166話 結婚詐欺?
パチッ、パチッ、パチパチッ。
僕達は焚き火していた。
沢山のクラブキングギブソンを茹でているのだ。5日間で狩った数はもう分からない。僕に分かるのは、パーティーメンバー全員のレベルが70になった事だ。
僕は夕暮れを見ていた。焚き火の火の粉が飛び、とても美しい。太陽が沈む水平線が、黄金色に染まる。幻想的な光景に、すこし涙を浮かべた。
「アレックス!まだ茹で終わらないのか!?」
そう、この感動をぶち壊され涙したのだ。
「アイ!少しは待つ事を覚えたらどうだ!?僕の感動を返せ!アホアホガール!!」
「むぐぐ!だから、どうした!?英語を使えば賢いと思われると思ったのか!?アホアホアホアホアレックス!!」
「アホと言った方がアホなんですよ。アレックスさん」
僕は項垂れた。はい、僕の負けです。ユリさんに言われれば仕方無い。僕はまた、焚き火の前に座る。
「アイちゃんは、お預け決定です!」
「そ、それはダメだぞ!ユリ!すまんかった!!この通りだ!ひぃ!!ビックリコウモリの姿焼きは出さないでくれ!!!」
辺りが暗くなってきた頃、京子が横に座った。風が吹く。横顔を見ると、風で猫耳が靡いた。ピコピコと猫耳を動かし、僕の方を見る。
「何かあったで御座るか?」
「いや、猫耳がいいなぁと思って」
「アレックス殿も、猫耳が付けたいので御座るか?」
「いやいや、そうじゃないって」
僕は照れ隠しで、鍋をかき混ぜる。青色のカニの甲羅は、みるみると赤くなっていく。青色だと、不味そうなのに、赤くなると、旨そうに見えるんだよな。色とは不思議だなぁと思う。
「そっちの方が似合ってる」
「に、に、に、にゃんと!?そ、そ、そうで御座るな!しっかり茹でた方がよぅ御座る!」
京子は照れ隠しで、鍋をかき混ぜた。尻尾がブンブンと揺れる!砂ぼこりを撒き散らすのは止めて欲しい。
「この量は、食べきれませんね」
「そうですね!ギルドで冷凍保管して貰いますか!」
4日前のは、ギルドに頼んで冷凍保管して貰っていた。今日の狩りが凄まじい量になったので、こうして釣り人達と、ギルド職員全員で海岸バーベキューをしているのだ。
「ああ、磯の香りが漂うなぁ」
何処だろう?多分、カニの味噌汁を作っているのだ。後で、回って貰いに行かなくては!各場所で、独自の料理が作られている。焼きカニ、カニ鍋、カニ蒸し、カニしゃぶしゃぶとバラエティーに富んで、豊富だ!
これで酒でもあれば、言う事無いのに。
「がっはっは!!アレックス!まぁ!飲め!」
「うぉ!あ、はい!頂きます!」
ウォールさんがいきなりお酒を注いできたので、慌ててコップを手に取った。トクトクトクと注がれたお酒は、日本酒だ。僕は日本酒が苦手で、ビールがいいんだが。ここは、少し口を付ける。
「がっはっは!!アレックスは、オナゴか?漢なら、豪快にこうじゃ!おい!あれを持ってこい!」
「少々お待ちを!」
職員がクラブキングギブソンの甲羅を持ってきた。それを火に掛け、お酒を投入する!どばどはどばどは!!!!!おいおい!一体何十リットルのお酒を入れるんだ!?暫く火に掛けると、日本酒の香りが漂う。
「では、見せてやるぞ!アレックス!がっはっは!!」
ウォールさんは、甲羅を手に持つと豪快に飲み干した!うは!何処に収まったんだ!?酒は別腹なのかよ!?もう、何でも有りだな。こりゃ。
チャポン。
僕は上質なカニの身を鍋でしゃぶしゃぶする。持ち上げると、身が波奈を咲かせた。人の腕くらいの厚みがあるカニの身は、とても食べごたえがある。1本で十分なくらいだ。
「はぐはぐ!むぐもぐ!アレックスも!むぐ!はぐはぐ!」
「食べてから話せよ。汚いぞ」
「もぐ!もぐ!ゴックン!はぁ!旨い!何だったっけ?」
僕はもう1本渡した。
「これを食えば思い出すだろう」
「成る程!はぐはぐ!もぐもぐ!」
とりあえずこれで5分は大人しいだろう。何で皆こんなに楽しそうなんだろうなぁと思う。そういや今日は何日だ?
「ピンキー、今日は何日だ?」
「大晦日だよ」
「ああ、なる!だから、皆テンション高いんだなぁ」
「今日くらい羽目外してもいいんだよ?」
「アイは羽目外し過ぎだ!」
「もぐもぐ!我は!ごっくん!関与して無かったぞ!?」
「アイちゃん!これもどうぞ!」
「ひぃい!!ユリ!その、えーと、だな!貰おう!」
ビッグコウモリの姿焼きと勘違いした様だ。
もうそんなに時間が経ったのか。思えば怒涛の快進撃だったと言えるな。1年も掛からずレベル70に上げた人達は居ないだろう。そして、嫁も3人もいる。まぁ、まだ結婚していないが、魔王討伐したら忙しくなるだろう。結婚しろしろと煩いだろうな。僕は苦笑する。
「どうしたんで御座るか?」
「何でも無い」
「気になるで御座るよ!」
「んあ、嫁が3人も出来ると困るなって」
「あー!!結婚するする詐欺のアレックスさん!何時結婚してくれるんですか!?もう何度も何度も捧げたでしょ!?早く結婚式挙げたいです!!」
誰だよ!ユリさんに酒進めたのは!?
「がっはっは!飲め飲め!」
ウォールさん!あんたかよ!?僕はじと目でウォールさんを見た。
「何だ?アレックス!結婚式挙げてないのか?そうだ!明日挙げろ!それがいい!なぁ!おい!!」
「結婚式したら、ハネムーンで魔王討伐行きませんからね!ウォールさん!いいんですか!!??」
「なんだとぉ!!それはちと困る!!結婚式はお預けだ!」
「結婚!結婚!結婚!」
「我も結婚式!!!」
「詐欺とはアレックス殿!本当に御座るか!?」
「魔王討伐は、ウォールさんが行ってくれるそうです!」
「ぐぬぬ!アレックス!図ったな!!!」
「騒がしいお仲間ですわね。ピンキー様」
「僕はミーシャさんだけだよ」
「まぁ!!嬉しいですわ!!
じぃ!ワイングラスを頂けませんこと?」
「ほっほ!では、秘蔵のブルターニュをお出ししますぞ」
こうして、朝方まで騒ぎ続けたのであった。
「うっぷ!頭いたぁ」
僕は二日酔いだった。ゲル状のキャベツールをグィッと飲み干した。不味い!もう一杯!!




