08仲直り
「あぁ、その袋っ!」
キツネくんが悲痛な声をあげました。
クマさんはビックリして、袋を確かめます。
袋には大きな穴が空いていて、袋の中にはドングリが一個も入っていません。
「あ、さっき、アライグマくんがかみついたから……」
クマさんは真っ青です。
「ぼ、僕が余計なことをしたせいだ」
キツネくんは落ち込みます。
「放っておけばいいのに、わざわざ、アライグマくんに意見を言ったりするから。ごめん、ごめんね、クマさん」
キツネくんはうなだれて、クマさんにあやまります。
「頼まれたわけでもないのについてきて。怒ってばかりで。本当に、ごめん」
「え、いや、気にしてないよ」
「さっきも、クマさんがあやまっているのに、すぐに許してあげられなくてごめん」
あやまり続けるキツネくんに、クマさんはにっこりと笑って言いました。
「大丈夫だよぉ。ドングリがなくなっちゃったから、しょうがない、この袋を池になげこんでみるよ」
キツネくんは目をパチクリさせました。
「キツネくんがもう、怒ってなくてうれしい。ドングリ池までよろしくね」
「……うん」
――がさ、がさり。
しげみがゆれて、クマさんは石のように固まってしまいます。
キツネくんもおどろいて、音の方をみると、小さな顔がひょっこりとのぞきます。
「やぁ」
「あぁ、君は」
しげみから出てきたのは、あのいたずら者のリスさん。
気まずそうにしながら、やってきます。
「……こんどは、なにをしにきたんだい?」
キツネくんは苦々しい顔でたずねます。
リスさんは気まずそう。
「あ、あのさ。ドングリがなくて、困っているのかい?」
「そ、そうだけど」
クマさんが答えます。
「じゃ、じゃぁ、これ、あげるよ」
リスさんが差し出したのは。
一粒のドングリ。
キツネくんとクマさんは、目をまんまるにしてリスくんとドングリを見つめます。
「さ、さっきのおわびというか、お礼というか。と、とにかく、あげるから。じゃあねっ!」
リスさんはとととっ、と木を駆け上がると、そのまま、どこかへ行ってしまいました。
キツネくんとクマさんは、ビックリしたまま顔を見合わせていましたが、
「ふっ」
「ははっ」
笑い声をあげると、そのまま、ドングリ池を目指して、また、歩きはじめました。