130話 憤り。
「それは本当の話か?」
僕達は、冒険者ギルドに居る。オーク・オーバーロードの出現、そして半蔵門さんが対応している事を告げた。
「早く応援を要請するで御座る!」
半蔵門の弟子、京子は訴える!巨乳をこれでもか!と揺らし、男達の目線を釘付けだ。
「そんな事言われてもなぁ。」
高レベルの冒険者等そうそう居ない。が、この大厄災は放ってはおけないのだ。ギルド長は悩む。この間、砂漠の町の冒険者ギルドが発令した、全員徴収が効いている。また、発令されれば暴動が起こるだろう。あの後、冒険者ギルドには、苦情の問い合わせが殺到していた。9日間も冒険者ギルドが、まともに機能しなくなる事態であったのだ。
「あの、ヘラクスさんに連絡取れませんか?」
「ん?それなら可能だが。」
「それと、元冒険者にも声をかけるのはダメですか?」
「うーむ。分かった!何とかしよう!」
とりあえず30人くらいの、手練れを集めて貰える事になる。倒せなくても、足止めは出来るだろう。
「ヘラクスさんと合流出来たら、直ぐに向かおう!」
「その前に、準備だね!買い出し行ってくる!」
「冒険者ギルドで、詳しい情報を入手してくるわ!」
「拙者は、オーク・オーバーロードの書物を、
漁ってくるに御座る!」
「では、サボタンと飲みに行ってくるか!」
「キュピ!」
「おい!アイ達は僕と同行しろ!」
「くっ!バレては仕方無いな!サボタン!」
「キュピ!」
油断も隙もありゃしないよ。
30分後、ヘラクスと合流出来た。
通信魔法で連絡をしたら、アイテムで飛んで来たのだ。
「おい!半蔵門は死んで無いだろうな!?」
「・・・分かりません。
でも、半蔵門さんは簡単には殺られたりしませんよ!」
「そうだな。それもそうだ!半蔵門はどんな時も危機回避して来たからな!今回もきっと大丈夫だ!」
ヘラクスは自分を落ち着かせる為に、言ったのだろう。
「消耗品は買って来た!」
「オーク・オーバーロードに、
有効なアイテムを揃えたよ!」
「書物は取り寄せたで御座る!」
「全員揃ったな!では、行くか!」
臨時パーティーを2つ先行で、向かう事になった。
1つはアレックスパーティー。もう1つは、ヘラクスパーティーである。ヘラクスさん以外は、ギルド長とたまたま居たレベル60のナイトのナイトウさんの3人で構成された。
「ギルド長は来て大丈夫なんですか?」
「ああ!砂漠の町のギルド長を呼び寄せた。ヤツに仕切って貰うから、問題は無いぞ。」
長が不在だと、何も回らない。だから、臨時で呼び寄せたのだ。砂漠の町のギルド長は強いし、人を集めるのは得意だろう。臨時徴収した実績済み。
馬を走らせ、1時間が経過した。
「アレックス!この辺りか?」
「はい!あの墓標が目印ですから。」
トーンが下がるのは仕方無い事だ。が、あれを乗り越えて行かなければ、今後もあり得る事態に対応出来ない。グッと拳を握り締めた。
馬を下り、木にくくりつけて森の中へ入る。静まりかえっていたのだ。あの殺意に満ちた感じが何故か無い。不安になる。まさか、半蔵門さんは死んだのでは?嫌な予感がする。が、そんな不安をかき消したいので、京子に話かける。
「は、半蔵門さんが倒しちゃってたりしてな。」
「そ、そうで御座るな。」
「・・・。」
会話は続かなかった。余計に不安が過る。
「な、何だこれは!?」
木々が裂けていたのだ!しかも、20メートルくらいの広範囲で、だ!こんなの見た事も聞いた事も無い。唖然と立ち尽くす。
「おい!何かいるぞ!」
目を凝らすと、集落の真ん中に人影があった。見覚えがある。あれは半蔵門さんだ!服に破れた形跡があるが、無事で良かった!
「半蔵門さん!!」
嬉しさのあまり、近付いて行く!それをヘラクスに止められた!
「な、何するんですか!」
「様子が変だ。」
「な、何ですか?
半蔵門さんですよ!間違いないありません!」
考えたく無かった。きっと半蔵門さんがオーク・オーバーロードを倒したのだ。そして、今は休憩中で座っているだけ!ほら!あんなに涎を垂らしているじゃないか!きっとお腹が減ったんだよ!早く食べさせてあげないと!そうだ!服も破れているな!着替えが必要だ!それと!
「アレックス!!」
僕はビクッとなった。ヘラクスさんを見る。
「あれは半蔵門では無い。」
「だって、あれは半蔵門さんですよ!」
自然と涙が溢れてきた。京子は嗚咽を吐き出し、崩れ泣く。ユリさんは目を反らし、ピンキーは上を向いた。
「ほら!お腹を空かせて、
あんなに涎を垂らして!半蔵門さんは食いしん坊だな!!」
「アンデット半蔵門。鑑定したら、そう表示された。」
「半蔵門さん、名前変えたんですか!もう!言って下さいよ!でも、センス無いですよね?ヘラクスさん?」
「アレックス、現実を見ろ。」
「何を見ろって。僕には半蔵門さんにしか見えませんよ。」
少しずつ歩く。そして、半蔵門さんに近付いて行った。
「ダメ!アレックスさん!」
ユリさんが叫ぶ!が、ヘラクスが制する。
「好きにさせてやれ。」
「で、でも!!」
「大丈夫だ。死にかけたら、
俺が責任を持って助ける!絶対な!」
ユリさんは、頬に涙を伝わせた。涙でアレックスが見えない!それだけは、嫌だ!逃げたくない!そう思って、涙を拭う。
「ほら!このおにぎりは美味しいですよ!どうぞ!」
おにぎりをアンデット半蔵門に差し出す。すると、パンチが飛んで来た!
バシン!バシン!バシン!
右→左→右の連携攻撃だ。痛みは然程無い。
「やだな!涙なら、自分で拭けますよ!」
そして、アッパーが決まって後退した。一定の距離が離れると、アンデット半蔵門は攻撃を中断する。まるで操り人形だ。
「半蔵門さん!
オーク・オーバーロードは倒したんですよね?」
今度は、蹴りだ。脛→腹→顎へとヒットする。ドン!地面に倒れた。半蔵門はおにぎりを食べてくれない。あれ?お腹空いて無いのか?あ、水だ!喉が渇いてたのか!懐から水袋を取り出す。そして、アンデット半蔵門に差し出した。
「僕は気がつきさませんでした。喉が渇いてたんですね?」
また殴られる。そして蹴られた。吹き飛ばされ、立ち上がろうとした所をヘラクスに止められる。
「最後のお別れは済んだか?」
「・・・。」
無言で頷いた。ヘラクスは立ち上がる。
「アイツは、俺に任せてくれないか。」
「お前正気か!?」
ギルド長が驚く!アンデット半蔵門はレベル75の強さだ。アレックスが攻撃されて、死ななかったのは、半蔵門さんの微かな記憶がそうさせたのかもしれない。
「分かった。見届けよう。」
「感謝する。」
ヘラクスは、アンデット半蔵門の前に立つ。




