161話 凄腕の執事
賭け事の都市、ユニバーサルアリッゼを僕達は後にした。
あの街はヤバい。何せ何処に居ても賭け事を挑まれるのだ。そして、カジノに入り浸ってしまう。頭がおかしくなってしまうので、直ぐに旅立つ事にした。
「この街も、長く居なかったね」
「そうだな。観光した記憶が無い」
カジノを乗っ取り、会社を奪い取る寸前だった。それは棚上げしたからいいとしても。後は暗いダンジョンの中での記憶しかない。良い旅だとはとても言えないな。まぁ、僕達は遊びで訪れた訳では無い。レベル上げする為なのだ。
「次は何処に訪れますの?」
「うーん。そうだな」
ここはミーシャさんの借りている屋敷だ。相談しに来ている。ミーシャさんは、お嬢様でピンキーの嫁さんだ。お金持ちで、今回の旅でもかなりのサポートをしてくれた。そこで、次の場所もお願いしに来た次第である。
「レベル65ですと、ダンジョン無制限ですわ」
「もうダンジョンは行きたくない。それに精神的にも良くないよ。次はフィールドで探して欲しい 」
「そう言われましても!じい!何処かありませんの?」
「はっは。それではお任せ下さい。お嬢様」
執事のじいは、部屋を出て行った。あのじいさん、とてもデキる人だ。昨日頼んだ桜吹雪をもう入手して来た。かなりのレア度だから、普通では入手出来ないんだが。
「京子!刀に抱き付いてないで、発言したらどうだ?」
「にゃはぁ!このフォルム!堪らんで御座る!柄にも紋が刻まれて、手のグリップ感が半端無いで御座るよ!アレックス殿!抜いて良いで御座るか?」
「いやいや、抜くな!狩場の話をしていて、何故抜く?」
「アレックス。放っておこう。話が進まないよ」
どんだけ刀好きなんだよ。まぁ、嬉しいのは分かるけどね。ピンキーの腰に掛かる剣に目がいく。
「ん?ああ。これはもう装備させて貰ったんだ」
「カシュナートの剣か!
デザインもカッコいいが、切れ味も抜群なんだよな」
カシュナートの剣
鍛冶職人の最高位レベルが作り出す、最強の剣とされている。黒鋼鉄と白銀を1:1で混ぜ合わせ、7日間叩き続けて漸く完成する一品だ。ミラクルソードがカジノで交換出来る様になってから、需要は激減した。今では作り手がおらず、入手困難なのは間違い無い。
殆ど性能が同じなのだ。カジノでコインを買って交換すればいいだけである。ただ、そのコインを軍資金にして、ひと稼ぎしてやろうという輩は、殆どコインを飲み込ませる。
運が良ければ安く手に入り、また逆もしかりだ。購入コインを全てすってしまい、また追加。結局3倍のコインを購入する羽目になる冒険者が後を絶たない。
「今思い付くのは、レーベル火山だな」
「あそこは、かなりキツイよ。それならダンジョンに行った方がマシなんじゃないかな?」
「だよなぁ。言ってみただけ」
火山での狩場は、かなりの危険が伴う。足場は悪いし、溶岩が流れている所を通る場合もあるそうだ。暑いし、食料や水の確保にも困る。おまけにモンスターも強いのだ。
「いっそNM乱獲するか?」
「以前その討論は済んだハズだよ」
「言ってみただけだよ。ピンキー」
「いや、アレックスには釘を刺さないとね」
「流石ですわ!ピンキー様!」
この持ち上げ感半端無いなぁ。じとめで僕はピンキーを見る。
「お待たせしました。お嬢様」
執事のじいが部屋に入る。そして、頭を下げた。
「で、ありましたの?」
「はい。少々問題が有りますが、良い狩場でございます」
「いいわ!言いなさい」
「海のモンスターを狩るのはどうでしょうか?ただ、釣るのが大変だと思いますので、ここは釣り人を大量に雇うのはどうでしょうか?」
「まぁ!流石!じい!」
「ほっほ。お褒め頂きありがとうございます」
「ちょっと無理かな」
「どうしてですの!?」
「ごめん。お金が無いんだ」
「まあ!何に使われましたの?」
「ちょっとね。鎧を新調したんだ」
「贅沢ですわね!
お金も無いのに、そんな必要無いモノを!」
「ミーシャさん!ちょっと言い過ぎだよ!」
「!?」
ミーシャは泣いた。大粒の涙を流し、部屋を出て行った!ピンキーは僕を見る!
「さっさと追いかけろ!」
「ごめん!直ぐに戻る!」
ピンキーはミーシャさんを追った。
「アレックス様。少し宜しいでしょうか?」
「あ、はい」
「釣り人は、こちらでご用意しても宜しいですかな?」
「え!?お金ありませんよ?」
「ミラクルソードを景品にして、
釣り大会を開催されては如何ですかな?」
「!?」
「幸い、狩場はこの近くですから、
それ程困る事よありませんでしょう」
流石、凄腕の執事だ!僕はこの提案を受け入れた。勿論、ピンキーの鎧を買って、お金が無くなったのは、じいさんにはバレていたのだ。それがお見通しだったから、色々と考えていたのだろう。
「アレックス!我も参加するぞ!」
「うふふ!私も釣りたいです!」
「キュピ!キュピ!」
「拙者の出番で御座るな!」
「おいおい?僕達は、全員不参加だ!釣ったモンスターを狩るのだよ!分かってる?」
「ぶー、ぶー、アレックスのアホ!」
「アレックスさんのいけず!」
「キュピ!キュピ!キュピ!」
「桜吹雪と雪鮫が唸るてわ御座る!」
一人だけ戦う意欲があるのは、どうかと思うが、まぁいい。
「じいさん、釣り大会はいつ出来そうですか?」
「ほっほ!告知はしておいたので、明日か明後日には!」
もうこのじいさんには、頭が上がらんよ。ピンキーだが、次の日会った。
「ピンキー、昨日はどうなった?」
「いやぁ、10回戦突入した。それで、ようやく機嫌を治してくれたよ。もう体力の限界!今日の狩りは勘弁して」
昨日の決まった事をピンキーに伝え、僕は部屋を出て行こうとした。
「アレックス。ありがとう」
「何が、だ?」
「何でも無い。後で向かうよ!」
そう言って、僕は朝食にありついた。




