ムズィーク王国編 その他 説教と皮とダイアモンド
サブタイトルが意味不明過ぎる気がするけどこれを書き終えたのが夜の十二時を越えてからだからこのテンションでサブタイトル決めちゃいました。
加筆&編集後・・・何となくサブタイトルは気に入っているのでこのまま。
縁獅子によって薙ぎ倒された木をどかし広い空間を作ると、ここで一度成果発表という事にした。
「さっきの獅子は材料に入るのか?」
「獅子は材料には余り適さないでしょう。本体は普通の虎ですし、それにスキルもさほどいいものでもありません。ティアが血を飲んだとしても毛が生える程度でしょうし」
残念ながらこれは売る以外には特に利用する価値はなさそうだ。武器職人など知り合いに居たら頼んでも良いが、生憎とただで武器や防具を作ってくれる職人を俺は知らない。俺の知っているのは高額で子供に鎧を買わせる武具作成の天才だけだ。
「アスクが使わないならこの縁獅子の素材俺が貰っていいか?」
「興味本位で何に使うか聞いてみても良いですか」
「例えばこの牙は見た所頑丈で武器に使える。毛皮は・・・これは見せた方が良いな」
そういってティアは毛皮をはぎ取るために一本の短剣を取り出し、縁獅子の皮を綺麗にはぎ取っていく。ティアのスキルから言ってここまで綺麗に皮を剥ぐのは凄い事だ、どうしても皮に肉が付いたりなどして後処理が面倒臭くなるが、今ティアが剥ぎ取っている皮にはそういった物がない。
皮についていた巨大なノミや小さな魔物も魔法で綺麗にしていく。
「ティア、その短剣は?」
「気づかないか、昔天使の門で劣化の短剣を見つけただろ?」
「ああ、あの時ティアが以何かあると踏んだあの短剣ですか・・・まさかこれほどのものとは」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■ 魔剣アンプタ 古代級
効果:対動物 ・切断強化補正+極大 ・四肢の切断強化補正+極大 ・破壊不能
説明:異界で作られた四肢を切断するために作られた魔剣。代償として生きている生物を切断した場合同じ苦痛を味わう。
素材:他世界の素材
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「帰った後、国の研究班にこれを預けっぱなしでな。研究から復元までに二年かかったぞ」
「二年で古代級の武器が復元できるってどういう技術ですか、全く凄い国ですね」
(昔勉強したこの世界の歴史に吸血鬼族は、巨人族と並んで魔族地域で大きな権力を持っていたそうだ。それが元で出来た国ならそういった研究者が集っているというのにも納得がいく)
「アスクも将来うちに研究者として雇われてみるか?」
「ハハハ、好き勝手に生きれないのはもうこりごりです」
「前にもどっかで働いていたような口ぶりだな?」
「そうでしたか?そんな事よりも剥ぎ取った皮をなめす作業に入らないと」
「そうだったな・・・まず、はぎ取った毛皮を水魔法で綺麗に洗う、火魔法を上手く使い毛皮を燃やさないように乾かす、そして専用の液体が入った壺に毛皮を入れる。これで第一段階完了だ」
「そんな大きな毛皮を一体何に使うんですか?毛皮の感触も余り良いものとは言えませんが・・・」
「アスクさっき気づいたんじゃないのか?これはこのまま皮をなめして防具の材料にする」
「防具・・・・・ですか?」
武器については少し研究しているという話を聞いたが、防具まで研究しているとは驚きだ。そういえば、Z組の中でもティアのような人種は普通にいる。というよりも、初期メンバーは俺を除いて全員武具に愛着があったりする。
アルバートは鎧を、メイリオは面皰、スクイはナックルダスターで、リーズは杖を好む。そしてティアは刃物といった感じで全員何かしら自分の身に着けるものには名前を付けたりだとか、手入れを惜しまなかったりだとか、可愛げのない一面を皆持つ。
ジーナの奴は・・・・・・領民とかパパだのママだのと言っており、弓はただ親からのプレゼントなのだとか。アイツと同類と考えるのは非常に不愉快な気持ちになるが、ジーナもまた武器に愛着のない奴なのだ。
「ああ、自分の作った防具を身に纏うのは気分の高揚感が違う」
ティアの言っていることが理解できるのは装備を愛でる奴だけだろう、俺にはサッパリ分からん。
「へ、へぇ~。僕にはサッパリ分かりません」
「クックック、後々お前も分かる時がくる」
「ま、そうだと良いですね――――――そういえば植物の収集状況はどうですか?」
ティアが亜空間を開けると毒草やら毒を持つ植物などがゴロゴロと出てくる、中には毒蛇のような毒をもった動物などの死骸など、豊作だったようだ。勿論普通に薬になるような薬草から高級な物まで多くあったが、割合的には毒草が殆どを占めている。
「珍しいものと言えば、コレだろう。食べた後に感じた事の無い嫌悪感を覚えた」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■ダイヤモンド☆ユーフォルビア 特異級
効果:目眩の後吐き気が起こりその後体がダイアモンドに変わる
説明:とても限られた地域にしか咲かない猛毒のユーフォルビア。食べたその後から次々と症状が起こり初め最終的に体が全てダイアモンドになってしまう。吐き気からダイアモンドに変わるまでに体内での何度か魔力反応が確認されている。ダイアモンド☆ユーフォルビアによって村人数百人がダイアモンドとなって発見されて以来、危険な植物として伝説となっている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・説明書きが長いですね」
「アスクそういえば鑑定は使って探していたのか?」
「僕は余り鑑定が得意な方じゃなくて・・・連続使用は余りしたことが無いんです」
連続して鑑定をしていると、目が乾燥して涙が出る。瞬きも出来ないので、しなくていいなら使いたくないスキルだ。先ほどのような長い文章も出来る事なら鑑定で見るような事を避けたい、あのような文字列を見ていると花粉症のように目から涙が溢れて来る。
「そろそろ暗くなってきたな」
辺りは日が沈み始め、赤々と夕日が解体された縁獅子と俺達を照らす。
「帰りますか」
「だな」
宿に帰ると、ジーナ達が紙にひたすら文字を書き進めているのが見えた。いや、周りを見てみると、ジーナ達だけではなく、メイリオやアルバート、新クラスメートにSSS上がりの生徒まで何やら必死になってやっている。
「マサトラ先生コレはどういう?」
「レポートですよ。アスク君達は大丈夫ですか?明日には帰る予定になっていますが」
「先生、どれくらいを目安に皆書いてるんだ?」
「いや~先生に聞かれてもよく分かりません。ジーナさん達が一番進んでいるようなので彼女達に聞いてみてはどうでしょうか?」
「そうか、分かった」
確かに馬鹿真面目なジーナのグループならレポートも進んでいる事だろう。さてさて、どれくらいのモノが出来ているのやら。
「ジーナ、少し見せて貰っていいか?俺達どうやらレポート課題をまだ終えていないらしくてな」
「ええ、良いですわよ?・・・・あ、その代わりと言っては何ですか。ティア様、少し私のお願いを聞いて頂けますでしょうか」
「ん?なんだ、俺が出来る事なら手伝おう」
「そこで、私達のレポートを見てほくそ笑んでいる人に一言いわせていただきたくて」
「ん・・・?アスクにか?それぐらいなら別に俺に言わなくても・・・・・っておい、アスク何してるんだ?」
「フフ・・・・いえ、少し可愛い感想文を見てお腹の腹筋を鍛えていました」
「このような態度で私非常に憤りを覚えていますの、つまるところ、私が何を言ったとしてもアスクから私を守っていただきたく思います」
「それで課題について教えて貰えるなら安いものだ。おいアスク、ジーナがお前に言いたい事があるそうだ」
ジーナが俺に言いたいこととは一体何だろうか、さっぱり検討がつかない。ん?いや、八歳か。なるほど、そういう事もあり得るかも知れないな。いや~罪作りな大人で本当に悪い奴だなぁ。
「ジーナがですか?あー何となく検討はつきましたよ。アレですね、僕に惚れたんですね」
「は?なに妄想してるんですの?」
ガキン!
瞬間重なる重たい金属音。ぶつかったのは俺の大剣とティアの二つの剣。
「ティア、そこの猿をばらすので先ほどのアンプタという魔剣を貸して貰って良いでしょうか」
「いいわけないだろ、馬鹿野郎。いい加減にしないとマサトラ先生が止めに入るぞ」
「やっても良いですが、重症は覚悟して下さいね。二人相手に僕も手加減は出来ませんから」
「良いから頭を冷やせ!」
「どおおおおおおおおおおおおおおしたんですかあああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
割り込んで入って来たのはメイリオ、ウチのクラスの仲裁役だ。余りに俺とティアの喧嘩に介入してくるので、いつの間にかメイリオの存在を、俺は喧嘩を止める役のように感じている。
「・・・・ッチ・・・・・いえ、別に大したことはありません」
ティアが俺が剣を収めた動作を確認すると、剣をしまう。
「わ、私は貴方の間違いを正しただけですわ」
「で!ジーナは僕に何が言いたいんですか?」
「わ、私はあ、貴方のその舐めた態度を正して頂きたくおも、おも、おもおも」
「アスク、歯を剥き出しにして笑うな。威嚇しているのと変わらない」
「アスクさん、どーどーです」
「メイリオ、すいません。僕はもう大丈夫なのであそこで心配そうに見ているアルバートの元に戻って良いですよ」
メイリオは戻り、俺は今の状況を考えながらため息を吐く。現在の状況、ウザい猿がティアを盾にしてなんかほざいている・・・・・・・いやそれでは問題の解決にならない、優先順位を考え客観的になれ・・・・・それが俺には出来る・・・・・そうだ・・・・・出来る。
「ジーナ、僕の舐めた態度が気に入らなかったのなら謝ります。すいませんでした、ですからそのかんそうぶ・・・・レポートをティアに見せて貰ってもよろしいでしょうか」
「ティア様と言わず、アスク様も見られても良くってよ」
「はい、ありがとうございます」
マサトラ先生は、いち早く何かに気がついたらしい。
「先生ちょっと避難しますね~」
その後もなぜか一人、また一人とクラスメイトが宿から逃げて行く。一体どうしたと言うのだろう、今の俺はペンキようなもので心を綺麗に塗りつぶして先ほどよりも比較的に安定している状態だというのに。
「アルバートおおおおおおおおおおおおおもう駄目だあああああああ!!!!!!!!!!!!!この国からにげるぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」
皆どうしたんだ、いったい。僕の顔に何かついているのか?
「ジーナ、すまんが盾になれるのはこれまでだ。後は自分でどうにかしてくれ、じゃ!お休み!」
ティアまで一体どうしたんだ、俺の顔をそんな化け物を見たような目で見て。
「え、ちょっとティア様!?わたくしはどうすれば・・・・アレ?スクイさん、リーズさん?他の皆も!宿の管理人さんもどこに行かれたの?!?!?」
取りあえずは・・・・・そうだな。うん、場所を変えよう。
「ジーナ、お前はいつからここがさっきの場所と勘違いしていた?」
「へ?」
「ここはさっきの宿から俺の魔力で抉られた空間だ。空気は元々あった量だけしかないから少しすれば息苦しくなってくるだろうな」
ジーナはようやくここがどこで、自分がどういう状況なのかやっと把握したらしい。身振り手振りで謝礼の意を示そうとしている。
我ながら初めからこうしておけばよかった。宿屋に迷惑になるだろうという考えは捨てた、今はこの抉りぬいた空間にこの猿と俺のみ。逃げられないように、この空間内は魔法に高い体制を持たせている。なので当然、今もこうして必死に猿が魔法や弓矢をぶつけたとしても無駄なあがきだ。
「なあジーナ、俺もお前に言いたいことが沢山あります」
「あ、あ、、ああ、アスク、一人称と語尾が混ぜ混ぜですわよ。か、可愛いですわぁ」
「跪け!」
「ひゃう・・・」
「お前は俺を怒らせた。今からお前は空気が無くなるまで実験動物だ、光栄に思え」
「い、嫌ですわ!た、助けて!!!誰か!!!!!誰かあああああああああああああああ!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
空間の捻じれが元に戻ると、そこには心配していたクラスメイトと本を読みながら熟睡しているマサトラ先生の姿があった。
「じ、ジーナちゃん。大丈夫?」
「何かあったの?酷い事するよね・・・・・公爵様」
「え?そんな事ありませんわ!アスクは完璧ですもの」
「え?」
「ど、どういう事!?いつもあんなに言ってたのに!」
「ジーナ、本当ですか?」
「申し訳ございません、少し先ほどの事で記憶が混乱してまして」
「そうですか・・・・・・・・記憶障害アリと・・・・」
「おい、アスク、お前ジーナに何をしたんだ」
ティアが俺の鎧を掴んで問いただす。何やら怒っているようだ、何故だろうか?
「何をしたとは?」
「コチラが聞いているのだ、答えろ」
「別に大したことはしていませんよ」
ジーナが俺とティアの間に割って入り、ティアに説得をする。
「ティア様、アスクは私に何もしていませんわ!むしろ今までなぜ何もしなかったのか不思議なぐらいです」
「そ、そうか」
「ジーナ、ティアにアレを」
「はい!ティア様、私達の稚拙なレポートであればどうかご拝見下さい」
「な、なんか違う・・・・」
「やっぱり公爵様に何かされたんだわ・・・・・うぅ、可哀想なジーナ」
「なーにいってるんですの。私は私、アスクはアスクですわ。オホホホホ」
「アスクくん、ジーナを元に戻して!」
「お願い公爵様!」
「スクイ、リーズ・・・・・・それがジーナの為になるとは僕は決して思いませんが、それでも自分達のエゴで彼女を元に戻しますか?」
「アスクくんの言ってることよくわかんないよ!ジーナちゃんはジーナちゃんだってジーナちゃんも言ってるじゃん!早く!何か違うんだもん!」
「このままでもいいけどつっかえ残しとくのってちょっと嫌なんだ、お願いだよ公爵様」
ジーナには予め渡しておいた小瓶に入った液体を服用させる。初めはその薬は嫌だと拒否をしていたジーナもスクイとジーナによって半ば強引に服用する形となる。
「うぐ・・・・んぐ・・・・うぐ・・・・」
「ジーナちゃんどう?」
「大丈夫ジーナ?」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛なんで!なんでわたしにこれをのませたのよ!!!!イヤ、おもいだしたくない!いや、いやよ!いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいいやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「せっかく記憶の改ざんをしておげておいたのに・・・・・・わざわざ飲ませるなんて酷な事をします・・・・・全く人のやる事とは思えません」
ジーナは膝をつき、頭を抱えて嘔吐する。隣で体をさするスクイとリーズ、異様な光景に戸惑う周囲と短い眠りから覚めて、現状に驚きを隠せないマサトラ先生。
「ど、どうしましたかジーナさん!」
「マサトラ先生!アスクくんの言った通りにジーナに薬を飲ませたらこうなっちゃって!」
「アスク!また貴方ですか!」
「または無いでしょう、僕はこれが初めてです」
「それにしてもコレは病気ではありませんね・・・・・呪いの類でもない。一体何をしたらこのようになるのか・・・・アスクくん!何をしたんですか!」
「記憶を蘇らせたんですよ。彼女たちはジーナの隠されてあった記憶を」
「隠された記憶を取り戻す薬・・・・ですか。それはジーナさんの持っているこの小瓶ですか?」
その小瓶をジーナの震える手から取りあげると、ソレを舐めるマサトラ先生。それは別に脳に刺激を与えるだけの薬だから普通の人が舐めても痛みとしか感じない・・・・・?
マサトラ先生の様子がおかしい、何か大事な事を思い出したような顔だ。だが、ソレはともかくジーナがこれ程までに先ほどの事をトラウマに感じているとは驚きである。
「アスクくん、ジーナに一体何をしたの?」
「猿の真似をしてもらいました」
「お猿さん?」
「ええ、お猿さんです。彼女にはよほど屈辱的だったようですねぇ」
「嘘だよ!ジーナちゃんがお猿さんの真似でこんなになるはずないもん!」
「いや、まってスクイ、プライドの高いジーナの事だ。それもあり得る・・・・」
「・・・・・・ジーナちゃん、嫌だったんだね・・・・」
この後、クラス会議の結果、俺にはやりすぎという事から罰として校舎の掃除一年が言い渡された。
(逆にコレで済んだことが奇跡だな)




