140話 今出来る事。
痺れクラゲ乱獲祭りは、無事終了した。
残り1日、痺れクラゲのポップは発生するが、祭りに参加出来なかった冒険者への配慮となる。今頃は、皆痺れているんじゃないだろうか?後衛職業を除く。
今、冒険者ギルドに居る。
今後の方針説明があるからだ。魔王の事、オーク・オーバーロードの事を話合う事になっていた。勿論、砂漠のギルド長ヒートテックと、アクアロードのギルド長ウォールも出席している。その他にも、ヘラクスさんが同席をしていた。事が事だけに、メンバーは絞られている。まぁ、職員は昨日の残務で追われているので、それも理由の1つと言えよう。
「昨日はご苦労だった!
そして、サボタン!優勝おめでとう!」
「キュピ!」
サボタンは嬉しそうに、手を伸ばす。本人は親指を立てているらしい。
「優勝賞品は特に無いんだ。すまんな。」
「キュピ!キュピ!」
「アイから貰ったので、結構です。との事です。」
「はは!なら良かった!」
サボタンは、アイにだっこちゃん人形のようにくっついている。レベルが上がって少し大きくなった気がするのは、気のせいか?
「おほん!そろそろ始めようではないか。」
砂漠のギルド長は、話を進めた。
「流れから行こう。まずレベル75まで上げる。そして、魔王をBFで討伐する。その後、レベル90を目指して貰う。ここで分からない事はあるか?」
「はい。」
ピンキーが珍しく手を上げた。こんな積極的なキャラじゃなかったんだが、とりあえず聞こう。
「魔王討伐までは分かるんですが、
何故レベル90を目指すのですか?」
「うむ。オーク・オーバーロードを討伐して貰うからだ。安全圏内には、やはりレベル90は欲しい。」
「それで、オーク・オーバーロードは何処に?」
「それはまだ、調査中だ。」
ヘラクスは渋い顔をする。
「こんなに時間を有して、まだ見つけられないのか!?」
「これでも手は打っているのだよ!」
「それが怠慢だと言ってるんだ!!」
お互いにらみ合う。そこへ、アクアロードのギルド長が割って入る。
「ここでいがみ合って、見つかるのか?」
「く!だが!!」
「だがも、くそも無い!
今は各自出来る事をするのが先決だろ!!」
ヘラクスは歯ぎしりして、その場に踏みとどまった。
「ヒートテック。居場所を見つけるのを、早急に対応するんだ!ヘラクス。これでいいな?」
「ああ。」「直ぐに対応しよう。」
そして、僕達の方を向いた。
「お前達はこの後、ダンジョンに潜って貰う。」
「え!?マジすか!?」
ダンジョンとは、明かりも無い暗闇が続いている場所だ。奥深くに、ボスがいてBF戦となる。階層は、ダンジョンによってマチマチだが、深い場所だと99階層まであるのだ。
当然、休憩出来る場所等存在しない。しかも、風呂はもとより、食料、水、松明、数えたらキリがない程の物資が必要である。
「僕達は、ダンジョン初心者ですよ?無理です!」
「だが、これが一番効率がいいのも事実なのだ。」
「適正レベル60で、まだ弱い分類に入るからな。他の場所だと、55まで下げてしかもかなりヤバイ相手だ。」
「どんな相手なのですか?」
ユリさんが聞く。元受付嬢でも、50以上の狩場は知らない。それは低レベル帯の冒険者ギルドだったからだ。もし、アクアロードの受付嬢なら、知っていたかもしれない。
「爆弾岩石とボムッチだ。」
「マジすか!?」
「え?それヤバイの?アレックス。」
「つーか、ピンキーが死ぬかな。」
「うへ!?何故僕だけ!?」
「両方HPが減ると自爆するんだよ。しかも、広範囲で高火力なんだ。ナイトレベル50で辛うじて1残るんじゃね?あ、HP満タンでな。」
「はあ!?
そんなの相手出来ないよ!チェンジ!チェーンジ!」
「それ以外の獲物はおらんので御座るか?」
「だから、ダンジョンを進めてるんだろうが!」
「皆どうして乗り気って行ったんですか?」
「地道にNMを狩るという手もある。が、オススメはせんな。まず安定感が無い。いつ沸くとも限らない相手を、探すのは苦痛だ。そして、沸かすのに沢山狩る必要がある。お前達にそんな忍耐あるのか?」
皆無言になった。いつ終わるともしれない狩りよりも、経験値を確実に得られる方法の方が気分もマシだ。
「幸い、ダンジョンのモンスターは少し弱いんだ。そう落胆する必要も無いぞ。松明も魔道具なら、全域を照らす事が可能。」
「でも、休憩はどうするんですか?見張りは必要ですし、寝るのも大変そう。食料も沢山いると思うし。」
「やった事無いのに、偉そうだな!アレックス!」
「やる前に、少しは考える事も必要なんですよ!」
砂漠のギルド長と、言い争いになった。
やってみてから考える。
やる前に少し考える。
両方大事なのは、両者共に分かっているのだ。そこへ、ヘラクスが割り込む。
「なら、アライアンスを組めば良かろう。」
「何と!?その手があったか!!」
「え!?どういう事?」
「そうか!流石!ヘラクスさん!!」
「なら、安心して寝れますね!」
「だから、僕を置いてきぼりにしないで!!」
ピンキーは必死に叫んだ!やっぱりこいつはこうじゃなくちゃな!!
「アライアンスを組む。
そして、休憩しているパーティーを守る。ピンキーOK?」
「うん。今は大丈夫。」
ここからは、ヘラクスさんが説明してくれた。
とりあえず3アラ作る。6人×3アラで総勢18人だ。僕達は狩りに専念し、寝ている間は残りの1アラが守る。食事や寝床の用意を、もう1アラが行うようにすれぱ、回るのだ。2アラで交互に休憩を取り、万全の状態を作る。
「どうだ?アレックス?
これなら、お前の要望を満たす事が出来ていると思うが?」
「いやぁ!尊敬しますよ!ヘラクスさん!!」
ヘラクスは満更でも無い表情で、目を瞑る。問題児をまとめあげていただけはあるのだ!
「2アラ必要だから、ギルドで手配してくれ。」
「うむ。了解した。」
「ん?ヘラクスは参加しないのか?」
砂漠のギルド長は、ヘラクスに問いかける。
「俺は、オーク・オーバーロードを追う。」
「ばかもんがぁ!!」
砂漠のギルド長は、大声で怒鳴る!!青筋を立てて、ヘラクスを制止した!
「ダメだダメだダメだ!!!!認めん!!お前を亡くす事は絶対にならん!!!」
「それでも俺は行く。」
「ほう!それならワシを倒してから、行くが良い!」
服を脱ぎ捨て、ヘラクスに向かう。それを見て、ヘラクスも服を脱いだ!これからやる気だ!拳と拳がぶつかり合うのを予想する。ここで、殴り合ったらまず、被害は僕達だな。死ぬかもしれん。
「いいだろうでは「ちょっと待ったぁ!!!」」
二人は僕を見る!こええ!超怖いよ!目が目が!!震える膝を無理矢理直す!
「トイレ行っていいですか?」
「ぷ、ぷ、ぷああっはっは!!!!」
「流石!アレックス!水を差されたわ!」
二人は笑い出し、この場をとりあえず納める事に成功した。
「ヘラクス!もう止めん。が、無理はするな。」
「分かった!アランの名に賭けてな!」
腕を曲げ、お互いに絡める。ぐぐぐと力を込め、離した。そして、手を握り合う。筋肉の考える事は良く分からん。そう思った。
僕達は、結局ダンジョンに向かう事になる。
でも、密かに期待しているのだ。ダンジョンの有る場所が、賭け事の都市、ユニバーサルアリッゼに存在する事を!
何だか僕の思惑から、どんどん外れて行く。




