170話 サティとロイの決意
その頃、山賊のアジトでは、男達が震えていた。
昨日から、雪が降っているのだ。この崖道の風通し抜群な洞窟は、とても寒くお互いの体温で温まるしか、凌ぐ方法が無い。
捕まっているミューズ興の息子、ロイは妹のサティと抱き合う。布一枚でも、貰えていればこんな事はしないで済むのに。15歳と13歳である。年頃の男と女が、こんな事していいハズも無いのだが、と心の中で思う。
「お、お父様が、きっと助けに来てくれますわ」
「そうだね。それまでの辛抱だ」
吐く息は白く、とてもではないが、我慢していられない。全身をガタガタと震えて、唇も閉じる事が出来ないでいる。
「ガキども!静かにしやがれ!」
ドカン!
ロイは山賊に蹴り飛ばされた。口から血を吐き、その場にうずくまるしか出来なかった。
「ロイ!大丈夫?
貴方達!何て酷い事を!お父様が許しませんわ!」
「はん!お父様、お父様、て煩い娘だ!」
山賊は手をあげた!サティは歯を食い縛って、目を閉じる!
「おい!サンチェ!商品に手を出すな!傷付けたら、値が下がるだろうが!えええ!!」
「あ、兄貴、す、すまねぇ」
「おい!早く食事の用意をしろ!」
「分かりました!!」
山賊達は、世話しなく動き回る。食事の用意をする為だ。人質にかまっている暇等無い。そんな事をしていては、兄貴と呼ばれる山賊のリーダーに殺されるだろう。
ドドドドドドドドドド!!!!!!!!
「おい、何だか外が騒がしくないか?」
「ええ、何ですかね?もしかして、雪崩だったりして」
「馬鹿言うな!そんな吹雪いてないだろ!?さっさと、原因を探ってこい!」
「あ、あ、あ、兄貴!!!!!や、や、ヤバいです!」
「どうした!?ハッチ?」
「モンスターの大群です!こっちに向かってきます!」
「な、何だと!?」
山賊のリーダーは、慌てて外に出る!そこには、赤く光った闇夜に映る光景を目の当たりにした!
「ううおおおおいいいいいい!!何百匹いるんだ!?」
「ひぃい!兄貴!こっちに向かってきますぜ!?どうします?逃げますか?」
考えてる暇等無い。この辺りのモンスターは、適正レベル70だ。レベル75のパーティーで狩るのがやっとなのに、この数を相手にする事は不可能である!
こいつらを囮にして、自分だけ逃げるのが、もっとも生存確率が高いだろう。
しかし、このままでは、捕らえた二人を無駄にしてしまう。とりあえず二人を連れて、ここからズラかるのがいいと判断した。
「お前ら!モンスターを食い止めろ!俺は、逃げ道を確保する!こいつらを連れて行くぞ!」
「兄貴!俺達も連れて行って下さいよ!」
「俺は、逃げ道を確保するっつってるだろうが!
早く行け!!このウスノロがぁ!!」
ハッチを掴み、モンスターの方へ投げ飛ばす!その間に、パーティーメンバーから、外した。
パーティーメンバーから外すと、絡んだモンスターは、パーティーへは絡んで来ない。つまり、ハッチは囮にされたのだ!
「ひぃい!あ、兄貴!た、助けぐべあぇ!!!」
モンスターに包囲され、切り刻まれていく。もう助からないだろう。山賊のリーダーは、ほっと安心した。が、それも、一瞬だったと気が付いた。
「ば、馬鹿な!?モンスターが直進を止めないだと!?な、何故にだ!!ええい!!」
サンチェを掴み、モンスターへ再び投げ飛ばす。
「え!?あ!兄貴!!!酷いですぜ!!ぎゃああ!!」
ロイとサティは、山賊のリーダーに抱き抱えられ、山頂へと逃げる。パニックになっているからだ。本来であれぱ、下るのが正しい。追い詰められれば、逃げ道が無くなるからだ。
「何で俺がこんな目に!!」
辺りを見回す。もう逃げ場等無い。モンスターに囲まれ、いつ襲われても仕方無いのだ。キメーラの翼を握り締める。だが、使う事は出来ない。何故なら、パーティーメンバーにロイとサティを加えねば、自分一人で飛ぶ事になるからだ。
「く!おい!お前ら!
俺のパーティーメンバーに加えてやるから、入れ!」
「お断りします!ここは僕達と、貴方の墓場です!」
「おい!女!ここで死にたくないだろ!?」
「ミューズの名において、私はいつでも覚悟しております。この様な事が起こる事も」
「くぅ!くそが!!」
ロイの首を掴み、持ち上げた!
「言う事を聞かなければ殺すぞ!」
「ここを生きて抜けられても、その先は地獄が待っているのですよ?そんな地獄に行きたい訳が有りません。どうぞ、ロイも覚悟の上で」
サティは一歩も引かなかった。山賊のリーダーは、ギリギリと歯ぎしりする!
「お前ら!何とか、あそこの道を開け!」
山賊の手下達が、モンスターと戦う。一人、また一人と、山賊の手下は倒れていった。
「くそぉ!!もう少しで、大金が手に入ったのに!!」
キメーラの翼を使おうと、空に掲げた!
スパーン!
「ぐあああああ!!!!!」
山賊のリーダーの腕が吹き飛んだ!キメーラの翼も、地面を転がった!
「ふぅ。疲れた。
お待たせしました!アレックスの登場だよ!」




