173話 アレックス vs ピンキー
「ユリさん!見届けお願いします!」
「いいんですか?」
「ケジメですよ。頼みます」
「・・・分かったわ」
僕はピンキーの方を向いた。
お互い同じ鎧、武器だ。一騎討ちする時の公平な条件には、必須といえよう。ただし、魔法、特技は制限を設けていない。職業もだ。
勇者 vs ナイト どちらもエクストラ職。優劣をつけるなら、やはり勇者が優勢だ。基礎ステータスがまず違う!装備適正や、特技の豊富さで圧倒する!
ナイトが勝るのさ、防御のみ。いかに戦闘を長引かせ、消耗戦に持ち込むかが勝負の要となるのだ!
「待たせたな」
「ああ、大丈夫だよ」
勝負の時を、お互いに待つ。ユリさんが息を飲むのだ。
ここは町外れの広場。観客等いない。これは非公式の一騎討ちなのだ!邪魔されたく無いのもあるが、勇者が負ける事は許されない。ピンキーが負けて、アルフォート興の顔に泥を塗る真似も、だ。
「ここなら、存分にやれるだろう」
「そうだな」
ユリさんが手をゆっくりと上げる!そして、素早く下げた!
「始め!」
ガキーン!ガキーン!!
開始と同時に、斬撃を弾く!
反動で、後ろへ後退してしまう。が、それはピンキーも同じだ。右足に力を込め、地面を蹴る!飛び斬りを空振りさせ、返しで上段斬りを受けた!
ガアアアン!!
一歩前に出て、剣突きを行う!
バキィイィィィィィン!
ピンキーが盾で防いだ事で、剣は見事に折れる!
「アレックス!新しい剣を持てよ」
「必要無い」
「僕を見下すな!早く!ユリさん!
アレックスに新しい剣を!お願いします!」
「あ、え、と」
「ユリさん、不要です。負けませんから」
石を投げるを連発すれば、余裕で勝てるだろう。だが、そんな事はしたくない。僕にだって、意地があるのだ!
「痺れろ!雷撃!」
ズババーン!!
「くっ!」
ピンキーを雷が襲う!すかさず、トンズラを発動し、間合いを詰めた!折れた剣で構わない!
ガキーン!
ピキ!ピキピキピキ!バキッ!!
剣は砕けた!替わりにピンキーの盾も砕けたのだ!盾の無いナイト等、敵では無い。
さっきの雷撃で、ピンキーを痺れさせるまでには至らなかった。それでも、トンズラの性能のお陰で、接近出来たに過ぎないと言わざるおえない。
「ピンキー、降参しろ」
「う、うううう!!」
「おい!ピンキー!?」
ガシャン!
剣が地面を転げ落ちた。ピンキーは泣いている。何故だ!?勇者に勝てると思う程、自惚れているとは思えない。僕が戸惑いを見せていると、ピンキーは近付いて来る。
「おい、聞いているのか?ピンキー?」
「ち、畜生!僕に勝てる訳無いだろ!!うううう」
泣きながら、パンチを繰り出してきた。僕は避けずに受けた。
バキッ!バキッ!バキッ!
右頬を殴られ、左頬を殴られ、再度右頬を殴られた。痛くはなかったのだ。スピードもそれ程でもなかった。
「何でだよ!?何で、手柄を僕に譲ったんだ!!僕は何もしていないじゃいか!!これじゃあ、僕は惨めで哀れだよ!ミューズ興にどんな顔すればいい?ねぇ!アレックス!!!」
泣きじゃくり、僕に寄り添いながら、崩れていく。そして、地面な手を付いた。
「ピンキーのお陰ですという顔をすればいい」
「僕は何の役にも立っていない!!」
「それは間違いだ。山賊を倒し、モンスターを全滅した。そうだろ?ピンキー?大いに役に立った。他にも聞きたいか?」
「そうじゃない!この作戦を立てたのも、アレックスだろ?そして、救出したのもアレックスじゃないか!!」
「それは間違いだ。救出したのは、京子だ」
「はぐらかさないでよ!アレックス!僕は!僕は!」
僕はピンキーを抱き締めた。
「アレックス!?」
「ピンキー、よく聞け。これはピンキーが活躍した事にするのが一番なんだよ。誰も困らないし、皆が納得する事だ」
「そんなの関係無い!アレックスの名誉はどうなる!?」
「僕の名誉なんて、必要無い。勇者で手一杯だ。誰が考えた作戦だっていいじゃないか。ピンキーが、魔王討伐した後の事を考えてだよ。統治する人物が、現地の人々を助ける。いい事例さ。恩は絶対に裏切ら無いから、売れるだけ売るのが筋じゃないか」
「僕の力じゃない!!また困ったらどうするの!?僕にはとても無理だ!無理だよ!アレックス!ううううう」
「無理なら、出来る奴に頼ればいい」
「え?」
「アイデアが出ないなら、考えられる奴に頼ればいいんだ。困ったなら、僕を頼ればいいんだよ。大親友のピンキー」
「僕は馬鹿だ!大馬鹿野郎だよ!う、う、ううううああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ピンキーは泣いた。いつまでも泣いた。僕の胸で何時までも。
その日以来、ピンキーと本当の戦友となった。




