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07アライグマくん




 クマさんたちが黙々とあるいていると、キツネくんの耳がピクピク。


「なにか、聞こえないか?」

「え? あ、たしかに」


 耳を澄ますと、誰かが怒っている声が聞こえてきます。

 二匹は何事かと、声が聞こえる方へと走り出しました。

 すると、そこには怒り狂ったアライグマくんと、おびえたウサギさんがいました。


「おい、ウサギッ! なんで、答えない。オレは普通にしゃべっているのに なんで、おびえるのか聞いてるんだぞ! オレが、これからひどいことをするとでも、思っているのか? なんて、失礼なやつなんだっ!」

「そ、そんなぁ……。わたしは、別に……」


 ウサギさんはぷるぷる ふるえていて、今にも泣き出しそうです。

 

 キツネくんは、またも、深い、深ーい、ため息を一つ。


「僕には関係ない。ぜったい、めんどうなことになるぞ」


 ぼそり、とつぶやきます。

 クマさんもうしろから、同意します。


「見てるだけで怖いけど、声をかけたら、もっと怖くなるよ」


 それでも。

 キツネくんは見て見ぬふりができなくて、思いきって声をかけました。


「アライグマくん。ウサギさんに答えをもらう前に、自分でも考えてみるべきじゃないの?」

「なんだよ、キツネ。おまえには関係ないだろう?」


 ぎょっとするクマさんを尻目に、キツネくんは続けます。


「みんなと楽しくすごす努力もしないで、みんなに仲良くしてもらおうなんて、考えが甘いんだよ。今だって、目の前のうさぎさんが泣きそうなのに、知らんぷり。そういう、冷たいことをしてるから、みんなは笑ってくれないのさ。アライグマくんは、自分のダメなところを見ないふりして、他人のせいにするのをやめるべきだよ」


 このままでは、アライグマくんはろくなことにならないよ、といさめます。

 アライグマくんは、真っ赤になって怒りはじめました。


「うるさい、うるさいっ! なーんにも、知らないくせに! 適当なことを言うなっ!!!」


 森のみんなは、アライグマくんをほめたり、やさしくしたり、してくれません。

 いっつも、逃げる準備をして、こちらの様子をうかがうばかり。

 アライグマくんが、なにもしてない日も、イライラしている日も、ずっと ずっと、同じです。

 だから、イライラしていない日も、みんなのせいでアライグマくんはイヤな気分になってしまうのです。

 ……もしかしたら、イライラしたときは家で一人でいて、みんなにキツイことを言わなければいいのかも。そんなふうに、ちらりと考えたことがありますが、でも、アライグマくんは、ガマンなんてしたくなかったのです。

 そのことを、キツネくんに見透かされた気がしたアライグマくんは、ちょっと、やましく思いましたが、大きな声をだして ごまかします。


「オレは間違ったことなんて、してないぞっ!」

「でも、正しいこともしてないよ」

「なんだとぉっ!」

 

 とつぜん、走り出したアライグマくんはキツネくんに、どーんっ、とたいあたりしました。

 そして、何度もかみつこうとしてくるので、クマさんとキツネくんは大あわてで、逃げ出します。

 それを追いかけたアライグマくんは、クマさんをかもうとして失敗。かわりに、ドングリの入った袋をガブリ。


――ビリッ


 袋がやぶける音がしましたが、二匹はそれの意味することにも気づかず、そのまま走りつづけました。

 二匹が走る足音にかくれて、ドングリはコロコロと道に落ち続けていました。

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