172話 理不尽な思い
僕達は、別室にいる。
山賊退治とモンスターの処理が終わった。後は、人質だったサティとロイを、ミューズ興へ会わせれば済むのだが、そう簡単にはいかない。
「ねぇ、アレックス。ここで待つ意味あるの?」
「そうだな。そのまま会わせればいいんだけど、あんなボロボロじゃあ、貴族としてはどうか?ってなるんだろうな。」
「でも、着替えさせたら、助けたって感じがしないよ」
「大勢の貴族が助けた事で駆け付けて来てるんだ。その中で、娘、息子の服がボロボロじゃあ、情けないだろ」
「助かったんだし、そんな事気にしなくてもいいのに」
「ピンキー、それが貴族なんだよ。慣れろ」
ピンキーは、納得出来ないでいる。こればかりは慣れるしか無いんだがなぁ。これから始まるデキレースに、主役として登場しなくてはいけない。いや、これからずっと始まる、始まりの始まりかもしれないが。
トントン!!
「失礼します!」
「はい、どうぞ」
「アレックス様!ピンキー様!
御支度が済みましたので、お越し下さい!」
「さて、行くか」
重い足取りで、僕達は向かう。
これから謁見へ行かねばならないのだ。それが茶番劇だと分かっていても。
「はぁ」
「溜め息を吐くと幸せが逃げるぞ」
僕達も正装に着替えさせられていた。ピンキーは、あの豪華な鎧を纏い、兜は外している。剣も腰に下げてさしているのは、カシナートの剣を見せびらかしたいのだろうな。アルフォート興は。まぁ、貴族は見栄の張り合いだから、仕方無い。
「アレックス様!ピンキー様の到着です!!」
「「わー!!!」」
貴族達は、拍手喝采で出迎える。僕達は、予め決められた場所で待機するのだ。そこへ扉が突然開く!
「お父様!!」
「おお!サティ!!」
ミューズ興は、決められた場所で動かない。そこへサティが走って抱き付く!ロイはゆっくりとした足取りで、ミューズ興に近付いて、三人で肩を抱いた!
サティは見事なドレスに身を包み、どんな大きさだよといわんばかりの宝石をあしらえている。ロイは正装して、これまたピンキーに勝るとも劣らない鎧に、ジュワソードを腰に下げていた。伝説級の武器を何処から調達したんだろう?
「うううう!!お父様!うわーん!ああああ!」
「お父様、只今戻りました!」
「サティ!ロイ!よくぞ!無事で戻って来てくれた!」
「はい!こちらの勇者御一行様に助けられました!」
「そうか!」
ミューズ興は、決められた位置へ移動する。そして、僕達は膝を付いた。
「おお!助けて貰い礼を言う!」
「いえ、当然の事をしたまでです」
「して、この作戦の立案は誰が?」
「あ!それはアレ「それはピンキーが考えていて、作戦、行動、救出をしてくれました!」」
「おい、アレックス?」
「ピンキー静かにしろ」
「く!」
「そうですか!ピンキー様が!
流石!アルフォート興の娘婿 ですな!賢く、そして、強いとは、羨ましいですぞ!」
「うむ!儂も鼻が高い!よくぞ、やってくれた!」
「はっ!」
「報酬は、後にミューズ興からとする!以上!」
ピンキーは、歯軋りして、堪える。僕ではありません。とは今更言えないのだ。そんな事をすれば、この場をぶち壊してしまうからである。ピンキーもそこまで馬鹿では無い。
「「ピンキー様!ピンキー様!ピンキー様!」」
盛大な拍手とピンキー様コールが響き渡って、その場を退場するのであった。
僕達は、控え室に帰る。
「どうしたんだ。ピンキー?」
ピンキーは、ワナワナと震えていた。このまま、わだかまりがあっては、支障をきたすと思う。旅は仲良くしていたい。だから、僕は言う。
「言いたい事があれば言えよ」
「アレックス、僕と決闘だ!
僕はアレックスに一騎討ちを申し込む!」
「え!?」
予想だにしない発言を聞いて、僕は驚いた!今まで歯向かう事等無かったのだ!ナイトに転職する時も、ミーシャさんとの結婚を押し付けた時も。
「・・・本気なんだな?」
「ああ、手を抜くなよ!アレックス!!」
「ピンキーこそな」
こうして、僕とピンキーで、一騎討ちする事になった。




