頭によぎっていたのに開放されなかったしね。

 前提を満たした上で、意識することが追加条件とか?


 その後も白刃取り・銭投げなどをイメージしたり、呟いたりしたけど追加されなかった。

 条件を満たしていないのか、予想が外れているのか……。


 まぁ、わからんもんはわからん!


 流石に疲れたし、もう寝よう。

 その内、ヒントになるような出来事が起こるかもしれないしね。



 ◇


 

 翌朝、屋根にとまる小鳥の囀りに目を醒ました。

 昨日は爆睡したせいか、いつも以上に清々しい気分だ。


 今日、やることは決まっている。

 やはり、異世界召喚といえばギルドだろう。


 昨日の夜、ギルドの所在地は酒場で確認済みだ。

 場所は街の中央広場、噴水の前にあるらしい。


 さっそくギルドへ向かう。



 ――カランカランッ


 ギルドの入り口は観音開きのドア。

 冒険者同士の待ち合わせに使うのか、幾つかのテーブルが設置されている。

 それなりに早い時間のせいか、受付には誰も居ない。


 僕はそのまま進み、空の受付に話しかける。


「すみません! ギルドに登録したいのですが」


「はい、は~い」


 カウンターの背にある扉から軽快な返事が聞こえ、ガチャリッと人が出てきた。

 出てきた人物を見て、僕は思わず瞠目した。


 うぉっ! 猫耳だ!!


「ギルドへの登録は初めてかニャ?」


「あ、はい! 初めてです!」


「それでは、こちらの用紙に名前と出身地を記入くださいニャ。代筆が必要なら銅貨3枚でサービスするニャ」


 しっかりと語尾が「ニャ」だ。

 異世界は、定番を裏切らない。


 しかし、代筆とは有り難い。

 会話や読む分には翻訳されるが、書くことはできないので嬉しいサービスだ。


「代筆をお願いします。出身地はリクノア、名前はシンジ・ヒサダです」


 ちなみにリクノアは、僕たちが召喚された街の名前だ。


「……オッケー、書けたニャ。そして、これがギルドカードだニャ」


 書き終わると、受付の人がカードのようなものを渡してくれた。

 見た目はステータスプレートと似ている。

 僕が手に取るとカードが輝いて、文字が刻印された。


「番号を確認するからカードを貸してニャ」


「番号?」


 さっき刻まれてた文字のことかな?


「そうにゃ、カードの番号は――」


 それから、僕はカードに刻まれた番号と、ギルドの説明を受けることになった。


 ギルドのサービスはどれも便利で、今後も重宝しそうだ

 そして、思ったよりカードには高度な技術が施されている。


 カードに刻まれた文字はギルドの会員番号であり、触れた人の魔力やステータスの傾向から、人を特定する魔法技術によって割り当てられる。

 地球でのDNA鑑定みたいなものだ。


 会員番号の発行後、ギルド協会に通信魔法で登録した内容が送られる。

 今後は会員番号さえ分かれば、紛失時や、他国での活動等々、円滑に対応できるそうだ。


 ギルドは依頼の斡旋の他に、簡易的な銀行のような預金サービスもしているらしい。

 このサービスを利用すると、依頼の成功報酬も直接振り込まれるので便利だ。


 他にもいろいろあるけれど、実際に利用しながら覚えていけばいいだろう。



 ◇



「大体こんなところだニャ」


「ありがとうございます。このまま仕事を受けたいのですが、何かありますか?」


「初めてだと、低ランクの依頼しか受けれニャいけど……」


 ギルドのランクはF~Sまであり、始めはFランクからだ。


 ちなみに、ギルドカードは身分証明代わりになるが、Dランク以上じゃないと有効にならない。

 まぁ、無闇に証明書を発行していたら、何かあった時に問題になりそうだしね。


「キミはどんなスキルが使えるのかニャ? 見た所、前衛みたいだけど……」


「はい、槍術スキルを使えます」


「了解ニャ。じゃあ、街のそこいらに居る魔獣の討伐なら簡単だし、いいかニャ」


 見せてくれた依頼書の内容は、一角兎の討伐だった。


 ちょっと代わり映えしない気もするけど……。

 まぁ、昨日のお(さら)いをするには丁度いいね。


「では、それで!」


「じゃあ、よろしく頼むニャ~」


 よし!

 これからばんばん依頼を達成して、ランクを上げるぞ!!

 ……っとその前に。


 僕は、会話の最初から疑問に思っていた事を質問する。


「ところで、()()()()のその耳は本物ですか?」


「へ? そうニャ。もしかして、初めて見たのかニャ? ここらへんじゃ、獣人は珍しいからニャ~」


 ……くそ!!

 初めての猫耳が男だなんて……!

 語尾に「ニャ」まで付いて完璧だったのに!

 猫耳っていうのは、可愛い女の子じゃないの?!


 ……いや、まてよ。

 僕は本物の耳かと訊いたが、”猫の”かとは尋ねていない。


 それに、普通に会話が成立しているから忘れがちだけど、僕に届く音声は日本語へ翻訳されたものなのだ!

 猫耳語尾の「ニャ」とは限らない、山形弁的な何かではないだろうか?


「折角だし、パーティを組んでみたらどうかニャ?」


 うん、これは聞けば聞くほど山形弁。



 ……ん? 今なんて??


「丁度、キミと同じく駆け出しの子が、パーティ希望しているニャ。いい機会だし、一緒に組んであげてほしいニャ~」


 おお、パーティの紹介とは。

 肩を並べる仲間との出会いはロマンの一つだよね。

 しかも、相手も駆け出しみたいだから、同じ目線で感覚を共有できそう。

 初めてのパーティとしては、格好の機会じゃないか。


「僕の方からも、お願いします!」


「それは、よかったニャ! 入口の方のテーブルに座っている子がそうだニャ」


 案内されたテーブルに向かうと、黒髪の女の子が座っていた。


ようやくチュートリアル的な部分まで書けました。

文章を書くってとても難しいですね。


◆(2019/2/3 追記)

誤字脱字等の修正

一部、表現の仕方を変更

時系列が前部と噛み合わない点を修正

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