ムズィーク王国編 その6 たかが数センチ、されど数センチ
なぜ俺達は植物の情報を聞きに来ただけなのに、ここまで手厚く持てなしを受けているのだろうか・・・・。
「あの、僕達はこの周囲に生えている薬草類の採集場所や、採集のルールなどを聞けたらソレだけで・・」
「なに言ってんの、おばちゃんの話し相手ってのはどんな事よりも最優先されなきゃいけないのよ~?それにさあ、ホラ、ウチの名産品を知っておくことも大事なんじゃないか?」
適当な言葉で俺達を貴女の暇つぶしに巻き込まないでほしい。と、言いたい所だが、俺のお隣で茶菓子に目が釘付けになっている少年を見るに、そうも言えない。
「確かにエルフの国と貿易をするとなれば、コレは嬉しいな・・・」
完全にお菓子で釣られる子供と、お菓子で釣るおばあちゃんの図である。
「それで話というのは?」
「いやあね、ちょっと君を見ていて思い出したのよ。陰の建国者ともいえる彼の勇士を」
「エルフ族の英雄譚か?・・・ふむ、興味深いな・・・・茶菓子のおかわり」
お前が興味を示しているのは英雄譚ではなく目の前の茶菓子だろうが。甘いのは分かるがそうバクバク食べるものでもないぞ・・・。
「エルフの英雄譚・・・・とは違う、恐らくあれは人間なんだよ」
「何故人間と断定できない?人間ならアスクと同じような耳の形をしているだろう、魔族であればホラ、このように少し先が細い。エルフなら耳の位置が横に長いだろう?」
「いや、しかし彼の話していた言葉はエルフ語でね~、それもかなり流暢に話せるようだった。しかも使う技の中には竜のモノや魔族のモノ、それにこの国周辺に出て来る魔物のスキルまで持っていたのさ。アレは一度見たら忘れようがないからねぇ~ほかのエルフにも強く印象に残っているだろうさ」
「だから恐らく人間か・・・・確かにそんな人間がいたなら既にSSSランクになって顔が割れているはずだな。異種族の技を複数持つ冒険者か・・・・・・吸血鬼はステータスは吸収できたとしても技やスキルを奪うような力はない。そんなスキルを持っているのだとすれば恐らくユニークスキルの類だな」
「初め私もソレを考えた、しっかしねぇ~それじゃあ汎用性が高すぎるスキルって事になっちまうんだよ。例えばさあ、魔力を極限まで抑えて一MPで大きな現象を起こせるって言ったら君たちはどう思う?」
「不可能でしょう」
「だな」
「魔力で魔法を使用するなら間違いなく大きな現象にはそれなりの魔力が必要になって来ます。アルゴンさんの話しが本当ならそれは法則の書き換えになります」
「それに技を複数使えてソレだけ相手を圧倒出来るというのに、魔法に手を出す理由が分からんぞ。・・・モグモグ・・・・おかわり」
次々と和菓子が持って来られる。しかも全て違う種類で、中には芋羊羹のようなモノまであった。・・・・俺もそれとなくおかわりをしておくとするか。
「その男は地面を撫でながらこう言ったのさ、良い具合だと。それで小さな魔法陣から小さな炎が出たかと思えば当たり一面大炎上さ。しかもその魔法直ぐに消えないのに、まるで操られているみたいに木や近くにいた私達に燃え移らないのよ。正直あの時は目を疑ったわよ、オホホホホ」
「一MPで炎の塊を操作って・・・・・なんの冗談ですか。ハハハ」
「人間族どころか魔力の操作にたけた魔族や妖精族でもそれは不可能だ。本当にそんな事をしたのか?」
「えぇ、他にも勝手に敵が転んだり失神したりとにかく彼のスキルの汎用性は異常の一言に尽きるわ」
「その人の名前は?」
「確か・・・・イザヴァルなんとかッシュって名前よ」
その名前を聞いて全ての現象に納得がいった、伯父なら出来るのだろう。クレウスと話していると良く伯父の自慢話を聞く、、その中に海洋生物の軍団を殲滅しただの、海を割っただのと言ったそんなふざけた話を聞いた事がある。
「あぁ、やっぱり何でもアリなんだなぁ、ハハハ・・・・ハハハ・・・・ハハハハハ」
「どうしたアスク、何所か遠い所を見ているようだぞ。それにイザヴァルという名前、確かお前の伯父さん・・・・」
「ほお、よしよし、では次にあった時にこう伝えてくれ、貴様をいつでも待っていると。私達の人間を手厚く向かい入れる風習はその時に出来たようなものだからねぇ」
「分かりました、会う事があれば伝えておきます」
「アルゴンと言ったな、茶菓子はとてもうまかった。代えの茶菓子もどうやら底をついた様なので、そろそろ薬草のある場所を教えてもらおうか」
コイツ全部食べやがったのか!?
「まあまあ、ウチの茶菓子が気に入って貰えてよかったわ。この研究室には周囲の薬草や魔物についての資料があるから欲しいものがあったら階段を上ってすぐの所にいるピンクのフリフリの子に渡しなさい。直ぐに書き写してくれるから」
「ありがとうございます」
「うむ、良い働きだ」
「ありがとうございます、小さな王様」
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~アスク達が研究室を離れた後~
「所長、あれ途中から完全に孫見るばあさんだったぜ」
「なぁ、ははは。ダージリンティーをレポートにまき散らす所だったぜ」
「こら、お前達!!!なにくっちゃべってんだい!?口じゃなくて手を動かしな!!!」
『は~い』
「なんだその返事は!!!!!!」
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「小さな王様だってさ」
「特例で茶菓子を献上した時のみ許可する」
「・・・・小さいって所は受け入れてるんだな」
ボソッっと俺が言ったのが悪かったのかその言葉に反射するかのように飛んでくる拳。それを避けるとそれを知っていたかのようにティアは口で俺の腹に噛みつく。その時間わずか三秒、腹に食い込む牙は麻酔の効果を持っているのかさほど痛くはない。血が出ている間隔もないので、蚊のようなものだろうか。
喉を鳴らして、血を飲んだティアの表情からは少し赤みが増し、耳も一時的に人間のようになっている。
とどういう事かティアの身長がほんの数センチほど伸びたような気がする。それに完全に中性から男よりの顔だちになった。細身の体は筋肉が薄っすらと輪郭作りをするほど引き締まり分厚くなる。
気のせいかティアの顔が怒りの表情顔から一転、一筋の希望を見つけたかのような顔に変わり、そして欲望に従うかのような猛獣の顔に変わる。コイツもしやよからぬ事を考えてはいないだろうか。
「アスク、お前の血・・・・」
「次吸血しようとしたら僕も容赦はしませんよ。再生にも体力がいる事は分かっているんです」
「お前には分からんな、この大いなる数センチが、厚底に頼らない数センチが!!」
駄目だコイツ、もう何言っても血を飲みほすつもりだ。
「しばらく眠っていて下さいティア!!」
吹き矢で飛ばした睡眠作用の入った毒を塗りたくった矢をティアの眉間に命中させる。魔物に使用する用の少しばかり強い薬を打ってしまったが、死にはしないだろう。
「フハハハハハ、俺に毒は通用せんぞ?」
嘲笑うかのようなティア、理解の追いつかない俺。二度目の吸血を許した所で、頭が冷え、ようやくその正体を把握した。いや、前から分かっていたとしても理解する事に抵抗があっただけだが。
まさかとは思っていたがやはり存在していたようだ、たつみが神によって与えられたスキルなら他のオリジナルのそのスキルを持っている奴がいてもおかしくは無い。
「毒無効・・・・!?」
「御名答だ、よくわかったな。今まで隠してたのはお前が毒を使う奴だと知っていたからだ。だが!その秘密も今日でお終いだ!さあ、慈善事業と思って哀れな吸血鬼に血を提供しろ!」
目は充血し、燃えるような赤い瞳は俺の首筋を狙っている。だがしかし、フラフラな状態でそれをされると流石に持たないのでね、献血はまた取引でという事で。
「まさかこんな身近に僕の天敵が潜んでいたなんてね・・・・・今知れて本当に幸いでしたよ!!」
毒で安全に眠らしたかったがこうするしかなかった、目の前に転がる七つに分かれたティアの体をそれぞれ作った箱に封印し、再生を封じる。箱の中の肉体が元に戻ろうと箱と箱がぶつかる音でうるさいが、それも亜空間に入れてしまえば静かになる。
「さて、薬草採集薬草採集っと・・・」
俺はティアの事は忘れて薬草採集に勤しむ事にした。
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ムズィーク王国から北へ、数キロ離れた場所にそれらはいるらしい、地図には危険とその下に毒マークの付いた文字がある。これは・・・・行くしかないだろう。
「これが地図に知るされた場所ですか」
俺が来た先には大きなキノコを生やしたキラキラと夜でも目立つ綺麗な黄緑色をしたキリンのような魔物がおり、こちらの様子はまだ気づいていないようで、他の魔物との戦闘をしているようだ。二匹ともとりあえず鑑定だな。
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ステータス
称号:森の支配者
種:毒麒麟
レベル:140
HP:100000
MP:10000
攻撃力:50000
防御力:39000
素早さ:12000
賢さ:4000
器用:3
幸運:1
通常スキル
・毒の胞子1 ・首技5
エクストラスキル
・毒霧
スキル説明
首技:首を操る事によって様々な攻撃をする。レベルが上がるごとに首の自由度が上がる
ステータス
称号:森の侵略者
種:ヨイトリス
レベル:143
HP:10000
MP:5000
攻撃力:25000
防御力:13000
素早さ:4000
賢さ:6000
器用:300
幸運:1
通常スキル
・石化ブレス8
エクストラスキル
・石化強化
スキル説明
石化ブレス:相手を石化させるブレスを放つ、スキル取得と同時にステータス低下。レベルが上がるとともに相手の石化速度が上がる。
石化強化:スキルにある石化系スキルの成長速度を加速させる。石化スキルの強化。
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能力重視の魔物とステータス重視の魔物か、面白い、是非観戦させていただこう。




