142話 気球の乗り心地。
「では!出発します!」
魔法使いは、魔道具に魔力を込める。あれ?火系の魔法じゃないの?と思ったが、「MPが持ちません。」と言われれば納得だ。
MPは消費も用途も多いが、回復する手段もまた多数ある。
消費アイテムのマジックドリンクは、飲めば直ぐにMPを一定量回復する。
特技の分け与えるで、対象にMPを受け渡す。
魔法リフレインで対象のMPを徐々に回復させる。
特性の自動MP回復。
勿論、寝れば全回復するのだ。
因みに遊び人も特性自動MP回復を所持している。レベル60で取得したのだ。
気球に乗る前に見学していたが、気球は飛べるまでに時間が掛かる。魔道具に魔力を流がし、やがて火が灯る。少しずつ火が大きくなり、火柱となった。バルーンが膨らみ、大きくなるまでには、1時間を要するのだ。
固定していたロープを外し、ピンキーと京子に手を振った。ナイトレベル50になったせいか、堂々としている。いや!これは痺れ過ぎたせいだ!と無理矢理納得した。
「少しずつ浮いて行きますね!」
ユリさんは、キャッキャッ言いながらテンションが高い。サボタンはアイの肩に乗り、遠くを眺める格好をする。サボタン良かったなぁ。染々思う。
風水士が風を操り、ユニバーサルアリッゼへとカジを切るのだ。先程まで逆風だったのが、まるで嘘の様に追い風となる。風の精霊に呼び掛けているのかと聞くと、そんなの居ないと言われた。「風水の力さ!」と科学的根拠は1つも無い。
「見て下さい!アクアロードがあんなに小さく!」
「おお!凄い景色だね。」
遠ざかって行くアクアロードを、僕達は見ていた。色々あったが、観光は殆ど出来なかったので、あまり記憶が無い。大きな団子と痺れクラゲしか思い付かないな。
暫く飛んで、ふと疑問も思う。
「空は、モンスター沸かないんですか?」
「このスピードに着いて来られるモンスターは居ないな。でも、ドラゴンなら追い付くよ。」
「え!?ドラゴンが現れたらどうするんですか!?」
「死ぬかな。でも、ドラゴンは現れないよ。対策はしてるから。気にせず、空路を楽しんでよ。」
「ドラゴンは何処だ!?」
アイは剣を抜いた!人の、話を、聞けーい!狭いから、ぶつかるだろうが!ガチャガチャと鎧が擦れる音がした。
「はは。朝と夕方は、
ドラゴンは活動しませんよ。だがら、ご安心を。」
ドラゴンは、昼間獲物を狩り、巣へと持ち帰る。この習性を利用して、気球の便を朝と夕方にしているのだ。まぁ、そんなに頻繁に活動していたら、気球の商売等成り立たない。
「安全には安心の上乗せが必要ですからね。」
成る程!一理あると思った。信用は、金では買えないからな。風評被害を考えれば、撃墜される事は避けたいし、ドラゴンを目撃した客に騒がれるのも不味いのだ。
「まぁ、我が倒すがな!」
「頼もしい!でも、万が一が有りますので、魔法使いの風魔法で逃げ切りますね。」
流石商売人だと思った。相手を貶さず、しかも上手いへりくだりかただ。
「アイ。」
「何だ?アレックス。」
「ドラゴンは取り合いのモンスターだから、
戦う事はまず無い。ポップした瞬間に狩られるからな。」
「な、なんだとぉ!!??」
と、その頃アクアロードの冒険者ギルドでは。
「ウォールギルド長!何こそこそしているんですか?」
「ドキ!」
ウォールは、アタッシュケースに1千万円を詰め込んでいた。足りないのか、ポケットと名の付く場所には、パンパンに札束が収まっている。
「これはだな!あれだ!アレックス達の気球を買うのだよ!そうだ!それだ!がっはっはっはっは!!!!」
ジト目で、受付嬢から指摘されていた。
「それだけで、気球買えませんよ!!!!」
「ば、バレた!?」
「しかも、それ職員の今月の給料じゃないですか!!何を考えていれば、そんな事出来るのかもう!!!」
受付嬢に怒られ、シュンとするウォール。
「なっはっはっは!ウォール!可哀想だのう!」
「ヒートテックギルド長?
そのボストンバッグは、何に使われるのですか?」
いつの間にか現れた、砂漠の町の受付嬢は仁王立ちしていた!仕事をほったからしにして、しかも、これからお金を何に使うというのだ?という具合である。
「ひぃい!!こ、これはだな!あれだ!そう!アレックス達のダンジョン費用にだな!そうそう!それだ!」
ジト目で、受付嬢から指摘されていた。
「ダンジョンにそんな金使う訳無いでしょ!分かりますか?どれだけ忙しいか!?ヒートテックギルド長が不在の間!皆不眠不休で仕事してるんですよ!!これからギャンブルに行くとか、言った日には!奥歯ガタガタ言わして、生まれたての子やぎの足腰にするぞ!ゴラァ!!??」
ヒートテックは、部屋の角の隅で震えながら、謝罪する。
後日、ピンキーから聞いた内容で、僕達は大爆笑になった。受付嬢が怖いのは、どこのギルドも同じなのね。まぁ、それくらい頼もしくないと、冒険者と渡り合えないか。
うふふ。と不敵な笑みを浮かべる受付嬢の姿を思い浮かべてしまった。




