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独学の毒薬で異世界無双  作者: ほふるんるん
ムズィーク王国編
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ムズィーク王国編 その10 アレシア登場

自分に娘がいるなら、もしかしたらこのような気分なのかも知れない。ゆったりとした温かい空間、決して打たせ湯に打たれているだけという事はないはずだ。


「君は何所からきたんですか?」


鑑定した結果少女の名前はアレシアといい、歳は五十歳とエルフの中ではまだまだ幼少期に入る年頃。この世界のエルフ寿命は六十歳で成人、長命なエルフはハイエルフと違う呼ばれ方をされ、三百歳ほどの者もいるらしい。そのエルフに関しては、少し前の期末テストに問題として出ていたので偶々覚えていた。


「ムジィーク王国からだよー」


「いえ・・・何というか、そうではなくてですね。貴女はどうしてこのような場所にいるんです?」


「う~ん、語ると長い話になるかな~それでもきいちゃう?」


「聞きます、出なければ他の友人に見つかった時に言い訳のしようがない」


そう返事をすると、少女は打たせ湯が上から流れてくることを利用して、そのお湯に逆らうように、打たせ湯の中を進んで行く。小柄な彼女だから出来る面白い技だ。


彼女が上に到着したのを確認すると、穴の中から足のバネと魔法を使って跳ねる。魔法を使わなければ、顔面が跳ねている際に痛いので防護服のような形で使用する。


「あ~気持ち良かった~」


「コレ、貴女の服ですか?」


「あちゃ~・・・・びちょびちょになっちゃってるね」


「手間の掛かる子ですね・・・・少し待っていて下さい」


適当に魔法で霧を作り、彼女に纏わせる。


「わぁー凄い!雲の服だ!」


「湯冷めする心配はないでしょうが、一応未確認の魔物も多くいるので全裸でいるのは危険でしょう」


「イケメンさん・・・・じゃなくてアスクレオスさんはその鎧脱いで中を拭かなくて良いんの?頭びちょびちょだったら風邪ひいちゃうよ?」


「後で大丈夫ですよ。それとハイ、コレである程度乾いたでしょう」


「わぁ~ありがとう!温かいねー」


服を着た事を確認すると、雲の服を解除する。俺も早い所鎧の中の水滴を魔法で乾かし、話を聞く体勢を作る。先ほどまで下ろしていた髪をフィッシュボーンツインテールにし、茶色だと思っていた髪の色は俺と同じ緑色と発覚したアレシアが穴の近くにあった切り株に腰を下ろす。


「それで・・・私に聞きたい事があるんだよね。アスクレオスさん・・・・・長いね、短くしてレオスさんで」


「まあ良いですが」


後ろの三文字を取るという考えは無かった。てっきりクラスメイト同様にアスクと呼ばれるかと思ったが・・・・・まあこの子に呼ばれる時は分かりやすいからそれはそれでいいか。


「それで、確か私に語って欲しいんだよね」


「そうですね、とりあえず目的から」


「と・・・友達がレオスさんの事が心配だから見てきて欲しいって頼まれて」


はてはてはて・・・・・・・自分自身に質問だ。俺を心配しているらしいアレシアの友人、ソレは果たして俺の知っている奴だろうか。というか、どういった心配だろうか。


命の心配ならまずZ組ではありえないだろう、そんなに心の温かい仲間達ではない。SSSからZに上がって来た奴には一応休憩時間会話をする機会はあったが、そこまで心配される程の中になった生徒はいないはず。となるとやっぱり・・・・・。


「人違いだと思いますよ?それ多分」


「えぇーでもZクラスで人間とは思えない長身のイケメンよりもハンサムの似合う豪華な鎧を着た裏表激しそうな人って、レオスさんの事なんじゃないの?」


「一言余計ですが、とりあえず僕の事で間違いない見たいですね。特に人間とは思えない長身なんて僕しかありえません。そういえば、その友達の名前を教えて貰っても良いでしょうか」


「その友達の名前?メロエちゃんって言うんだけど分かるかな?すご~くご飯が美味しいから、クラスでお嫁さんにしたい子一番なんだよ~」



メロエが俺の事を心配する・・・・何故だろうか。ここ最近は俺の事が嫌いにでもなったか思春期に入ったからなのか、微妙な空気になりやすい。というよりも、ここ二週間はあってもいない気がする。夏休みは上の世界で何かと忙しかったので仕方ないとしても、顔ぐらいは見ておいた方が良かったかも知れない。


「それはその・・・マジか」


「何そんなに驚いてるんですか、驚きすぎて口調が変わってますよ」


驚きもするだろう、ツンツンで会話していると時々剣のように鋭い言葉を投げかけて来るメロエが俺を心配するだろうか。いやいやいや、そんな事はないだろう。カティウスぐらいになら誓える。


「コホン、失礼。いやぁ、それが本当なら一大事ですね。それまた何に心配したんですか」


「やっぱり最近会ってないって言ってたから、ソレが悪かったんじゃないかな~」


「微妙な空気になっても会いに行くべきでしたか」


「会話の中身に意味なんてないよ、レオスさん。メロエちゃんともっとお話するべきだよ!」


「そ、そうですか、ではなるべく話すようにしてみます。次にですが、何故メロエに言われたからと言ってアレシアがこんな危険な場所まで来なければならなかったんですか。場所なら他にもあったはずです、例えば大樹の上にある城下町や、その大樹の下にあるエルフの土地などが」


「まず私がこの国出身のエルフじゃないって事がまず城下町とかエルフの土地でお喋り出来ない分けかな~」


この国出身ではない、というのはどういう事だろうか。この森に棲むエルフ以外にもエルフが森の中に棲んでいるという事か、それとも人間族とのハーフなのか。


「この国出身でなければ駄目なんですか?」


「う~ん、ちょーっと難しいとこなんだけどね。横に耳が長いのと縦に耳が長いのとでは全然違うだー。それこそ奴隷と平民ぐらいの違いがね~」


「アレシアのその縦に長い耳のエルフが奴隷ですか」


「あははははは、君デリカシーが無いって良く言われない?でも・・・・そうだよ。私達縦に耳が長いエルフ達は昔全て奴隷におちた。それこそ家畜以下って感じ、私が生まれてちょっとした頃だったみたい。あ、そうだった、これから話す事は絶対に誰にも行ったら駄目なんだけどね。ジャバって人が大量に私達の縦耳エルフを買って、他の魔族地域にいた仲間達も四割ぐらいはジャバさんによって助けられたんだよ」


メロエの父親が?しかしあの人はお金持ちではあっても、自分に利益の無い事にはとことんお金を使わない人だと思っていた。それが絶滅されたと思われていたエルフ達を買っていたとは、案外歴史ってのは周りで動いているようだ。


「それでジャバさんの娘であるメロエに恩義を感じて、こんな危険地帯まで彼女との約束を守って来たと」


「え?別に恩義とかじゃなくて偶々私が暇だったからだよ?」


「そ、そうですか」


あ、別にそういった泣ける話とかではないのか。しかし裏で人助けとはあの人も中々カッコイイ事をする。今度家族と執事と使用人を連れて一番高いメニューを頼みに行こう。ティル用のご飯はあるだろうか?


「それにメロエさ・・・・メロエちゃんには良い事教えて貰ったし」


先ほど一瞬メロエ様と聞こえたのは、水か何かがまだ耳に残っていたからだろう。


「良い事?」


「ひっみつぅ~、だけどね。コレだけは覚えておいて、メロエちゃんや私もいつもあなたの事を心配してるから」


「はぁ、よく分かりませんがありがとうございます」


「じゃあ私はそろそろ行くね。はやく学校に帰ってメロエ様に報告しなきゃ」


どうやら水が耳の穴を占領しているようだ、幻聴が酷い。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

~学校 SSS組教室 ~


「メロエ様メロエ様、レオスさん・・・・じゃなかった。アスクレオス様は、健康そのものといった感じでした」


「そう、で、私の事についてアスクは何か言ってたかしら」


「良い方と悪い方、どちらから聞きます?」


「悪い方から」


「最近話していると微妙な空気になると」


グサリと私の胸に言葉が刺さる。つい一時間程前にアスクから直接そう言われたのだと思うと心が痛い。というか、下手したら少しの間落ち込んでしまうかも知れない。私は微かな可能性にかけて他に何か言っていなかったかと聞き返す。


「良い方は?」


「だけどメロエがそこまで心配してくれているなら、僕はもっとメロエと話がしたいと」


「へぇ・・・そうなんだ」


「以外と反応薄いですね」


「そうかしら」


反応が薄いのではなく必死に隠そうとしているのだ、この歓喜の舞を。最近学校の中で、男の人は突き放されると追いかけたくなるという噂を聞いてしまった私は、この頃アスクを避けるようにしていた。しかし、追いかけたくなるのは彼ではなく私。


そしてとうとう我慢出来なくなった私は、クラスの中でも隠密に優れているであろう彼女に頼んだのだ。アレシアはアスク教信者0008なので、0001の私からのアスクに関してのお願いは断る事が出来ない。それは私の作ったアスク教の崇拝者であり絶対的な存在であるアスクを支える為に他ならないからだ。


アスクの安全な生活と、幸福は私達アスク信者にとって何よりの至福であり、信者の誰にとっても幸福なのだ。


「そういえば、0002の方はどうだった?」


「なんか人が変わったみたいになってました。初めは、誰があんな奴を信仰しなければなりませんの!?とか激怒してましたが、今日朝あってみたらなんか魔物に襲われた後のトラウマを思い出したような感じで。話す事も、あの人に忠誠を誓いましたとか。もうしませんとか、私達はまだ何もしていなかったというのにあのビビりよう、何かあったとみても良いでしょう」


「ありがとう、ソレだけ聞ければ十分よ。後一時間もすれば皆が来て一限目が始まるわ、その時は分かってるわね」


「もっちろんだよ~!クラスの男子に分かんなきゃいいんでしょ?んなの簡単簡単」


「そう、ならいいわ。私は朝ご飯が済んでいないから一度寮に戻るわね」


「あ、なら私も一緒に食べるぅ~今日は何作るの~?」


「あなた・・・・・別に食堂で食べても良いじゃない」


「いいじゃ~ん、メロエちゃんの部屋キッチンあるんだし~美味しい物たべた~い」


「しょうがないわねぇ・・・時間もないし軽くしか作れないわよ?」


「わ~いやったぁ~!」


そういえば、アスクはこんな早朝によく起きていたと思う。それも彼女とあうならきっと一目のない所よね・・・・・・・どうしてそんな所にアスクがいたのかしら。


「ねぇ、そういえばアスクとどこで話したの?」


「穴の中と外・・・・かな?中に入ったら、温かいの出してくれて気持ち良かったなぁ~」


「穴の中と外?・・・・どういう事?」


「え、だから森の中に大きな穴があって、アスクさんがその穴の底にいて~、私がその中に飛び込んで初めにお話したの~」


「え、アスクは何で穴の底なんかにいるの?」


「上からお湯をずーと流して遊んでたの。あれ面白かったなぁ~」


穴に入って上からお湯を流しこんで遊ぶ?どういう意味かしら。それなら下に落ちたお湯は容赦なくその穴に溜まって、直ぐに一杯になるんじゃないの?それにアレシアが飛び込んだっていうぐらいだから、結構深かったのかしら?


「ま、まあいいわ。穴の事はよく分からなかったけど、外でも話をしたのよね」


「うん、服を乾かして貰ってからそれを着てー・・・・」


「ちょっとまて、まちなさい」


「どうかした?」


「あなた今服を乾かして貰ってって言った?」


「うん、レオスさんの鎧が水着みたいになってたからソレが礼儀なのかなぁって、私も流儀に習って水着と行きたかったんだけど生憎持ってなくて」


「それであなたもしかして・・・」


「全裸でぱーと、入って来たよ?」


頭が痛くなる、この子頭は私より良いのに何でか知らないけど阿保だ。


「でも穴の外に出ると、水着じゃなくて鎧でねー。あはははは、ちょっと今思ったら恥ずかしかったかなぁ~」


「あなた忘れたの?崇拝者と過度な接触は控えなさいというアスク教の教えを」


「あんなの過度の中に入らないって。見られて減るもんでもないし!見られて恥ずかしい物もついてない!あ、レオスさんのは恥ずかしくない、大したもんだったよありゃ~」


「何がだ!もうぅ・・・いいわよぉ・・。あなたの話しを聞いてると疲れちゃうぅ・・・」


「メロエちゃん、元気出せって。朝ご飯食べたら今日も一日がんばろ!」


「あなたのせいよ!?」


「あはははは、なんだ元気じゃん!」




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