141話 選択肢は3つ。
【キメーラの翼】
1個100万円の高額消費アイテムだ。パーティーメンバーを即座に好きな町、村、城へ移動可能な移動系アイテムである。ただ、難点もあるのだ。一度訪れた場所しか、移動出来ない。
キメーラと名が付くから、キメーラの素材を使っているでは無く、キメーラは空を飛ぶので、それをもじったからと思われる。
魔道具で、錬金術士が作成を行う。魔力を込める作業に時間がかかる為、高額になっているのだ。まぁ、人件費な訳だな。
「お前達、
ユニバーサルアリッゼに行った事があるか?」
アクアロードのギルド長が尋ねる。
「いえ、無いです。」
「そうか。キメーラの翼は使えないな。」
「困りましたね。移動手段が限られます。ユニバーサルアリッゼは、山と谷を越えなければなりませんから。」
「うーむ。ならば、気球はどうだ?」
「むうううう!かなり値が張るぞ?」
ギルド長二人は唸る。
「あの、気球っていくらくらいするんですか?」
「・・・・1億80万円だ。」
「・・・。」
全財産1217万円。素材やその他売り払っても、届かないだろう。だが、疑問に思う。
「あの、レンタルとか出来ないんですか?
それか、相乗りとかは?」
「ダメだダメだダメだ!!!!」「鷲は認めん!!!」
二人は頑なに拒む。何故そんなにまでも、拘る必要があるのか?
「何故ですか?
もしかして、強いモンスターが上空にいるとか?」
「それはだな!」
ゴクリ!僕達は息を飲む!
「勇者御一行が、
気球の1つも持っていないとは、遺憾だろうが!!」
はい?そんなプライド持ち合わせておりません。ギルド長二人を無視して、レンタル出来ないか相談する。ユリさんが、受付嬢に聞いて来てくれた。
勇者とはなんたるか?を力説するウォール。かの勇者は、気球の色を勇者柄にしたと豪語するヒートテック。勇者柄ってどんな色どよ!!と、ユリさんが戻ってくるまで続いた。
「定期便がユニバーサルアリッゼまで、1日2便出ているみたいですよ。料金は、1人15万円です。」
「うーん。全員で90万円か。キメーラの翼より安いな。」
「3人乗りかぁ。二回に分けないといけないね。」
操縦士1名、風水士1名、乗客3名の合計5人乗りだ。小型だが、馬力はある。何せ魔法使いが火を扱っているのだから。
気球とは、空気を熱して飛ぶ乗り物だ。
温められた空気は、冷たい空気よりも軽い。その原理を利用して、バルーンの内部に温められた空気を溜め込むのだ。バルーンが大きければ大きい程、浮力を得られるので、重量物を運ぶ事が可能となる。
気球は、風任せで移動する。が、ある程度は操作可能だ。風の向きを読んだり、高低差を利用したりと工夫が必要だが、訓練すれば思い通りとなる。
だが、安定した空路は誰もが望む事。こんな時こそ魔法だ。魔法使いの風系統の魔法を使えば、高速移動可能となる。連続走行は向かないのが難点だ。そこで上手く飛ぶ為に、風水士が活躍する。風を操るを使用し、気球の流れを制御するのだ!速度は然程出ないが、魔法効率と安全性は魔法使いよりも上である。短距離は、魔法使い。長距離は、風水士。と、用途に合わせて使い分けるのが、この商売の最も重要な事なのだ。
「そういや気球に乗った事無いんだよな。」
僕はそう呟く。すると、ユリさんとアイが手を上げた。
「我は、アレックスと乗るぞ!」
「私は、アレックスさんと人生初乗りします!」
一歩出遅れた京子が、「ぬかったで御座る!」と悔しがった。ふと、横を見ると、サボタンがとても寂しそうにしているのに、気が付く。時々此方を見て、プイッと窓の外を眺めている。
「アイ。サボタンと乗れよ。」
「何故だ!?我の事が嫌いになったのか!!アレックス!」
「いやいや、
サボタンは優勝しただろ?ご褒美は必要だよ。」
「では!我とサボタンとアレックスの3人で乗るのだな!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!
ユリさんの背後から、けたたましい負のオーラが発生する!うわぁ!ヤバい!どうする!?逃げるか?直ぐに回り込まれるけど!
「私とアレックスさんと
ピンキー君で乗るのはどうですか?」
顔は笑っていない。が、ニコニコしているのが、とても恐ろしい。見ちゃダメだ!視線を反らす。
「拙者!アレックス殿とピンキー殿と乗るで御座る!! 」
アイとユリさんが、京子を威圧する!堪らず、後退しそうになるが、踏みとどまった。
3人は、僕を見る。眉を釣り上げるアイ。ニコニコ顔のユリさん。巨乳を揺らす京子。私を選んでと言っているかのようだ。どれを選んでも、明るい未来が見えない。涙で前が見えなくなった。
1)アイ、サボタン、僕
2)ユリさん、ピンキー、僕
3)京子、ピンキー、僕
選択を迫られる。僕は考えた。そして、閃く!
「4番のピンキー、サボタン、僕で乗るのはどうかな?」
「「「却下!!!!!!」」」
ですよねぇ。無茶苦茶怒られた。正座させられ、僕はしゅんとなる。サボタンが僕の肩を叩く。「あの発言は無いよ。」
うううう。本気で泣きたくなってきた。
「ここはじゃんけんしませんか?」
「むう!我はあみだクジがいいぞ!」
「拙者は、花札が良いで「却下です!!!」」
あう。京子も拗ねた。天井に張り付き、三角座りだ。もう髪の毛が逆立って、怖いよ。
「ここはサボタンに決めて貰うのが良くないか?」
恐る恐る発言してみる。三人は、クルリと向きを変え、サボタンを囲んだ!
「サボタン!我を選ぶよな?な?」
「私と一緒だと楽しいですよ。サボタン?」
「拙者を選んでも構わないで御座るよ?」
サボタンはアイを選んだ。二人は膝を付き、何やら唱えている。おい!建物壊すなよ!!
「あのー。」
キッと、睨まれ怯むピンキー。だが、今日のピンキーは一味違う。踏んばり、こう言った。
「サボタンて軽くない?
3人+サボタンでいけると思うよ。」
「サボタン!!私を選ぶよね?よね?ね?」
ユリさんが、サボタンの手を握る!目が光を無くし、呪文を唱えるが如く呟く。サボタンは、恐怖を感じ取り、二人目にユリさんを選んだ。サボタンが頭をコクコク頷くのは、とても可哀想であったのは言うまでも無い。
「やっぱり拙者は、不人気で御座る!!」
京子は項垂れていた。窓から飛び降りて、何処かに向かう。これはお決まりのパターンとしか言い様が無いな。
こうして、僕とアイとサボタンとユリさんが、気球へと乗り込むのであった。




