ムズィーク王国編 その8 吸血というスキルの本質
マサトラ先生のおかげで、エルフの宿を横一列で借りる事が出来た俺達は林間合宿一日目を終えたのだった。
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成果
アスク&ティアチーム(初期メンバー男子陣) :バイコーン二匹を晩餐ように提出 :群生地の情報を入手 :魔物二体
メイリオ&アルバート(初期メンバー男子陣) :群生地の情報を入手 :植物採集 :植物とブツブツ交換により晩餐の食材を提出 :レポート三枚
ジーナ&スクイ&リーズ(初期メンバー女子陣)
:群生地の情報入手 :植物採集 :レポート十五枚 :植物の売買により通貨入手 :勝手に工芸品などの購入
レオパルド&マガフ&ショット(新クラスメイト男子陣)
:群生地の情報入手 :植物採集 :レポート二枚半
ダリア&ミモザ&ベロニカ(新クラスメイド女子陣)
:群生地の情報入手 :植物採集 :レポート五枚 :ジーナ&スクイ&リーズと共に植物の売買 :お金はキッチリと保管してある
その他(SSSに上がりたて陣)
:群生地の情報入手 :植物採集の計画をたてる
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次の日、二人となった事で作業速度が格段に上がった俺達は午前中の一時間ほどで、三十種類ほどキノコや植物を資料を見ながらとった――――――粗方取り終えた後に、俺達は・・・・未開拓地に足を踏み入れた。それから話し合いの結果、ここからはお互い勝負形式にしようという考えから二手に分かれる事に。
「じゃあ行くぞ」
「はい。量と種類と品質の良さで勝負です」
そう言い残すとお互い走り、直ぐにティアは昏い森の中へと姿を消していった。俺も来た道を忘れないように自分の血を木に付けて走って行く。いざという時はワープを使えば良いが、そこまで帰りたいといった時にワープを使って木にめり込むというのはよくある事だ。
しかし血を道しるべに使うというのは良くなかったかも知れない・・・・・。
「キョッ!キョッ!キョッ!キョロロロロロロロ!!!」
血の臭いに誘われて集団で道案内をしてくれるという、怪鳥御一行。しかし道案内は既に自分の第六感を雇っているので必要ない。早々に元の昏い森の中に帰って貰うとしよう。
「不味そうな見た目だなぁ!!トッとと土の中に帰れよ!!」
「キョロロロロロロロッロロロロ・・・・・・」
自然には無害な、動物だけに危害を加える毒によって仕留める。この毒の最悪の欠点は使った対象者に痕跡が残るという事。
俺の毒は基本的にバレない、簡単、直ぐ効果を目標に作られているので、ハッキリ言ってコレは失敗作だ。食べたりしたらその毒で他の動物も死ぬ事になる、そんな事はあってはならない。
いくら正当防衛でも放置は出来ないのでしっかりと持ち帰る、後で研究材料にした後に火葬するのだ。怪鳥の奥には、洞窟があった。
「こんな所にも洞窟が・・・・この中にこの一帯を仕切る主が住むのか。・・・好都合だな」
まず洞窟に、水魔法をぶち込む。洞窟は一つの空間のようになって他の地面との干渉を受けないので、地震などで形が変わるという事はない。
つまりこの洞窟に何をした所で他の所に害は全く無いのだ。水を流し込んでいると、水が押し戻って来る。かかった時間と魔力の感覚でどれくらいかというのは少し分かる。
勿論その水は洞窟を密閉してなおも流し続ける。キッチリ洞窟に水が満タンに入った所で後は数分待つ。
~約十分後~
魔法で創造した水は、亜空間を使って全て入れておく。この作った水も使い道を考えてある。とりあえず今は、この呼吸をする生物は全て溺死したと仮定して次の行動に移る。それで死なない魔物だった場合だ、つまり呼吸をしない魔物。
ここなら植物が魔物になっているという事もあるだろうから、次にやるのは枯葉剤の投入だ、作り方は知っていた。後は風魔法で流すようにして内部にまくと、途中悲鳴にも似た声がきこえ効果覿面の様子。
最後に洞窟内部の湿度を水魔法で高めて・・・・火魔法で蒸し焼きに。密閉はその時にはせず、じっくりと待つ、密閉された扉に何かがぶつかる音が心地いい。その音も時間がたつにつれて静かになっていく。最後は自分に風魔法を纏って、ようやくダンジョンに入る。
中には蒸し焼きになったダンゴムシやら見たくもない例の台所の敵の蒸し焼き、木に化けた魔物もいたようだ。それも今となってはどれも枯葉剤や蒸し焼きになったようだ、素材としては全然使えるので全て回収していく。
最下層のボスモンスターは、なんと巨大なアリ。アリという生物を大きくするというのはソレだけで危険すぎると思う。しかもそれに加えて羽が六枚つき、空中を飛んだようだ。
それに部屋の各所には卵のようなモノがあり、ソレを割ると中からアリが飛び出すというギミックもあったようだ・・・。ようだようだと全て過去形なのが少し洞窟探検をしなかった事を後悔させる。
「戦闘経験値もこんなことでは貯まる分けがない・・・・か」
サクサクと、作業を進め回収していく。ボスのアリの顎は何かの武器にも使えそうでもあるし、卵は研究材料に出来る。専門外だが、こういった研究も今の俺には金があるので出来そうだ。そう思うと金儲けをもう少し考えた方が良いかも知れない、研究所をいくつも立てるというのは夢がある。
あらかた回収すると、後は洞窟の財宝と洞窟内にあった鉱石を根こそぎ手に入れて洞窟を後にした。
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ティアが植物を採集しているであろう場所へ行くと、そこには普通の攻撃が効かず、かと言って自慢の牙が通らない頑丈で巨大な虎と格闘しているティアが・・・と、こっちに気付いたようだ血走った眼で必死に手招きをしている。
ティアも不死のスキルがあるとはいえ初めは元通りに戻っていく自分の体が怖かったらしい、もしも自分を逃がしてくれないような相手がいるのならば、死ねないのだから死ぬほどの苦痛を味わいながらなを生き続けるという拷問を受けなければいけないからだそうだ。
「ティア~手をかしましょうか~」
「は、早く助けろ!!」
水風船の様にぐっちゃぐっちゃと再生しては潰され再生しては潰されといった感じか。非常に見ていて不愉快な光景だ。
「鑑定してからです、対策も練らないと」
「そんな事は後にしろ!いや、してくれ!」
「えぇ~と、鑑定鑑定」
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ステータス
称号:森の暴れ者
種:縁獅子
レベル:100
HP:7900
MP:100
攻撃力:70000
防御力:36000
素早さ:50000
賢さ:2000
器用:3000
幸運:10
通常スキル
:双牙術10 ・音脚9
エクストラスキル
:百獣の王5
スキル説明
:音脚 スキルを使う事で一瞬だけ足の速度が音速を超える。レベルを上げる事に速度が増す。身体的な苦痛と多くの魔力を使う
:百獣の王 名前に獅子を持つ魔物に多いスキル。視覚的に相手に強く見せる
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なるほど・・・あの大きく見えている虎は通常サイズよりもかなり大きさを偽っているのか。そしてティアはそれに気付かず剣をあんなにブンブン振り回していると・・・・。近づく事で発動するスキルならば遠くから撃ち殺せば良いじゃないか。
神器、レクレール・メルダースを召喚すると同時に亜空間から何か打つようなものはないか探す。別に弾は何でもいいが、なるべく撃った結果が分かりやすい物が好ましい。
「ん~・・・そうだなぁ・・・あぁ、そうです。どうせならティアに倒してもらいましょう」
手から取り出したのは、以前に天使門というダンジョンにティアと行った時に戦った、正と義という二体の天使竜から手に入れた血だ。
前はあの血を飲むと竜の姿を一部取り入れたので、血液を体内に摂取する事が出来ればその能力の一部を手に入れる事が出来るのが吸血の力なのだろう。なら俺のする事は簡単だ、ティアに血液のスペシャルブレンドを届けて上げればいい。
「新鮮な天使竜の血、少し劣化が見られるが近場のボスの大きなアリの血、そして僕の血を。いきます!混ぜたら固まるから順番に!」
単発で、三発。狙い通りティアの口の中に全て入る。
「ティアゼパル進化あああああああ!エンジェルゼパルモン!」
「俺の体に何をしやがったあああああああ!!!!」
血液を取り込んだティアはもはや誰だお前状態にある。見た目から入っていく感じは良いと思う、というか全ての血液を飲んだ姿がそのまま出ただけなのだが・・・・。
「説明しましょう、エンジェルゼパルモンとは。ドラゴンの翼と天使の翼、それに吸血鬼のコウモリの羽の六枚三対が背中にあり、牙や爪は必要性が無さそうなほど太く硬い!そしてそして極めつけは僕の血によって男前になり、筋肉も天使竜と俺の血によって胸板も厚い!素晴らしい結果だ!君は最高の友(実験動物)だ!後は押さえつけれているその縁獅子を倒せば・・・」
「もう倒したぞ」
「最高です!良いですね、力も申し分ない。レベルはさほど変わりませんが、種族特性を受け継ぐという能力に引いてでいるのが吸血の最も良い点ですね!」
「落ち着けアスク、確かに今の俺なら負ける気はしないが・・・・」
プシューと、音が鳴りそうなほど胸板も身長も縮んでいくティア。翼も綺麗さっぱり消滅し、俺の肩を叩いていたティアの手はもう俺の肩に届かない。
「アスク、もう一度アレを・・・・」
「さぁーとりあえず成果をお互い見せあいましょう」
「お、おい」
「ティア・・・なにか勘違いしていませんか。僕はティアを助けようと思ってオークションに出せば白金貨にはなるであろう高級な血を提供したんですよ?」
「う・・・・じゃあ金を出す、材料と方法を教えてくれ」
「三王貨で手を打ちましょう。研究所が丁度数個欲しかったんですよ」
「三王貨・・・!?だと・・・いやしかし国の長である俺の為にも・・・」
「真面目に考えるのは違うでしょう・・・。方法は簡単です、混ぜずに血を数種類飲むだけ」
「それだとただのキメラだ、一度間違って城の兵士に殺されそうになった」
やっぱりそういう好奇心って吸血鬼なら持つものなのか。しかも対象は動物だから・・・なるほど、確かに化け物が出来るワケだ。
「コツはベースとなる血液を多めにすることですね。今回の場合だと、大型のアリの血を一として、天使竜の血は四、僕の血は五という割合だったので。今回は偶然にも成功したので、後はこれに微調整を加えれば良いかと。ちなみに全て均等に飲むと顎が凶器で六足歩行の翼の生えた男前になるというのが、僕の考えなので」
想像したのか、ティアの顔色が悪くなる。微調整で六足歩行か二足歩行かの分かれ道なのだ、吸血鬼というのは繊細な魔族だ。というか今の話しを軍事転用されたらウチの国も困るな・・・。
「ですがティア、この方法を軍事転用しようなんて考えないで下さいね」
「言った後にそれをいうか?」
「ティアは分かってくれると思ったから僕は話したんです」
「公には出さないから心配するな、あくまで極秘裏にさせて貰う。この技術は危険すぎるからな、クックックック」
ティアの一人で黒い笑みを見て、やはり教えるべきでは無かったかと今更ながら後悔し始めた。
次の話は薬草の名前と少し話が進む予定・・・




