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魔を統べる者  作者:
14/18

9話 とある世界の出来事

非常に短いです

––––––西暦2017年 日本 都内某所––––––


 時刻は朝8時過ぎ、ジリジリとけたたましく目覚まし時計が鳴るアパートの一室。


蓮「あ〜、もうこんな時間かぁ〜。折角の良い夢がぁ、勿体ないなぁ〜」


 部屋はお世辞にも綺麗とは言えず、逆に散らかっていると言える。壁にはアニメのポスターが幾つか貼ってあり、俗に言うオタクの部屋と言うような感じである。

 部屋の主の名前は野々宮蓮。年齢は16歳、都内の中堅私立高校に通う高校生。容姿はカッコいい、イケメンとは言えないが、全体的に綺麗にまとまった感じで髪も日本人らしく真っ黒、少々天然パーマのかかった髪をしている。身長もズバ抜けて高くもなく169センチほどと、極普通のどこにでもいそうな高校生であった。趣味はゲーム、好きな事はアニメ鑑賞、嫌いな事は他人と関わる事。此処までだと性格が捻くれた唯のオタクという評価付けになってしまうかもしれないが、その他の事は後々……


蓮「あぁ〜学校行きたくねぇ。今からでも風邪ひかねーかなぁ。いっそドラゴンでも現れて臨時休校にでもなってくれてもいいなぁ」


 そんな起こりもしない妄想をしつつ蓮は制服に着替えた。


蓮「ん〜、やっぱり朝は生姜が一番」


 まるでどこかのお年寄りの様なことを呟きつつ、市販の焼いた食パンを貪っていた。

 蓮はワンルームの部屋に一人暮らしで、親も遠くで暮らしており、鼬の道であり、何の連絡もとっていない。親戚も近くには居ない。竹馬の友と言える様な親友、腹を割って話ができる友達もいない。所謂糞ボッチと言う存在だ。


 そして学校へ向かう。

 学校なんて行っても何にも面白くない、あんなくだらい集団生活擬きなどしたところで何になるというのか、人は生まれるときも死ぬときも一人だ、信じられるのも自分だけなのだから。本当にくだらなくいよ。


 学校に到着し、自分のクラスへと入る。

 扉を開けた瞬間に教室にいた多くの生徒から注目を集める。その視線には軽蔑、蔑視が多く含まれている。


 なんだよその目は、俺が何をしたってんだ。本当に人間って不便な生き物だよなぁ。群れを作りたがるが必ずその群れの中に俺の様な奴を作ろうとする。あぁ〜、いっその事人じゃなくなりてーな。


  蓮はそんな周りの目線を物ともせず自分の席に着席する。机の上には誰かに油性で落書きされた文字がクッキリと残っていた。


『犯罪者一家死んじまえ』

『人殺しの血が流れてる塵は頼むから消えてくれよ』

『人殺し』


 など、所狭しと書かれていた。

 蓮はそれを見てまた溜息をするのだった。

 それを見てニヤニヤと楽しむ集団もあれば、未だに蔑んだ目で見ている集団もある。

 このような事に慣れてしまっている蓮は一切を無視する。そんな態度を続けていれば、他もいつもの他愛無い話に戻っていくと経験しているからだ。

 しかしそのような態度を気に食わない思いで見ている集団も存在している。


 時刻は変わって昼になる。

 昼食の時間となり皆数人で囲んで食事を楽しんでいた。蓮はその中一人教室の端でひっそりとコンビニで購入した弁当を食べていた。


郁弥「おい、ちょっと付き合えよ」


 そんな中クラスメイトの後藤郁弥(ごとうふみや)は蓮をトイレに連れ出す。


郁弥「なに犯罪者が飯なんか食ってんだよ!」


 トイレに着くなり郁弥は蓮を殴り飛ばす。トイレに居た生徒は誰一人として止めようとせずに、ニヤニヤと横目で見ていた。


蓮「俺はなにもやってない。少なくとも犯罪者ではない」


 無駄と分かっていても犯罪者という事は認めるわけにはいかず、否定する。


郁弥「なに言ってんだよ、お前の親父がやったことだろ、お前も同じだよ」


 倒れているところを更に脚で蹴り飛ばす。

 ことが公にならないよう、見える顔や腕ではなく、腹や背中などの、隠れている箇所に集中して暴力を加える。


 もともと郁弥は高校に入学して、最初にできた友達であり、よく一緒に遊んでいた仲であった。しかし、蓮の父親が白昼、駅で無差別殺傷事件を起こしてから、その関係は崩壊した。

 元々そこまで気が強くなく、内気な性格だった郁弥だが、今では蓮に日常的に暴力を振るう様になってしまった。


 自分より弱いと分かればこの通り。前までのことがなかったかの様に人が変わる。人の醜さを感じ取れるよ。


 半年程前、事件当初は蓮を擁護していた郁弥だが、当時から蓮に対して陰湿なイジメを行っていたグループに強制され、蓮の顔を強打した。その出来事を境に、今まで味わった事の無かった人を傷付ける行為に快感を覚えるようになったのだ。

 今では性格も言動も大幅に変わってしまった。


 初めは蓮も何故俺がこんな仕打ちを……と嘆き悲しんでいたのだが、次第に現実逃避として始めたゲームや漫画に没頭し、学校での出来事に対して何も考えないようになっていた。正確には、考えていてはやっていられないと言うべきか。

 そしてある考えを持つようになった。


『人と関わらず、一人で生きていく』

 人と関わるから悲しい思いをする、誰かと接しているから苦労、苦痛を味わう。それなら誰とも関わらなければいい。


 非常に鼻元思案な考えに感じられ、砂上の楼閣のように実現不可能に感じられるかも知れない。実際に今の蓮の力では無理だ。しかし、将来的に実行すると心に決めていたのだ。


 昼の休みも終わりに差し掛かった頃にようやく解放された。


 あぁ〜、早く家に帰りてぇ


 そんな事を考えつつ、午後の授業を受けていた時だ。


俊哉「おい、みんな! 外を見てみろ!」


 授業の最中唐突に俊哉が声を上げた。

 いきなりの事で、何事かと、先生が止めるなか、窓の外を見ようと窓際に人が集まる。


 どうせくだらない事だろうと、蓮は席に座ったままでいた。


 しかし、外では青白い幾何学的な紋様が学校を囲み、空に向かって白い線が無数に伸びていた。

 流石の蓮もこれには驚きを隠せない。


 クラス全体に不安が広がり始めた。


 その瞬間、目の前が真っ暗になり、意識を手放す事になった。



 この日の夜のニュースは消えた高校という話題で持ちきりとなった。


行方不明者 教職員合わせて468名

史上最大の失踪事件となった。

ブクマ・お気に入り登録を是非お願いいたします。


次回投稿予定日は8月31日木曜日です


誤字・脱字等ございましたらご連絡の程宜しくお願いします。

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