ムズィーク王国編 その9 打たせ湯メイン ヴィント登場はおまけ
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成果
アスク&ティアチーム(初期メンバー男子陣) :薬草大量入手 :レポート ティア四十枚 アスク三枚、計四十三枚
メイリオ&アルバート(初期メンバー男子陣) :レポート十枚 :植物採集
ジーナ&スクイ&リーズ(初期メンバー女子陣)
:植物採集 :レポート計二十五枚 :更に植物の売買により通貨入手 :更に勝手に工芸品などの購入
レオパルド&マガフ&ショット(新クラスメイト男子陣)
:群生地の情報入手 :植物採集 :レポート九枚
ダリア&ミモザ&ベロニカ(新クラスメイド女子陣)
:群生地の情報入手 :植物採集 :レポート十枚 :植物の売買はせず、自分達で使用するようにいくつか所持
その他(SSSに上がりたて陣)
:植物採集 :レポート六枚 :観光
「皆さん好き勝手にやっているようですね・・・・先生は少し羽目を外し過ぎな気もしますが、前例がないのでどうにも皆さんを納得させるような答えを出せずにいます」
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早朝、一足先に起きるとまだ生徒が全員寝ている部屋から下のフロントへ下り、一階の飲食施設から外へ出ると、寝間着となっている至高の上下鎧、ブーツ、ガントレットを外気浴と同時にその空気の変化によって外着の服として変化させる。ヘルムは俺の意思で形状を変化させる事が出来る事は手に入れてすぐに気がついた。
「素晴らしい朝だねアスクレオス君」
どこかで見た少年が俺に話かける。どこだっただろうか・・・・・とりあえず返事は返すべきだろう。
「おはようございます。今日もいい天気ですねぇ」
「朝食の前に少し体を動かすのは僕の趣味でね、少しアスクレオス君に手伝って貰いたいんだが、構わないだろうか?」
「それなら次に起きて来るであろうメイリオに頼むと良いでしょう。彼は僕と違って武闘派ですから」
こういう奴が面倒の掛かる奴だという事は大体理解している。つまりこういう奴にはサラリとかわして消えるに徹するのが正解だ。
「ねえちょっと待ってくれ、もう少しSSSランクから上がって来た期待の新人に注目しても良いんじゃないか?」
・・・・・・先ほどの考えは修正を考えた方がよさそうだ―――こういう奴はサラリとかわしても追いかけて来る。
「だから何だと言うんですか?SSSからZになって凄いですねぇ~努力も怠ってないようで素晴らしいと思います。ではこれで、今日も良い日になる事を願っています」
「本当にちょっとで良いんだ、手合わせをして欲しい。貴方がクラスで一番強いというのはメイリオさんから聞いた。あの人より強い人を自分の目で見てみたいんだ」
(いつ決めたんだそんな順位・・・クラスで一番は出席番号だぞ、相性でいうならティアには負ける事もあるだろう。いつの間にそんな噂が立っていたんだ?)
「じゃあもう早く斬りかかって来て下さい。僕が殴りとばすので」
「君は剣士だろ?僕は剣を構えない剣士とは戦えない、そう、この剣と僕の誇りにかけて!」
・・・・・・俺の大剣をコイツは見た事がないのだろうか?というよりもメイリオから詳細を聞かなかったのか?俺と剣を交えたら体中に毒が回るんだぞ?阿保なのか?
阿保なのだとすればそれは大問題だ、馬鹿でない変わりに阿保というのは、何所かの猿のように少しいじらなければ治らないというのは知っている。いや、無知という事を自覚していない時点で猿以下か・・・
「僕の得物は使えないので、変わりのものを貸して貰ってよろしいでしょうか」
「それはどういうことだい!?」
「ですから・・・・僕の得物では触れただけで死ぬので代わりの武器を貸していただけないかと」
「ふ・・・・触れただけで死ぬだと?馬鹿にするのも大概にして頂きたい」
どうするべきか・・・・馬鹿は教育してやれるが、道化については専門外だ。剣について一から十まで説明した後に、人の命がいかに尊いか説いてそれから無益な戦闘は避けるべきだと諭すべきだろうか。・・・・・・・正直いって、朝からそんな怠い事やってられるか。ん?怠いと言えば以前に風邪になる薬を作ったな。
「なら信じていただく為に今から貴方に触れただけで風邪になるようにします」
「風邪とはなんだ?」
「・・・・・・回復魔法で治る呪い的なアレです」
「アレを自発的に起こすというのか。面白い、僕は君と戦えればそれで結構だ!さあ剣を構えて」
剣に風邪になる薬を吸い込ませる。この剣に毒を吸収する時、赤子に小さなスプーンでご飯を上げているような気持ちになるのは、俺がこの武器に対する愛なのだろうか。
「さて、コチラの準備も整いました。どうぞ、どこからでも」
「では手始めに行くよ!業剣流一の型!」
そういって出されるのは左袈裟斬りからの右袈裟斬り、それに右袈裟斬りの勢いをそのまま利用したタックル。見ていてとてもカッコイイとは思ったが、一つ一つ丁寧にされても困る。どうやら教えられたように一つ一つの動作をしっかりとしているらしい。しかもキレは良いし、剣の振りも早い。
この Undaria pinnatifidaヘアー、努力家でセンスもある。なるほど、Z組になったことも冗談やネタではないようだ。が、しかし、これではSSSに落ちる日もそう遠くはないだろう。四年・・・いや三年以内に消える。
「もう少し見せて貰って良いですか」
「勿論!僕の剣で貴方がどこまで余裕でいられるか試させて貰うよ!業剣流二の型!」
左から右へ横薙ぎをした後は、右から左上に向かって斬り上げ、その後斬り上げと共に飛びあがり、光魔法で目くらましのようなものをした後、上からの全体重を乗せた刺突攻撃・・・・・・今度のは得意な型だったのか、流れるように攻撃から攻撃の間の時間を短縮出来ていたように思える。
普通に生徒が攻撃を受けたなら、目くらましを使った攻撃には対処が難しいかも知れない。魔物もまた然り、瞼のない魔物などにはよく効く攻撃になるだろう。
「ま~これぐらい出来れば四年は持ちますよ。他のSSS組の生徒に負けなければの話しですが」
「待ってくれ!まだ一度も剣を交えてないじゃないか!本気で相手をしてくれ!頼む!」
「じゃあ先ほどの型・・・・業剣流でしたっけ、アレの一の型を僕がアレンジするとします。すると、こうなります、防御出来るように最大限に警戒してください」
剣に魔法を使用し、鎌鼬のようにして左袈裟斬りと右袈裟斬りを飛ばすと、三メートルの巨体で思いっきりタックル。この時上から潰しと捻りを加えて相手をすり潰す容量でやる。
「そして最後に君の首をこの大剣で刎ねる・・・・という感じです。まあ今回は風邪にするという目的だったので、斬るのは首ではなく髪にしておきますね」
防御魔法を張り何とか防御は出来たようだが、手が震えている所からして何かしらの衝撃は与えられたようだ。・・・・これに懲りて少しは自重して貰いたい。学校ならともかく、人が寝起きで朝の太陽を浴びに来た所を狙うといった事はもうしてくれない事を祈るばかりだ。
「グチュン・・・・本当に呪いにかかってしまったようだ・・・ズズゥウ・・・コレは自分の為にも暫く残しておくことにしよう・・・・ズビビビビビ・・・・」
「呪いは伝染するから早いところ回復魔法で治して下さい。では本当に僕はコレで」
「あびばどう」
「汚いので、早く魔法を使って直して下さい」
「ばがった」
確かアイツの名前はヴィントとか言ったな・・・・覚えておくか。ったく朝っぱらから阿保の相手をさせられるとは思いもしなかった。汗でも流すか・・・・・・そうそう、そういえば残しておいたんだった、昨日ダンジョンで使った水が。早速早朝ランニングも兼ねて、森の奥までやって来た。
森の奥まで来ると、いろんな虫や動物が大きくなる。例えば今俺の皮膚に針をねじ込んで血を吸おうとしている三センチほどの蚊がいる。コイツは巨大な魔物からも血を吸う為に、刺されるだけでも病気の可能性が出て来る危険な奴だ。
この蚊を使って、新しい生物兵器の研究を進めているのだが・・・・思った以上に苦労している。とりあえず出会いがしらに出会った蚊は一匹づつに小瓶を用意し、捕獲した。
そんな事をしつつ、歩いていると目的の場所につく。そこは昨日ティアと縁獅子が戦った場所であり、広い空間が木が薙ぎ倒された事によって出来た場所だった。
「ここら辺なら誰も来ないな・・・」
幅百メートルの大きな穴を掘り、その中に飛び込む。後は、亜空間にある例のモノを頭上から調整しつつ出せば完成となる。
「日本じゃあ絶対にこんな事出来ないな~」
その名も亜空間式打たせ湯、落差約百メートル、温度調節は火魔法などで手動でする。
「温かい・・・熱!・・・あ゛ぁスバらしいー」
こう気持ちが良いと、つい歌を歌いたくなる。
「君とで~あ~あてから~い~くつも~の~ふふふんふーんふふふんふん~ふふふふんふんふ~ん・・・・・・・・・・・・・ウォオ・・・ウォオ・・・・ウオーウオウオウオウ・・・」
「あ・・・あの・・・何してるんですぅ?」
亜空間から出ていた打たせ湯は止まる、俺も止まる。虫の声も動物の声も鳥の声も世界も全て・・・止まったかのように思えた。俺の気のせいでなければ少女の声が聞こえたはずだが。いや、こんな森奥深い所から少女の声が聞こえるワケが無い。さて体も冷えるし続きをしよう、体もぬくもればまた口から歌が漏れ出て来る・・・・何時誰が歌っていたかは思い出せないが確か物凄い名曲だったような・・・・。
「四六時中~も好き~とふふふ~ん・・・・ふふふふふんふふふんふふ~ふ~ん・・・・」
「み・・・見られてますよ~」
上を見上げると、ひょっこりと男の水浴びを覗き見する少女の姿、こ・・・・殺さなければ・・・・。
「お歌とっても上手ですね~どこの音楽ですか?」
今上から熱湯をかぶっているはずなのに体が寒い、どうしてだろうか。体も震えている、どうしてだろうか。俺は何故こんな事になっている、少女がいるからだろうが。
「今何してたか分からなかったとは言わせませんよ・・・・」
「え・・・・駄目なんですか。でも気持ちよさそうだったし、私もちょっとお邪魔していいかなぁって思ってたんだけど・・・」
塩を相手の傷口に塗って来るタイプか・・・、コイツ相当の実力者と見た。
「でもこのお湯は勢いが強いですし、何より熱いですから。貴女にはまだ早いでしょう」
「で、でも私鍛えてるんで」
そうじゃねえよ、いい加減にしねえと切れるぞ?
「嫌しかし・・・」
「すいません、もう脱ぎました」
「は?」
少女は上から見ると底が殆ど見えないであろう大穴に飛び込んでくる。少女は猛スピードで加速して穴の底へと落下してくる。魔法もかけていないので、このままでは彼女は骨折では済まない怪我になるだろう。とりあえず落下して来た少女を途中で受け止めてから魔法を使って、底に下りる。
「あれ、変態さんだと思ったらイケメンさんだった・・・!」
どうやら彼女、穴の奥底にいるものを何とは知らずに飛び込んできたらしい。何と危なっかしい子だろうか。背丈で見ると、俺を除いたクラスメートとほぼ同じぐらいだ。歳はエルフなので当てにはならないが、まあ精神年齢は一桁で間違いないだろう。
「変態は余計ですね」
「えへへへへ~ここで私、きゃ~へんた~いとか叫ぶべきかな?」
「生き埋めにされたくなければ止める事をお勧めします」
「きゃ~鬼畜~~~~」
少女を下すと、早速と言わんばかりに、用意しておいたであろう布を体に巻き、湯をよこせと言わんばかりにこちらを見つめてくる。こうなったら耐久戦だな、俺と同じ強さのお湯をこの少女の遥か上から落とす。
しかし、少女はビクともせずにこのお湯を楽しんでいるようだ。もしかしたら上から落下してくる時に助けなくても良かったかも知れない。
「あーいい感じですねー」
少女がこっちを見て微笑みながら鑑定を使ってくる、何のつもりだろうか。
「ステータスは見せられないですよ?」
「えぇーケチー名前しかわかんなかったー」
アレだけ拒んでおいて、名前は分かったのか・・・・いや。俺の名前なら多くの人間が知っていても不思議じゃない。この子のブラフと考えるべきか、それとも能力値が俺とそれほど変わらないか、どちらにせよ少し警戒した方が良いかも知れないな。
いつか温泉回とか書いてみたいですね~、今回は大男と少女しか出ない俺得な話ですいません。




