【第5話】部活動。
部活動紹介は、3年生の先輩方が中心となって、見ていてとても楽しいものになっていた。
私は、この特性を持っているため、部活動に入ったことは無い。
でも高校では、入ってみようかなぁと、少し考えている。
『…以上です!ぜひ男女ハンドボール部に入部してください!待ってまーーす!!!』
そう言って、男女4人ずつの先輩達が、ステージの真ん中に集まって手を振って、ステージの黒い幕が閉じた。
拍手の音が響く中で、色んなところで
「サッカー部にめっちゃかっこいい先輩いた!」
「女バレやべぇな、さすが全国目指してるだけあって気迫が違かったw」
「野球部のコント、クソおもろかったな!!!」
という、運動部に関しての感想ばかりが聞こえ、体育館内はザワザワしていた。
そんな中で、
『はい、一年生の皆さん、先輩達の部活動紹介で、入りたいと思う部活はありましたか?』
若い男の先生、確か1年A組の担任だった先生が司会席で、マイクを通して一年生に問いかけた。
『はーい!!!!!!』
元気に返事をする一年生。早くも今年の一年生は、元気がいいという噂だ。
『おー、元気だねぇ(笑)まぁそれぞれ気になる部活はあったと思うけど、僕のオススメはなんて言っても天文部ですかね~?』
ニコッと、無邪気な笑顔でそう言った先生に、3年生の先輩達が、
「おいヨウ先生!!自分が天文部の顧問だからってずりぃぞ!!!」
「てか天文部じゃなくて同好会やん(笑)」
「ヨウちゃんかわいいよ~!」
と、楽しそうに野次を飛ばした。どうやら、『ヨウちゃん』『ヨウ先生』と呼ばれるあの先生は、そこそこ人気があるらしい。
『まぁまぁ、落ち着いて下さいよ3年生。仕方ないじゃないですか、我が天文部、君たちの一個上の3年生が卒業して、部員が誰ももいなくなっちゃったんですから…先生は寂しい…っ』
そう言って、わざとらしく泣き真似をした先生を見て、クスクスと笑いがおきた。
(なんだか最初は真面目な先生だと思ったけど、不思議な性格だなぁ…)
そう思いながらヨウちゃん先生を見ていた色羽を、隣に座る谷崎くんは横目で見ていた。
教室に戻り、全員が座ったのを先生が確認すると、帰りのHRが始まった。
そこで、1枚のプリントが配られた。
前から回ってきたそのプリントには、大きく『入部届』と書いてあった。
(どうしようかなぁ…)
部活動紹介を見た限り、私には運動部は恐らく体力的に無理だから、入るなら文化部だろう。
でも、紹介をしていた文化部の中で、で気になった部活が私には無かったのだ。
(…うーーん)
「えー、このプリント、必要事項を記入して、下の切り取り線で切って、各自、部活の顧問に渡して下さい」
(どうしようかなぁ…)
「あ、一応言っとくけど。」
(うーん…無理して入らなくてもいっかぁ)
「うちの学校、今年から部活動は一人一つは最低でも入らないといけないことになったので、そこんとこよろしく」
(うん、そうしよう。入らなくていいや……ん!?)
「え!?」
思わず声をあげた私を見て、みんなが笑った。
「え、大木さん、まさか知らなかった感じ?(笑)」
「いまの反応面白かったwww」
え、聞いてないよそんなの、え??
目に見える様にパニック状態の私を見て、またクラスの人達が笑った。
「大木さん、意外と天然なんだ(笑)」
「なんか思ったより親しみやすいわ、よかった!」
褒められてるのか分からないが、少しクラスの人との距離が縮まった気がする…。
(…そうじゃなくて!!!部活!どうしよう…!!)
「今知ったとしても、入部届、提出は金曜日までだからな??」
先生がプリントをひらひらさせながら私の方を見て言ったので、
「はい…。」
と、わかりやすくしょんぼりとして返事をすると、またクラスで笑いがおきた。
そして、HRが終わり、各々が友達と帰り始めたけれど、私は一人、教室に残っていた。
「…どうしよう」
誰もいないのをいいことに、独り言を呟く。
「とりあえず運動部は無理。絶対無理。」
「そうなったら文化部しかないよね、でも文化部…文化部かぁ…。」
ピンとくる部活、無かったんだよなぁ。
「あー!どうしよう!なんで今日初めて知ったんだろう…」
そう言って、髪の毛を両手でわしゃわしゃとかき回していたその時、
「髪、ボサボサになってるけどいいの?」
決して大きくはないけれど、耳に届くあの声が、教室の後ろの方から聞こえた。
※この作品はフィクションであり、素人が書いているため、色覚異常の特性を完全に反映できている訳ではありませんので、大目に見てやってください。ご理解の程よろしくお願いします。