138話 猫族のウエイトレス。
「アレックスさん!アレックスさん!朝ですよ!」
ユリさんに起こされ、まだ頭は覚醒していない。もう少し、もう少しだけ寝かせて!僕は布団に潜る。
「もう!しょうがないわね。」
布団の中に侵入してくる物体がある。布団の下側からだ。匂いはとても良い香り。柔らかく、そして張りがある。下から上に進んで、耳元で止まった。息遣いも、「はぁ、はぁ。」と荒く、首筋を擽る。そして、耳朶をはむ!っとされるのだ。
「はむ!チュパチュパ!!」
「うううう。あう!あああ!!」
ガバッと跳び跳ね、耳を擦る。唾液の粘りけが指を伝うのだ。思わず匂い、そしてペロッと舐めた。う、旨い。僕も随分と変態になってしまったようだ。
「アレックスさん、起きましたか?」
「まだ寝てますよ。ぐーかーぐーかー。」
「なら、もう一度はむはむしますね!」
「ひぃいい!!!それだけは勘弁して!!」
耳朶はホントに弱いんだよ!この間、1時間もはむはむされたのを思い出す。まぁ、それだけじゃなかったんだが、ここで言えない事をしていたのだよ。おっと、テントを張ってしまった。童貞を喪失した事をここで告知する。
「朝食はどうします?」
「サンドイッチがいいなぁ。それと珈琲!!」
「じゃあ、喫茶店行きますか!」
「我は、あまーいトーストが良いぞ!」
「はいはい。」
「あれ?巨乳御座るは?」
すっと、窓から逆さまになって登場する。髪の毛が垂れ幕の様になっていた。
「わ!ビックリするだろ!普通にしてろ!」
「拙者の普通はこれで御座る!」
「寝る時も、天井に張り付いて寝るな!気になるだろ!」
「それは出来ない相談で御座るよ。」
忍者の意識高い系は、本当に面倒だ。そういや、昨日の魔法使いもだったな。と、思い出す。
「とりあえず喫茶店行くぞ。」
「「おー。」」
珈琲の香る良い喫茶店を見つけた。マスターは、髭を生やしており、貫禄を保っている。今はコップを拭いていおり、間もなく開店との事。
席に座ると、ウエイトレスが、世話しなく食器やお水を運んでくる。可愛いフリル付きなのも、この店のプラス要因だ。頬を緩ませると、ユリさんにつねられるのはお約束である。
「ご注文はどうされますにゃ?」
猫族のウエイトレスが注文を聞いてくる。頭から耳が生えていおり、触ったら気持ち良さそうだ。腰の辺りに目をやると、尻尾が生えておりウネウネと動く。
気になるので、掴んでみた。
「ふぎゃあああ!!!!何するんですかにゃ!?」
「ごめんごめん。つい。」
「ついで、尻尾は掴まないにゃ!!」
「アレックスさん?お仕置き決定ですね。」
やってしまった!でも、後悔はしない!
「早く注文するにゃ!」
「サンドイッチと珈琲。」
「我は、フレンチトーストとバナナミルク!」
「私は、ベーコンエッグとトーストのセットで。
飲み物は、紅茶をお願いします。」
「キュピ!キュピキュピ!」
「僕は、ホットドッグとココアで。」
「拙者、焼きおにぎりとほうじ茶を頼むで御座る!」
猫族のウエイトレスは、少し困った表情をした。
「うちは、焼きおにぎりとキュピ!キュピキュピ!は無いにゃ!違うのを注文するにゃ!」
「何で御座るとぉ!?」「キュピ!?キュピキュピ!?」
「巨乳御座る、パン系にしろ。
あと、レモン水とパンの耳で。」
「うぐぐ!!
では、チクワパンとほうじ茶を頼むで御座る!」
「では、復唱しますにゃ!
サンドイッチと・・・・なにゃんだっけかにゃ?」
「ぶーー!!!」
口に含んだ水を盛大に、ピンキーにぶっかけた!
「おい!やめろ!皿が濡れるだろ!!」
水耐性を得たピンキーには、最早効果は無かったようだ。
「注文承りました!」
マスターが奥から声を張る。猫族のウエイトレスは、テヘペロして去って行った。こいつ果たして、この店に必要なのか?まぁ、癒しは必要だけどね。
先に飲み物が運ばれて来た。珈琲の良い香りが僕にまとわりつく。最高の朝だ!この何ともいえない鼻腔を擽る香り!堪らない!僕は口をつける。
「ズズッ。旨い!」
この煎れ立てが堪らなく旨い!まず香りが違うのだ!豆を焙煎したてなのだろう。店で煎れる前に焙煎する手法で、かなりの手間がかかる。その分、味は濃厚で酸味は薄く、口の中に残る味わいはまた格別だ。
「アレックスは、珈琲が好きだな!しかも、ブラックって。僕は砂糖と牛乳入りじゃないと無理だよ。」
「ピンキーはお子ちゃまだな。ココア飲んでるし。」
「僕はいいんだよ!お子ちゃまで悪かったな!」
「んー!ここの紅茶は、とてもスッキリした味わいです。」
「紅茶もいい香りだね。」
「拙者の頼んだほうじ茶は如何で御座るか?」
「「ほうじ茶はちょっと。」」
「ガーン!何故で御座るか!?」
「お米には合うけど、パンにはねぇ。」
「焼きおにぎりが無いで御座る!!
仕方無いで御座ろう!!!!」
「本当に申し訳ありません!」
奥からマスターが声を張る!マスター、謝る必要無いんだが。無い物を注文したんだ。非は此方にある。
何だかんだしていると、料理が運ばれて来た。
「もぐもぐ、おまはせひはひは!
もぐもぐ、ひふへーひはうひや!」
口の中にソーセージを詰め込んで、猫族のウエイトレスは言う。何を言っているか不明だ。口からはみ出したソーセージが気になる。それはもしかして、ホットドッグの中身なのでは?
サンドイッチ、ベーコンエッグとトースト、フレンチトースト、チクワパン、パンの耳、そして最後にホットドッグが置かれた。
「ゴックン!料理が全部揃ったかにゃ?」
ピンキーはホットドッグを眺め、言った。
「これ、ホットドッグですか?」
「!?」
「僕の知っているホットドッグは、
真ん中にソーセージが挟んであるのですが?」
顔から汗をダラダラと垂れ流す。口笛を吹き、横を向いて斜め45度の目線で視線を反らす。
「うちは、うう、そうにゃ!
ソーセージが無いホットドッグにゃ!」
「んな訳あるかぁ!!!
ソーセージの無いホットドッグは、ただのパンだ!!!」
ピンキーがおかしい!ツッコミを入れているではないか!?
「そ、そうとも言うにゃふぎゃ!!!」
後ろから、マスターにしばかれる。
「大変申し訳ありません!!」
そう言い、新たに持ってきたソーセージをパンに挟む。一礼して奥に戻って行った。勿論、猫族のウエイトレスは引きずられてだ。
「よ、良かったな。ただのパンがホットドッグに戻って。」
ピンキーは納得出来ない表情で、ココアを飲んだ。




