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独学の毒薬で異世界無双  作者: ほふるんるん
ムズィーク王国編
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まだまだ続く ムズィーク王国 その16 今後の方針

アスク教、宗教の一つにあるらしい。俺は初耳だが、他クラスの女子が殆ど入っているというのだからその影響力と言うの凄まじいだろう、しかもその宗教のアスクと言う人物は俺の愛称とよく似ている、というよりも良くその名で呼ばれたりしている。


「不思議な・・・・・・団体があるんですね」


「アスク顔が白いぞ、大丈夫か」


「ティア・・・・・何ででしょう、メロエが怖い話をしています」


「事実よ、今では教職員や他の領にまで布教してる。アスクが気付かないように私達が動いていたのもあるけど、男子の中でも数人は気付き始めている子もいるわ」


「数年後が楽しみじゃあないですかアスクさん!!!!!!!神様になって僕達を導いて下さいね!!」


「メイリオよ、余りアスク殿をからかうな。今のアスク殿の顔をみろ」


何だろう、俺の顔に何かついているのだろうか。頬を触るととても冷たい、とても温かな部屋の中にいたとは思えないほどにひんやりとしている。コレは誰の頬だろうか、・・・・・あぁ俺の頬だ。


「アスクがそろそろ動かなくなるぞ、昔から極度に凹むと動かなくなるからな」


「そうなる前に何とかせねば」


「アスクが心配するような事は無いわ、私が影でずっと守るもの。抜け駆けなんて誰にもさせないわ、私がいる限り貴方に触れるような女子は全員私が倒す。貴方は普通に生きていてくれるだけで良いの」


まだ食事の消化が始まっていないのだろうか、鉄分が足りないような気がする。思考はある程度まだこうして出来るものの、口に出す事が面倒極まりない。


「アスク・・・・・・おい、アスク!返事をしろ」


「・・・・・・・・」


「アスク殿はもう止まってしまったか」


「こうなると面倒だぞ、主に運ぶのが」


「アスクさんは放置!!!!!俺たちはこの状況をどうにかする事から始めましょう!!!!」


「そうであるな、となるとまずメロエ殿のそのストーカーを止めなければ・・・・」


「死にたいなら邪魔しても構わないわ」


「ストーカーの件はとりあえず置いておくとして、ティア殿、何か名案は無かろうか」


「アスクがソレを認知したなら後は簡単だ、慣れるだけだ。それにアスクの奴俺達以外の友人が極端に少なすぎる、特に女友達なんてZ組の三人を除いたら後メロエだけだ。もう少し人に慣れさせておくのも良いとは思わないだろうか、これじゃあ将来が心配だぞ」


「流石ティア様・・・・・・俺達とはまた違った視点でアスクさんに厳しくしなければ駄目だという事ですね!!!!」


「奴を五角形のグラフで表すと、まず技能や知能に身体能力はずば抜けて高いがコミュニケーション能力、主に初対面の相手にかなり低い傾向がある。これを一つ覚えておけ、多少慣れればアスクも口数が多くなるが基本嘘のような本当の事しか言わない奴だ」


「嘘のような本当とは、矛盾しておらぬか?」


「いや、紛れもない事実だ。例えばそうだな・・・・俺のB組によく殺してやると冗談でいう奴がいる、しかしアスクが殺してやると言えばいかなる手を使ってでもソイツを抹殺するだろう」


「アスクにもそれぐらいは分かるわよ」


「コレはあくまで例えの話しだ。実際そういった事にならないように願っている。もしもアスクがこの国で誰かを殺したとする、その殆どが権力によって握り潰されるだろう」


「最悪の結果・・・・・某達の知らぬ間に一人の人間が消滅したように履歴も何もかもが国から消えるという事もあり得る話なのである」


「幸いにもそういった思考になっていないだけ安全だが、今のこの貴族制度がある限りコイツは実質王に次ぐ権力者になる。そんな奴が人に慣れずにその権力を持ってしまったら・・・お前達も分かるだろ」


「暴君の誕生・・・・・・実に危険な香り!!!」


「あぁ、国の上層が腐れば民が苦しむ。今の帝国がまさしくそうだ、このミトレスもそういった国になりたくないのであればメイリオやアルバートの上に立つ男だ、今のうちにと思うだろ?」


「・・・・・・・・アスクさんを女慣れさせましょう」


「それが良いな、というよりもそれが最善である。今後はアスク殿にもっと女性と触れ合っていただかなければ」


「そうだ、今度女だけのパーティーを開いてアスクを放り込むというのはどうだ」


「メロエさんの協力があれば簡単に出来るでしょう、ン~楽しみだ!!!!」


「あの子達が暴走しなきゃ良いけど・・・・まぁ、伝えるだけ伝えとくわ」


「アスク殿は某達のような友人を持って幸せ者である」


思考が戻って来た・・・・どうやら四人共楽しそうに会話をしているじゃないか・・・・一体何を話しているのだろうか。脳が情報をシャットアウトしていて聞えているはずなのに内容が頭に入って来ない。


「お、アスクが動き始めたぞ。今回は十五分ほどか?随分と長く止まっていたな」


「何か大事な話をしていた気もしますが・・・・・頭に靄が掛かったように思い出せません」


「今はパーティーの話しをしていたんですよぉお。アスクさんも来ますよね」


「はい・・・・・楽しそうですね・・・・・皆さんが行くなら僕も同行します」


「言質はとったぞ」


「どういうことですか?」


「後々分かるである」


『フフフフフフフフフ・・・・』


何だ、この背骨を舐められているような悪寒は。俺が呆けている間に何を話していた?


「つまらなかったら帰りますよ?」


「楽しいぞ」


「ですな」


「楽しいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!ってなります。恐らく」


「不安なんですが」


「大丈夫だぞ」


「むしろ軽い気持ちで良いである」


「楽観的に行きましょうよアスクさん!!!!」


メイリオがそういうなら楽しい所なのだろう、ティアは俺との物の感じ方が違うしアルバートはなんか裏がありそう顔だが、メイリオなら信じてもまず裏切られる事は無いだろう。


「分かりました、楽しみにしています」


そうして約束を交わすと、部屋に灯りが付き外は既に暗くなっていた。とりあえずこのまま返すわけにもいかないので、邸に泊めて行くよう勧めた。


「シンリー、今日はもう暗いからメロエと後三人邸に泊める」


「かしこまりました」


シンリーが四回叩くと、三人のメイドが瞬間移動して来たように見えた。しかしそんな分けが無いので足が速いだけ・・・・その方が怖いわ。そんな人間が突然現れたように錯覚する速さで人が現れるワケが無い、となると瞬間移動の魔法がやはり・・・・・うん、ウチのメイドは謎が多い。


「この三人をスウィートルームへ。サービスは最上のモノを用意」


「御意」


「御意」


「zu Befehl」


「アナタ・・・・まだ来て日が浅い新人だったわね。私への返事は御意、ソレだけよ。アナタの教育係は確かヴェルザンディでしたね。彼女を後で指導室に呼んで起きなさい」


「御意」


よく見たらあのメイド一人はドイツ人じゃないか、此方の住人と顔のパーツが似てるから分からない所だった。それにしてもシンリーは見かけ通り人に厳しい、自分の部下ならそれも分からなく無いが・・・・徹底して穴を埋めようとする完璧主義にも思える。


「食事は今夜クレウス様主催のパーティーがありますので、その時にお席をご用意させて頂きます」


「そうなんですか?」


「はい、アスク様もご出席するようにとの事です。体調が悪かろうが良かろうが連れてこいとの事なので、お逃げになる事はお控え下さい」


考えていた事も見通されたように念を押された。どうやらシンリーの口ぶりしてクレウスの機嫌はとても悪いものになっている。やはり今回の件でかなり迷惑をかけたので、ソレを怒っているのだろう。


「わ・・・・分かりました」


「では各自お部屋にご案内しなさい」


『御意』


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

パ―ティーが始まると、俺もクレウスと同じように扉から出るよう指図されるのでそのようにクレウスの後ろに立って歩く。パ―ティー会場の前にクレウスが立つと俺は横並びでクレウスの隣に立つ。


「今日は息子の生還祝いと皆に話が合って集めた、上手い物も用意したからまずは堪能しておいてくれ。招集の時間は此方でお伝えする、これからの事を決めるものでもある話でもある為、自分の家族に何かあった場合を除いて必ず聞いて欲しい。それと今回はエルフ達によるジャズ・バンドという物を用意した、聞きなれない音楽だろうが、楽しんで聞いてくれ」


クレウスがパーティー会場から中心へと入って行くので、ここで俺の役目は終わりになる。一仕事終え、メイリオやアルバートを探す。すると、二人よりも先に俺の太ももを叩く人物がいた。


「アスク、どうかしら」


これは随分とまあ綺麗なドレスを着させてもらっているじゃないか。髪も普段と違う、かなりオシャレに気を使っている。


「綺麗だな」


「そう?ありがとう、その言葉を待っていたわ」


「髪も艶が違う、風呂に入って来たのか」


「アスク・・・・あなた良く見てるわね、ちょっと驚いちゃった」


「その髪型も似合っている」


「ちょっと・・・どうしたの?アスクがそっちで褒めてくれるなんて、明日は槍でも振るのかしら」


「俺は間違った事は言ってない、そう思っただけだ」


「もう・・・・・・・そういうとこ卑怯なのよ・・・・」


「なんか言ったか?」


「アスクが調子乗ってるって言っただけよ」


「あ?」


(何故普通に思った事を口にしただけでそこまで言われなければならんのだ)


「そんな機嫌を損ねないで、謝るから」


「命拾いしたな」


(・・・・・まぁこれも魅力の一つと考えるべきなのかしら)


「・・・可愛い」


「何だって?」


「なんでもないわ、私はこれからちょっとアスク教の事で話に行くから。席を外すわね」


「アスク教・・・・ウッ・・・・頭が・・・・」


「ティア達を探してたのでしょ?なら向こうで見たから行って来なさいよ」


「あぁ・・・行ってくる」


「ええ」

(今日はここでアスク教千人が集まる日、リーダーがいない分けには行かないもの)


メロエと別れ、ティア達と食事をとっていると使用人の一人が俺の所へ飲み物を持ってやって来た。


「飲み物ならまだ大丈夫・・・・ん、父さんが?・・・・僕に?・・・・・来いって?・・・・分かりました」


「言って来るのか?」


「はい、僕も話しを聞くだけ聞いとけというやつでしょう。面倒ではありますが、言ってきます」


あっちに行ったりコッチに行ったりと落ち着けないが、主催がクレウスならそれも仕方がないというもの。ティア達が今度パーティーを開くというから、その時は静かに食事でもしながら音楽でも聞いて楽しみたいものだ。


「父さま」


「来たかアスク、っておい。そんな硬くならなくて良いんだぞ?皆父さんの昔からの仲間だからな」


「しかし形だけでもしておいた方が良いかと」


「ほっほっほ、ソレがお前とこの息子か。面白い事をいうのお」


見るからに金の臭いのする商人が髭を撫でながらこちらによって来た。


「ニョルズ爺さん!あんたも来てくれたのか。フレイとフレイヤは元気にしてるか?」


「おかげ様でな、帝国をブチのめさなければ今頃ワシらもどうなっていたか分からんよ」


「そんな昔の事はもういいって事よ、今は解放されて元気にやってんだろ?」


「おうよ、港の漁業も革命的な伸びを見せ取るぞ。神界に帰る準備はもっと先になりそうじゃわい、ふぉほっほっほっほ」


「ったく元気な爺さんだぜ、まあソレだけ元気なら当分あの港は任せて平気か?」


「それについては問題ない、しかし不穏な噂を聞いてな」


「バンスィ―の事か」


「千年前の魔神が何故今のこの世界になんの片鱗もなく出現したのか。それが何かの前兆のように思えてな。招待状も貰った事じゃし、今回は訪問させて貰った」


「ニョルズの爺さんの所にももしかしてやって来たのか?」


「どういう事じゃ、まさかお主の前にバンスィ―がやって来たのか?」


「あぁ、化け物だという伝承とはまるで結びつかない美女だったがな。理由も冒険者登録をしたいというふざけた理由だ。しかもどことなくバンスィーからは息子と似た雰囲気があったんだよな・・・」



バンスィ―というのは以外とこの世界では有名人らしい。それとバンスィーの話をするなら俺も混ぜていただきたい、一応俺の中ではアイツは妹みたいなものだからな。


「バンスィーは僕と同じ記憶を持っているので雰囲気が似ているのも当然です」


「・・・!」


「どういう事じゃクレウスの息子、いや、アスクレオスと言ったか」


「アスクでお願いします」


「・・・・どういう事じゃアスク」


「僕の今回受けて運ばれて来たのはバンスィ―の毒を受けたからです」


「おいアスク、ソレはパパも初耳だぞ!」


「マサトラ先生がお父さんや母様に言っていたのでは?」


「あの野郎大切な所は適当にはぐらかして話やがったな・・・!」


「あのカフェイン中毒の小僧か。どうするクレウス、締めに行くか」


「それは明朝で良い。今はアスクに全てを話して貰わなければいけないだろう、よし二人だけで聞くのもアレだから少し人を集めて聞いて貰おう。おーい皆集まってくれ」


クレウスが号令をかけると、面白い話を求めて多くの人間がよって来る。コレは俺が余計な事に首を突っ込んだ罰なのだろうか、それとも回避出来ない運命のようなモノなのだろうか。


「今からムズィーク王国の南に出現したと思われ、以前行方の分かっていないバンスィ―がどのように出現したかをウチの息子のアスクが話しをしてくれる、聞いてやって欲しい」


そのまま話をしてもマサトラ先生が悲惨な目に合う想像しか出来ないので、話を多少曲げたりして話をする。


勿論結論や本質が変わらない程度の捻じれだが、生憎とコチラは論文発表などでこういった作業は頭の中でどうにか出来る。会話を長く持たせる事は出来ずとも、自己紹介や発表などは永遠に出来るのだ。


「あの魔神と言われたバンスィ―がそのような事に・・・・」


貴族や豪華な鎧を着た冒険者が騒めく。


「では記憶の大元がアスクとなったいう事じゃな?ならばとりあえず問題は先延ばしになったのかのぉ~・・・・・なんせクレウスが言うに世界一利口な子供らしいし」


「あ、当たり前だ。うちの息子が世界一利口に決まっている、その記憶を持ったバンスィ―なら悪さをするような存在になるはずがない!断言できる!」


父さんなんかすまん、俺に似てバンスィ―もちょっと危険な事が大好きな子だ。兄である俺を平気で刺殺しようとするぐらいのお転婆を許してくれるなら俺は悪さはしないと公言出来るだろう。


「とにかくそういう事ならエルフ達が演奏させてくれと来たのにも合点がいった。今エルフの経済は戦闘のせいで破綻しかけているという事か。あそこも一応俺の領土なんだが・・・エルフが国を作っているというのなら一つ交易という言葉で支援するか・・・・・・それともいっそ侵略して簡単に・・・・」


何やら物騒な話を軽々しく口にする父にドン引きする爺さん。しかし確かに国と認められていないのであれば、侵略したとしても別に何も悪くないは・・・・ず。いや、知ってる顔が死ぬのはなんか胸くそ悪いから止めて欲しいな。となると俺がクレウスに提案するのは緩やかに経済面から侵蝕していく案か。


「侵略するとなるとお金がかかります、それよりも交易でこの領地の一部という認識を植え付ければ良いと思います。今すぐに駄目でも数十年後、必ずエルフの国ではなくエルフの町になります」


「エルフの町ねぇ・・・・アスクの案も面白い。だけどパパとしてはアスクに世襲させる時に余計な芽は潰しておきたいと考えているから、エルフの集団に早い所領民という事を理解して吸収されて欲しいんだよ」


「彼らには彼らの文化がありますし、言葉や価値観も違います。そんな彼らからしてみれば僕達は恐怖以外の何ものでもない事は間違いありません、お互いの文化を強調しない限り吸収されるなんて事はまず第一に考え辛いと思った方が良いかと思います」


「アスクお前・・・・言うようになったじゃないか!!!パパはもうこの上なく嬉しぃぞ!!!よし分かった、エルフの件についてはシンリーに通してだがそういった方針で行くとしよう。お前達も文句は無いな!!!文句はなくとも質問のある奴は手を上げろ!」


貴族の中で手が上がる、腰の少し曲がったキラキラした装飾品を見つけている老婆だ。


「エルフとの交易をするという事は初めはエルフを国と認める事になるが、そんな事を私達だけで決めても宜しいと思っているのか?」


「勿論カイン王にも話はする、だが今のエルフを見て俺の提案を聞いてカイン王がどうするかなんて目に見えてわかる事じゃないか。それにある程度話が纏まっていないとカイン王に失礼という物だ、あくまでここで話されているのは一つの案であって決定事項では無いという事を忘れないで欲しい」


「ではカイン王が侵略なさると言われた場合どうなさるのです」


「うちの国が今までに何度他国を侵略出来るチャンスがあったと思っている?侵略するだけなら簡単だ、帝国のように荒すだけ荒して後は相手の平伏を待つだけの事。婆さん、あんた考えが古すぎるんだよ、植民地にした所で碌な結果を生まないのは帝国の歴史を見て学ばなかったのか?」


「・・・・」


「はい次、何か質問は?」


冒険者の中から手が上がる、先ほどの豪華な鎧を着たオッサン冒険者だ。


「エルフと交易するという事は当然その荷運びは冒険者がするんだよなぁ?」


「俺はそのつもりだ、わざわざ領地の事に国が兵士を出すとは考え辛い。それも長期間となると尚更だ、ならば当然冒険者がエルフの国に出向く機会も増える事だろう」


「なら俺達はエルフ語も覚えとけって事か?生憎俺たちは出が出なんでね、エルフ語なんざサッパリだぞ?」


「冒険者の中にも僅かばかりだかエルフがいる、初めはエルフのいるパーティーが主軸となってエルフの国のクエストは受けて貰う事になるだろう。後々の対策は此方で検討するつもりだ」


「なんだよソレ!それはパーティーでの稼ぎに揺らぎが出るんじゃねえのか!」


冒険者がクレウスに怒鳴る。クレウスも当然の反応かと言った風な表情で聞く。


「お前は確かSSランク冒険者のトーラスだったな」


「お、おう。ギルマスに覚えて貰っているとは光栄だな」


「お前はエルフの荷運びだけが冒険者の仕事だと思っているのか?」


「いや、俺は仕事の出来る幅っていうかなんて言うか、種類が増える事に対しての違和感の事を言ってんだよ!」


「甘えんじゃねえ!!!」


「・・・・なんだよ急に」


「エルフ語が話せないから出来ない仕事の幅がエルフのいるパーティーと違いが出るだと?笑わせるな!冒険者ならそれぐらいの違い埋めて見せてみろや!!!!」


「・・・・・・・・・・・・・やってやろうじゃあねえかああああ!!!!っしゃあ!!!!今からワイバーン狩りに行ってくるわ!!!」


「勝手に言ってこいや!!」


冒険者は扉を飛び出て行った。


「アレで良いんですか?」


「冒険者は利益じゃ動かないって事をアスクは覚えておくんだな」


「僕とは人種が違う人のようですね」


「いつかお前にも冒険者の浪漫が分かる日が来るさ、では次の質問はあるか・・・・・・・・・早々、公で出来ない質問なら後から聞くから使用人に言っておいてくれ・・・・・・もうないか?なら解散だ。料理も新しいのがそろそろ運ばれてくる頃だろう、楽しみに待っていてくれ」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一方その頃メロエ&アスクファンクラブ


ファンクラブ会員番号165番「リーダーどうでしたか、アスクレオス様のご様子は」


「顔色も良さそうだし、食事もアスクの好みに合わせた物にしているからよく食べてたわ。明日には少し軽い運動は出来るんじゃないかしら」


ファンクラブ会員番号280番「アスクレオス様の復活も後少しという事ですね!」


ふふふ・・・、試作品だけどあの料理にティアの持って来た吸血鬼王特製魔界の野菜凝縮の一杯を加えたらほぼ完成に近い味になったわ。効果は倍増、味もパーフェクト。


「明日にはきっとビックリするでしょうね」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌朝・・・


「腰や肩の痛みから解放されている・・・」


いや他にも頭痛がしたりはするんだが肩と腰がとくに痛かった・・・。肩とか上がらないから腰ごと腕を上げようとすると腰も痛いし・・・それがようやくの開放だ!まさかこの歳で肩や腰の痛みと戦う破目になるとは思いもしなかったが。


「俺は神だ」


「お気を確かにお持ちください」


「・・・・・・・・いつからいた、いや、聞かなくても分かる。俺の起きる前からだな」


「分かっているなら人間が一人の時にするような行動は見ているコチラが恥ずかしいので止めて頂きたいのですが、どうしてもその行為を人に見られて喜ばれるのであれば、私がいう事は何もありません」


「止める、というよりも今のは見なかった事にしてはもらえないだろうか。そして誤解しないで頂きたいのは俺が訳の分からない妄想を膨らましていたのではなく、腰や肩の痛みと言ったそういった辛さから自由になったという表現を直喩的に表現したという事を理解してほしい」


「理解しかねます」


「・・・・・・うん、もういい。全て忘れろ」


「それは無理でございます」


「パンチして良いか?」


「今回は私の頬に拳がめり込めば良いですね」


「それは皮肉か!」


俺の渾身の速さでパンチを繰り出す。以前の俺はもしかすればメイドという立ち位置を哀れんで拳を緩めていたのかも知れない。だが、今回は違う、今回は正真正銘本気の全力でこの女の頬にこのシンリーの顔の半分を占める拳を密着させて押し込みたい。


「まだまだ甘いですね!!!」


気付いた時にはもう遅く、俺の拳の力を上手く使われそのまま地面に頭からダイブした俺は、上から飛んでくる彼女の拳を避ける手段を持ち合わせていなかった。


「・・・・・ック」


痛みを覚悟した瞬間、眼球すれすれで止まる拳。


「コレはメロエをちゃんと褒めたご褒美です。有難く受け取りなさい」


メロエを褒めた褒美ってなんだ?俺はメロエに何かしただろうか。拳の代わりにおでこにデコピンを貰い、俺は部屋を出た。


(デコピンされた所から血が出て来たな)


そっと俺は朝食前に回復魔法を額にかけたのだった。

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