137話 ドキドキ。
僕はドキドキしていた。
痺れクラゲの討伐1位になれなければ、どんなお仕置きが待っているのか?そう考えただけで、眠れるハズも無い。ガバッと起き、布団から出る。皆を起こさないように、慎重に部屋を出たのだ。
海岸で、痺れクラゲの討伐を見ていた。皆必死で狩っている!夜の時間は、討伐してもカウントしない。だが、それを抜きにしても、経験値2000は美味しい相手だ。高レベルになれば、こんな狩場もう無いだろう。後は、地道に狩り続けるだけだ。
ザッザッサッ。
足音が後方から聞こえる。そして、横に座った。横を見ると、アイが座っているのだ。珍しい事もある。話かけもせず、黙っているとアイは美人でドキッとした。
「どうしたんだ?寝れないのか?」
「アレックスの方こそ、寝れないのか?」
「うん。まぁ、そんなとこ。」
「我が添い寝してやろうか?」
「ははは。ユリさんに見つかったら殺されるよ。」
「間違い無いな。」
遠くで、痺れる音がする。冒険者達は、この痺れとの戦いを強いられるのだ。ゾゾゾゾゾと、少しずつ痺れるから本当に笑えるんだよな。水系魔法を唱える魔法使い。回復させて、怒られる。当たり前だ。痺れを我慢してるのに、回復されたら余計な痺れを受けなければならない。戦士と魔法使いがケンカする。
「やっぱり冒険者は面白いな。」
「我はこのメンバーだから、面白いと思えるぞ。」
「本当、アホと変態のパーティーだな。」
「我は、アホでも変態でも無いぞ!」
「はいはい。」
軽く流すと、アイはふてくされた表情をする。風が吹き、髪がなびく。それをかき揚げる様が、とても綺麗で僕は顔を赤くした。
「アレックス。顔が赤いぞ?」
「いや、見惚れてた。」
「そうか。・・・我にか?」
頷くと、アイは下を向く。顔を朱色に染め、硬直していた。
「馬鹿アレックス。」
「馬鹿言うな。」
夜空には、満月が浮かんでいた。それを見ていた僕達は、いつの間にか手を繋いでいる。いいムードだ。お互いの顔を眺めた。少しずつ距離が縮まる。唇と唇が触れあう。
と、思ったら、剣が飛んできた!間髪避ける!
「あ、すいません!剣を投げて貰えますか?」
冒険者は、空気を読めない。アイは、ワナワナとしていた。キスを邪魔されたのだ。剣を拾い、盛大に振りかぶる!そして、投げた!!
ズッキューン!!!!
冒険者の顔をカスり、海へと剣は消えた。
「あわわわわ。
剣が無くなってしまった!べ、弁償しろ!」
「知るか!!自分で拾ってこい!!」
アイは、恥ずかしさのあまり、その場から逃げ出した。剣は海の藻屑となり、もう二度と戻る事は無い。
「あ、貴方が弁償して下さい!!!」
「はぁ、そりゃあお前が悪い。剣は諦めろ。」
「あんまりだ!このままじゃ、痺れクラゲ倒せないだろ!」
「僕もあんまりだ!もう少しでキス出来たんだぞ!?それを邪魔しやがって!!あんなしおらしいアイは、滅多に見られないんだぞ!?分かっているのか!!!キス返せ!!!!」
そんなやり取りをしていると、魔法使いが来た。先程、ケンカしていた奴らなのか。見覚えがあると思った。
「さっさと行くぞ!」
「剣が無くなったんだ!もう戦えないよ!!」
「拳があるだろ!男なら、何とかしろ!」
何だか可哀想になってきた。予備の鋼の剣を抜く。
「これを貸してやる。明日返せよ。」
「マジか!?ありがとサンキュー!!」
「ほう。お前見込みがあるな。
どうだ?うちのパーティーに入らないか?」
「いや、遠慮する。」
「な、何だと!?この美人魔法使いが誘っているのに!?」
自分で言ったら、台無しだろ。まぁ、確かに美人だが、ユリさんやアイに比べれば、ランクは下がるな。
「て、事で。」
腰を上げ、尻に付いた砂を払う。夜空を見上げると、満月が綺麗だ。ふと、視界を戻すと魔法使いが前に立っている。
「まだ何か用ですか?」
「こんな屈辱初めてだ!」
「あー、もういいから、あっち行ってくれませんかね?」
「覚えてろよー!!」
それだけを言い残し、戦士を引っ張りながら逃げて行った。
一体何がしたかったんだ?その後は、ぐっすりと寝れた。




