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【第2話】学級委員。

「はーい、みんな席に着いて。えー、自己紹介はさっきの時間に終わったから、この時間はクラスの委員決めをやります。」


と先生が言うと、教室のいたるところからブーインングが起こった。


「えーー!そんなの入学二日目にやることじゃなくね?」


「委員会とか、なんであるの?」


「めんどくさーーい」


(みんな元気だなぁ...。)


私は1時間目の自己紹介で体力と気力をほとんど使い果たしてしまったので、頭があまり回っていない状態だった。


(最後に余った委員会でいいや...。)


と、適当なことを考えていた。



「じゃあ、まずは学級委員から決めていくぞー。」


そう言いながら先生は、黒板に白いチョークで


『学級委員

男...

女... 』


と、男の人にしては少し丸い文字で書いた。


「はい、じゃあ学級委員、やってくれる人!」


「......」


さっきまでざわついていたはずの教室が、シーン...と静まり返った。


(この団結力、すごいな。)


「...うん、まぁこうなるよねぇ。」


先生も、少し困ったような笑みを浮かべていた。



まぁ、学級委員なんて、余程内申を気にする人だとか、リーダーをやりたい人だとか、もしくは押し付けられて嫌々やるかのどれかだと思う。


いくらクラスメイトと積極的に話してみようと心に決めたからって、さすがに学級委員は私には荷が重すぎる。


「うーん、俺が思うに学級委員は、クラスメイトと一番仲良くなれる役職だと思うんだよねぇ。本当に誰もいない?」


(...クラスメイトと、一番仲良くなれる役職.......?)


いや、先生の口車にまんまと乗せられてたまるか。そんなのは絶対、絶対ないんだから。



「じゃあ、俺が適当に指名しちゃおうかなー」


今度は悪戯な笑みを浮かべた先生に、またまた大ブーイング。


「先生!それはないと思います!」

「ヤダー!!」

「おいおい誰か挙手してくれよお願いだ!!」




その瞬間、時が止まった気がした。


皆が驚いたような顔で、こっちを見ている。


(え...?)



「おっ!大木、やってくれるか!素晴らしい!!皆、拍手ー!」




私は、手を挙げていた。無意識だった。


先生の言葉に揺さぶられたのは事実だけれど、


本当に手を挙げようだなんて、1ミリも思っていなかった。


それなのに、どうして私は...。



「じゃあ大木!黒板に名前書きに来てくれ。はーい、女子は決まったぞー、あとは男子!漢気(おとこぎ)、見せてくれよー?」


もう決まってしまったものは仕方がないので、私は前に出て、先生の書きかけのスペースに


『学級委員

男…

女…大木色羽』


と書き足した。


「漢気」という言葉に、今度は盛り上がり始める教室。


「じゃあここは男子で、漢気ジャンケンで....」


さっき私を冷やかした男の子の一人が、ジャンケンをし始めようとしたその時。



一人の男の子が、手を挙げた。



「俺、やってもいいですよ」


それは、さっき私の特性のことを『それってすごい個性じゃん』と言ってくれた男の子だった。


私は内心、誰でもいいから早く決まらないかなと思いながらも、少し、ほんの少しだけ、その男の子がやってくれたらいいな、と思っていた。


なんだか、仲良くなれそうな気がしたし、決め付けるにはまだ早くても、今の段階では、悪い人ではないと思ったから。




「おっ!そうか、谷崎(たにざき)!やってくれるか!いいねぇ!」



(そういえば、名前、知らなかったな...そっか、谷崎くんっていうのか。下の名前は何て言うんだろう...?)


さっきの時間の自己紹介では、緊張から解放されて一気に気を抜いてしまっていたので名前が分からず、黒板に書かれた名前を、じっと見つめた。


『学級委員

男…谷崎虹

女…大木色羽』


(谷崎(たにざき)...『(にじ)』??)


疲れで頭が回っていない私は、おそらくというか、絶対違うだろうな、という読み方をしていた。



「書き終わったな、じゃあ大木も前に出てきてくれー。」


「..........あっ、はい!」



反応速度が落ちた頭を起こすように、少し早歩きで前に出て、谷崎...(にじ)くん (?)の横に立つ。


「じゃあ、改めて、この一年間、このクラスの学級委員を務めてくれる、谷崎と大木に拍手!」


パチパチ...と拍手の音が鳴り響く中、隣に立っている谷崎くんが、


「一年間、よろしくね」


と、皆の方を向きながら、私にしか聞こえないような声で言ってきたので、



「こちらこそ、よろしくおねがいします」


と、私も同じく皆の方を向いたまま、谷崎くんにも聞こえるか分からないような声で、ぎこちなく返事をした。


※この作品はフィクションであり、素人が書いているため、色覚異常の特性を完全に反映できている訳ではありませんので、大目に見てやって下さい。ご理解の程よろしくお願いします。

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