06オンボロ橋
キツネくんとクマさんが道を進んでいくと、だんだんと道が細くなり、暗くなっていきます。
クマさんはブルブル震えながらキツネくんの後ろをついていきます。
「……クマさん、僕がついてこなかったら、どうするつもりだったんだい?」
「もっと怖くて、ぜんぜん、進めなかったと思うよ。キツネくんがいて、よかったぁ」
クマさんはのんきにニコニコしています。
キツネくんは渋い顔をして、だまってあるき続けました。
すると、二匹の進む先に、オンボロ橋が見えてきました。
オンボロ橋は、この大きな大きな逆さ虹の森を半分に分ける川にかかった吊橋です。
森に住む動物たちは、ほとんどが川の”あっち”と”こっち”のどちらかだけで暮らしています。
逆さ虹は大きな森なので、”こっち”のはしから”あっち”のはしまではとても遠く、行くのは大変。
だから、”こっち”と”あっち”のどちらかだけで生活しているのです。
そのせいで吊橋はめったに使われず、手入れされることもなく、ボロボロです。
今も、風が吹いてゆれるオンボロ橋は、キィキィと音を立て、今にも壊れそうに見えました。
「こ、この橋をわたるの……」
クマさんは真っ青になって聞きました。
「まぁ、そうだね。ドングリ池は川の向こうだし、橋はここにしかないんだから」
キツネくんはしかめっつら。
「まぁ、とりあえず、僕が先に渡ってみるよ。大丈夫そうだったら、クマさんも渡ればいいさ」
「えぇ、一緒に渡ろうよ。ボクだけでなんて怖いよ」
クマさんは震えて言いました。
「はぁ? この橋を見てごらんよ。 クマさんと一緒に乗ったら壊れそうなぐらいボロボロじゃないか。 順番に渡ったほうが安全だよ」
クマさんの懇願をキツネくんはバッサリ切りました。
クマさんは涙目で震えています。
「クマさんと一緒に渡るなんて、それこそ怖すぎるよ。僕でさえ、恐怖でふるえちゃうね」
そう言うと、キツネくんはクマさんをおいて、さっさと橋をわたり始めました。
オンボロ橋は踏み板がところどころ抜けていたり、割れていたり。
物によっては、ふもうとした瞬間、ピシリ、とヒビが入ったり。
キツネくんはあわてて足をあげると、その板をよけて先に進みます。
「クマさん、踏み板がもろくなっているところもあるから、気をつけて」
後ろでまっているクマさんに、アドバイスしながら進みます。
そして、あともう少しで渡り切る、その瞬間。
「うわあーっ!!!」
クマさんの悲鳴と共に、橋がギィギィとゆれます。
キツネくんがビックリして振り返ると、ドスドスと橋をわたるクマさんが。
キツネくんは目を皿のようにまるくしました。
そして――。
「あっ! そこの踏み板はっ!!!」
キツネくんの注意もむなしく、ヒビの入った踏み板を勢いよく踏み抜いたクマさんは。
――バキィッ
「っっっ!!!」
ゆらゆら とゆれるオンボロ橋に寝っ転がり、その隙間から頭と両手をぶらぶらとゆらすことになりました。
「お、落ちるぅっ! うわぁあんっ!」
クマさんは怖くて泣き始めます。
「はぁーーー」
キツネくんは、深い深いため息を一つ。
クマさんと一緒に乗っているせいか、ギチギチと音をたてるロープに目をやりつつ、そうっと、そうっと、クマさんのもとへ。
「キツネくん、ごめん、ごめんねぇ」
泣いてあやまるクマさんにも無言で、引っ張り上げました。
「静かに歩いてね」
それだけ言うと、さっさと橋を渡りきってしまいました。
クマさんは心細くて、走って追いかけたくなりましたが、我慢して、今度はゆっくりゆっくり、橋を渡ります。
今度は、無事に橋を渡りきることができて、クマさんはホッとします。
でも、渡った先にいたキツネくんは、カンカンになって怒り始めました。
「クマさん、僕、言ったよね?」
一緒に橋にのったこと。
走ったこと。
注意した踏み板を踏んだこと。
キツネくんは一つ一つをあげて、クマさんを怒ります。
クマさんはしょんぼりとしてしまいました。
「ご、ごめんね。でも、うしろで突然、草がゆれたから、びっくりしちゃって……」
「どうせ風か、うさぎとか、無害なものでしょっ! クマさんはなんでも、怖がりすぎだよっ!」
クマさんは無言でうなだれます。
キツネくんは怒ったまま歩きはじめ、クマさんは落ち込んで黙ったまま、あとをついていきました。