ムズィーク王国 その4 光武様登場
「今なら少しだけ時間がとれるそうです」
(本当に二人が外の世界からの使者なのかの確認を怠るなと散々言われていたが、我らとしては客人は手厚く迎える事は風習になっている部分もあるし、爺様にもそうしろと言われてきたからなぁ・・・・・・確認をしろと言われても一体どうすればよいものやら・・・・・・最近即位した王も変人だし・・・・)
「疑り深いのは結構ですが、それを本人達の前で言うのはどうかと思いますよ?」
「す、すいません!口に出ていたようです。我々は先祖代々こういった隠し事が苦手でして・・・」
「良い事じゃないですか。それがこの国の反乱が起こらない理由の一つなんですね」
「ははは、そうかもしれませんね。では王のもとへとお連れさせていただきます」
「ティア様、異種族交友の件を何卒王によろしくお願いしますね」
「ああ、俺に任せれば異種族問題など造作もない」
しかし忘れてはならない事は、今回の俺達の目的は知らない植物を聞きに来ただけであり、外交をしに来たわけではないという事だ。そこの所しっかりとティアには覚えていてもらいたい。
「ティア、ここには外交では無くて情報収集に来た事を忘れないで下さいね」
「心配するな、それはそれ、これはこれだ」
・・・コイツ見た目は二年前と変わらないくせに中身だけはきっちり王になってるじゃないか。
城の中の同じような場所をぐるぐると迷路のように歩くと、謁見の間までついた。無駄に大きな扉を兵士が二人がかりで開けると、木製の大きな椅子が目に入る。そして次に黒い布に、黄金で四獣の装飾をした着物を着た、独特の大人の香りを漂わせる女性が目に入る。
流し目で俺達を交互に見る。すると何かを確信したようにうなずいた。
「お前さん達が外の世界から来たという、吸血鬼の王とそのお付きのモノか」
「ブラム王国の王をやっているティア・ゼパルだ」
「お初にお目にかかります、ミトレス王国公爵家長男、アスクレオス・ワイズバッシュと申します。御目にかかれて光栄です」
一応立場的に俺は、謙譲語の方が良いのだろうか?
「そうか、私の事は光武様とでも呼ぶと良い、ところで今日は私の短い休憩時間になにようや」
微笑む光武ちゃんの顔は大人になりきれていない女性を彷彿させるようで、五歳は若く見える。
「今日はエルフの国の王がどのような者か挨拶をしに来たというのがまず一つ、それとこの国周辺の植物について学校で調べてみることになってな、ここら一体に詳しいとすれば王の身近に一人はいると思ってやってきた。そう言った事に詳しいエルフを一人貸してもらえないだろうか」
「ティアちゃんは挨拶って言うてたけど身なりからしてあんたそれは流石に嘘やろ?」
そういいながらニヤニヤと笑いながらティアを物珍しい生き物を見るような目で見詰める光武ちゃん。何故だろうな、一切俺には目を合わせようとしないのは。これが王と公爵の違いとでもいうのだろうか。
「いや、挨拶をしに来たのはあながち嘘でもないぞ、俺はこの身なりで唐突に着た俺達を見てどんな表情をするかも見ていたしな、後ちゃんずけやめろ」
「ティアちゃん小さいのに立派に王様しとるんやねえ~お姉さん関心やわぁ、植物についてやったらそれ担当の変わった奴がおるから、そこのメゾちゃんに連れてってもらい。後ティアちゃん私のお婿さんになり。そうしたらエルフと吸血鬼はごっつう仲ようなるから」
先ほどティアが光武ちゃんを舐めるような発言をしたことに対しての光武ちゃんの煽りである。ティアはそれに気付いてか気付いていないのかその発言を少し不機嫌に思ったのか、神秘的な美白に青筋が立つ。
「おい、ちゃん付けは止めろって言ってるだろ。それに俺が婿だと?ふざけるな、お前が嫁に来い」
コイツらこんな会話してて恥ずかしくはないのだろうか・・・・・隣で聞いている俺は正直恥ずかしい。
「キャ~告白されてもうた~~~~しかもごっつうかわええショタに~~~~~昇天してまうでぇ~~」
「煩いぞ!もういい、メゾと言ったかお前」
「は、はい!?」
「早く連れて行け」
「は、はいな!」
「くぁわいいティアたんまたきってねぇ~」
「ふん!」
はははは、また空気だぜ俺!
光武様は一応関西弁を話す大人の女性というイメージで。




