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【第1話】自己紹介。

入学式の翌日。今日は自己紹介をやることになった。


私は昨日の帰り道に、自分を変える為、初めての大きな決断をした。

それを実行する時が迫る。



まず最初に、担任の先生が自己紹介を始めた。



でも正直、先生の自己紹介を呑気に聞いている場合ではなかった。

どうしよう、緊張する。


私の出席番号は4番。とりあえず1番じゃなくてよかったが、それでももう少し真ん中の方がよかったなと思う。


一番目の人が席を立つ。


続いて二番目、三番目。


そして私の番だ。



緊張で頭の中が真っ白になりそうだ。


深く、深呼吸をした。....よし。



「出席番号4番、大木色羽です。西区の神山中学校から来ました。すごく人見知りなので、話しかけてもらえたら嬉しいです!」


あとは、勢いに任せて言ってしまおう。


「....あと、私は、色覚異常という、通常の人とは違う色の見え方になってしまう特性を持っていて、...色の違いがあまり分かりません。なので、その点はご了承頂きたいです!一年間、よろしくお願いします!」



最後、緊張しすぎて早口言葉みたいになってしまったけど、言った....!。




パチパチと拍手の音が響く教室内に、


「色が分からないって言ってた?」

「どういうことだろうね」


という疑問の声が小さく聞こえた。


まぁ確かに、いきなりこんなこと言われても良く分からないよなぁ、もう少し時間が過ぎてから言ってもよかったかも、と少し反省しつつも、私は大きな達成感に包まれ、とてもやり切った気持ちでいた。



その後も自己紹介は続き、全員の紹介が終わったところで、授業終了の鐘が鳴った。


すると、さっき私の自己紹介のあとに疑問を抱いていた女子二人が、話しかけてきた。



「ねね、大木さん...だよね?さっき自己紹介でさ、『しきかくいじょう』って言ってた気がしたんだけど、それってどういうものなのかな?って...ごめんね、気になっちゃって。」


一人が、少し申し訳なさそうに聞いてきた。

隣でもう一人の女の子が頷いている。


すると、他にも気になっていたらしいクラスメイトが「俺も思った」「何なに?」と寄ってきて、謎の集会みたいになってしまった。



うぅ、人が多い....。


内心怯えながらも、私は拳を握りしめて息を吸った。


「えーっと、色覚異常っていうのは、大半の人は感じ取れる色を、違った色で認識してしまう特性のことで、色覚異常にも種類がある中で、私の場合は一色覚っていう、目に映るもの全てが、皆でいうモノクロに見える症状なんです。だから、赤とか青とかの、色の違いが私には分からない....っていう、ことです....。」



私は説明の後半は必死で、目をつむっていた。そして、まだ目を開けられないでいる。



...分かりづらかっただろうか。


...皆、どんな反応するんだろう。




すると一人が、


「それって、皆とは違う世界を見てるってこと?」


と、そう言った。


それを聞いた周りの人が、ざわつき始めた。


「え、かわいそう...」

「え、じゃあ違う世界の住人みたいな?(笑)」

「やめろよお前、聞こえてるぞ(笑)」


同情と、そんな冷やかしの声も聞こえた。



「世界...いや、そんなスケールの大きなことでは...」


少し俯いて、そう答えた。


私は別に、同情してほしくて特性の事を言った訳じゃない。


ただ、今まで私は、色覚異常のことを話すことで周りの人達が気を遣って、会話から色が無くなったりするのが嫌で、この特性を隠してきた。


でも、これからは、この特性のことを話した上で、『色』の話を皆と一緒にしてみたいと思ったから。




見ている世界が違うなんて、確かにそうなってしまうかもしれないけれど、そんなことを皆の前で言ったら、自分から皆を遠ざけることになってしまう。



私は、なるべく皆と同じ視線に立っていたいのに。



周りの反応を聞いて曖昧に答えた私を見て、一人の男の子がこう言った。




「何で?それってすごい個性じゃん。皆とは違うものを持ってるって、それだけでもすごいことじゃないの?」



冷やかしとか、同情で言ったのではないことは、私の眼を真っ直ぐ見つめる、男の子の深い灰色の瞳が教えてくれた。



それを聞いた、さっきまで冷やかしていた男の子二人は、


「...確かに、良く考えればすごい個性なんじゃね...?」

「なんか俺達ガキみたいじゃん(笑)」


とか言いながら、離れていった。




『すごい個性じゃん』



そんなことを言われたのは、生まれて初めてだった。



だって、この特性はずっと、私にとってはただの欠点だったから。


だから今まで、なるべく人には言わないようにしていた。

私は皆とは違う、と宣言することになると思って、言えなかった。




そうやって、頑張って皆と同じ視線で物事を見たいと思っていたけれど、そうか、無理して同じ目線になろうとしなくてもいいんだ。



その一言のお陰で、私はこの特性は自分次第で良くも悪くもなるんだと、生まれて初めて気づかされた。



「...ありがとう。」


私は真っ直ぐとその男の子の目を見て、心からのお礼を言った。



「どういたしまして。」


少し横を向いて眼を反らして、その男の子は言った。



初めて話した人だったけれど、何となく、今のは照れ隠しだと分かった。




((キーンコーンカーンコーン...))


高らかと、2時間目開始のチャイムが鳴った。

※この作品はフィクションであり、素人が書いているため、色覚異常の特性を完全に反映できている訳ではありませんので、大目にみてやってください。ご理解の程よろしくお願いします。

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