表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
独学の毒薬で異世界無双  作者: ほふるんるん
ムズィーク王国編
80/185

ムズィーク王国編 その2 計画をたてよう

鐘の音と共に生徒は全員席に着き、マサトラ先生が出席を取り始める。出席を終えると、マサトラ先生は今日の予定などを話していくが、俺を含めた殆ど・・・・・・・と言っても初期メンバーは全員適当に話を聞き流し、新クラスメイト&SSSからきた生徒達が真面目にマサトラ先生の聞いている。



先生が夏休み明けからまた元気になったのは、俺達のような可愛げのない生徒ではなく、まだ環境になれない初々しい生徒達に教師の貫禄を見せつけるためだろう。


初期メンバーである俺達はマサトラ先生という人物をよく知っている。飯を食べに行った事もあれば狩りに行ったりなど、長く付き合えばそれだけその人物に詳しくなるのは自明の理と言えるだろう。


初めはマサトラ先生もレクリエーションのように考えていたのかも知れないが、俺達の代に限って先生泣かせの生徒が集まったような形となり、マサトラ先生を次第に本気にさせられるようになっていた。この間、と言っても新クラスメイトがまだ初々しいほんの一年前だが、山に狩りに行った事がある。



その時は・・・・・・・・本当に俺達は子供だったと思う。今も子供だが、先生を滝に叩き落としたりキャンプファイヤーを悪ふざけで魔人召喚の儀式に使ったりと・・・・・アレは楽しかったなぁ・・・。



その召喚された魔人を討伐するためにマサトラ先生が使った森の開けた場所、今思えばあの山に狩りに行った出来事が、この計画の一番の大元なのかもしれない。




「今日は学校の新しい行事になる予定の、林間合宿についての計画を皆さんで建てようと思います」


『林間合宿・・・・・・・?????』


Z組全員の頭にハテナマークを咲かせる。俺も聞いた事は前世であるが、ソレを行った事がない。知っている事と言えば名前と何をやるかぐらいだ。



「それではクラス代表のアスク君は前に出て司会進行を務めて下さい。資料は教卓の上に置いてあるので前から配って後ろまでいきわたるよう準備を」


俺がクラス代表というのは、暗黙の了解じゃないが、このミトレスで大きな権力を持っているワイズバッシュ家の俺がなる事が決定していた。


誰も初めからこんな面倒な仕事などやりたくはなかった、全員が偶々俺がいたからその責任を押し付けるような形を取ったに過ぎない。吸血鬼の王子、いや今は吸血鬼の王のティアや、爵位としてはそれこそ昔からある名家のジーナの所に押し付ける事も出来たのだ。


しかし二人はソレを知ってか、俺に決まりかけた時に、「アスク、お前に任せた」や、「貴方しか適任はおりませんわ、オーッホッホッホッホッホ」とか言って家の事情と言う事で帰りやがった。俺達にはそういった事は全くないわけでは無いので、引き留める事も出来ず、逃がしてしまったのだった。



「・・・・・はぁ。では今回の林間学習のテーマを決めていきたいと思いまーす」


するとクラスのあちらこちらから様々なテーマが出された。


「未開の地でとれる野菜の収穫なんかはどうだ?」


「趣味は自重してほしい所ですが、ティア君ならではの案ですね」


教卓の横に丸椅子を用意して座っているマサトラ先生がティアにサムズアップする。


確かに野菜の収穫祭と言うのは確かに誰でも出来る良い体験だ、魔物討伐などよりも危険も少ないし、なにより収穫できるのは野菜だけとは限らない。森には薬草や毒草も多く群生しているだろう、そう考えると今からでも少し楽しみになって来た。


「滝に打たれて修行なんてどうでしょうアスクさん!!!!!!」


「滝に打たれるのは別として、川などによって見るのも楽しそうですね。メイリオ君、そんな感じでお願いします」


マサトラ先生またも賛同の言葉と共にサムズアップ、彼の最近のマイブームだろうか?


「私は竜王の討伐を提案します」


「却下、僕の嫁候補ですので」


「流石にそれを学校行事として認める事は先生ちょっとできません」


ジーナの頭の中は、とても殺伐としていそうだ。普段他のメイリオやティアと話ている時だと普通なのに俺だけすっごい闇抱えてそうなキャラで話かけて来るのを止めていただきたい。その原因を作っている張本人だとしても威圧が凄いので遠慮してほしい。


「えっとえと、私は・・・皆でお花の絵を描きたい」


「皆で一つの本を作りましょう!」


「どうやったら校舎が壊れるか考えようぜ」


「クラス内で誰が最強か皆でトーナメントをしようじゃないか」


などなど、初期メンバーから始まり、色々と案が出ていく。最後に出て来た二つを言った生徒はちなみにマサトラ先生との個人面談が待っている。


「では皆さん、自分以外のこれならやっても良いと、思えるものに挙手を」


こうして何人かの意見が消え、最終的には未開の地での植物の採集とそれらをまとめた本にする事が決定された。


中には「どうして竜王討伐が誰も手が上がらないのよ!!」と激怒する者や、「校舎を破壊するのは誰もが夢見る事だろ!?」と熱演をする奴がいたが、そういう奴らには自作の精神安定剤を吹き矢で投与し、落ち着いてもらった。



「おいアスク、あの二人は大丈夫なのか?なんかあの二人の周りの空気だけこう・・・・ぽわぽわしてるぞ」


「心配しないでください、時間がたてば多分戻りますから」


「先生、アスクを」


「分かってます、アスク君。放課後職員室まで来なさい」


「ウープス!」


「誤魔化そうとしても無駄です、後は先生がしますからアスク君は席に座って下さい。ご苦労様でした」


席に俺が戻るのを確認すると、マサトラ先生が話を始めた。今回の目的地はどうやら以前いった山の狩りに近い場所にあるらしい。ミトレスから南に行った所にあるイザヴァル大陸の最南端の森、今だに魔物のレベルが奥に進むにつれて深くなり、冒険者でないと立ち寄らない場所だ。


山で狩りをした時は正規ルートを進まなかったが、今回はちゃんと冒険王の仲間によって切り開かれた道があるらしいので、その情報を入手する事からが課題らしい。



~次の日~


各自それぞれのルートから、その場所の特定をするために情報を模索し続け、それぞれのタイミングで探索に出かけて行った。


「アスク君とティア君はどうされたんですか」


「俺達は別に何もないぞ。ただここにいるだけだ」


ティアは最後まで何も言わないつもりのようだが、マサトラ先生は既に俺達がワープで近場まで行こうとしている事を察知したようだ。


「どうせ皆さん同じところに集合するなら早く着いた方がいいじゃないですか、ほら、早くワープワープ、アスク君の肩を借りますよ?」


「先生も俺と同じ口なのか」


「先生はワープ出来るでしょう・・・・?」


「いやぁ~先生はアレ、実は出来ないんですよ~。というか魔法自体余り得意な感じではありません。先生はどっちかと言うと武闘派なので」


そういって軽くジャブをするように見せるマサトラ先生。一言言わせてもらいたい、お前のような武闘派がいてたまるかと。


未だに先生のバトルスタイルについては不明な所が多いが、普通に詠唱せず魔法は発動しているし、詠唱しているように見せかけて実は普通に火薬のようなものを使っていたりと、俺がいうのもなんだが、小賢しい手をよく使う。


「先生がらくしたいという意図はよく生徒に伝わりましたよ、本当に抜け目ない」


「アスク君ほどではありません、あはははは」


コイツ教師の癖して生徒を煽るのか、良いだろう受けてやる。


「ワープの場所はどこにする」


・・・・ティアは切り替えが早いなぁ、既にマサトラ先生も同行するという事に何の違和感も覚えていない。これが王者の貫禄だとでもいうのだろうか・・・・あぁ、懐が広い。



しかしティアが思っているほどワープは万能魔法ではない。それはティアも分かっている事だろう、土の中や、壁の中と行った所には大きなへこみを作り、そこにワープをするのがセオリーであり、森だとコレは通用しない。


つまり木々は腹部や、頭部などに刺さったりするのだ。ワープ中は非常に不安定な為に、こういった事故を気おつけなければいけない。前に一度脇腹に喰らって実感した。


「僕は歩いて行きますよ?」


「ワープの方が速いし疲れない事が分かっていてわざわざ歩きか?うん・・・・・・・まあ良いだろう」


「先生はどうする?」


「どうせ私も特に他に心配するような生徒もいないので同行します」


「じゃあとりあえず森の手前まで・・・ワープ」


「歩くんじゃなかったのか?」


「はい、森の中をね」


「ハハハ!やはりこちらについて来て正解だったようですね」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


森についてから数時間ほど歩くと洞窟があり、その洞窟を進んだ先に目的地の国はあった。


「ここが・・・・・・例の国か」


「巨大な大樹・・・・どこかで見た事があると思えば、俺達の校舎に類似しているのか」


この国の大樹を模して金属によってつくられたのが、俺達の学び舎であるZ組とSSS組の校舎だろう。違うのは大きさと枝の伸び具合だろうか、横幅もかなり広く、枝の一つ一つがそこらへんに生えている木の三倍近くはある事に自然の凄さを体感する。


「コレはコレは・・・・大きく育った大樹ですね~。樹齢何万年と言った感じでしょうか」


ムズィーク王国について配られた資料に目を通すと、ここに住んでいるのはエルフ。それも純粋なエルフだけの血のエルフもいれば、混血のエルフもいるそうだ。


大きな巨木の上に生活する彼らは、提灯のような明かりを枝にかけて光源としているようだ。下からは数人しか見えないが、服装は着物・・・・の派生のように見える。なんかフリフリのレースのようなモノが見えたのはきっと目の錯覚か何かだろう。



蔓で出来た長い階段を上り、巨木の中腹当たりまで来ると二人の門番が此方に何か話しかけてくる。一人は中々筋肉質なエルフで、もう一人は華奢な体つきのエルフ。


文化が違うのだから当然二人の言葉が通じるはずもなく、スキルの獲得まで少しの間待っていると、ピロリンと懐かしの生まれた時に聞いた、何か言語を覚えた時にでる音が脳内でなる。すると門番の話す言葉がだんだんと理解出来るようになると今度は腹が立ってきた。


「このでかいやつ、俺らの言葉理解できてないんじゃないか?」


「後ろの奴らも理解できていない様だしきっとこいつら外からのお客さんだよ」


おお、失礼な事を言っていたんだね君たち。こちらがニコニコしているのを良い事にデカイやつ呼ばわりとは中々に癪に障る事を言ってくれるじゃないか。


「すいませんね、今理解出来るようになったもので」


「へ?」


「す、凄いよこの大きな人!僕らの言葉をこんなに速く理解しちゃった!」


ティアはハテナマークを浮かべてコチラを見ている。どうやら俺がエルフ語を喋れることに驚いているらしい。


「僕たちは学校の行事でここまで来ました。この国に宿はありますか?」


「あるぞ。客人は珍しいから観光もかねて楽しんでいってくれよ、ここは音楽の国ムズィークだ。どこに行っても音楽と共に生活する事になる。以前来た冒険者からは好評だったが、君たちにも合うといいな」


「アスク、この門番達と何を話しているんだ?」


背が小さいから俺を見上げて会話するティア、女性だったらコレでコロッと言ってしまうかも知れんな。


「彼らは僕達を歓迎すると言っています、それに音楽が町中で流れているから合うと良いねと」


「ならこう伝えてくれ、感謝すると」


「えー、エルフの門番さん。コチラの小さい友人から、感謝しますとの事です」


「ハハハハハ、良いのですよ。我々は森の民、森に歓迎された者達を歓迎するのは当たり前なのです。それとこれをお持ちください。この国の名所がかかれたモノになります」


そういい手渡されたのはパンフレットだった。・・・・・・パンフレット?何故そんなモノがここにある。異世界人がこの国に住んでいるのか?その辺りは少し警戒が必要そうだな。


「俺たちは今ここの門の前にいる、まずは少し進んだ所にある広場に行ってみると良い、俺たちは音楽が大好きだからいつもそこで誰かが演奏をしているはずだからな」


「ありがとうございます、後からも数人、人の子が来るので広場に来てくれと伝えて欲しいのですが」


「了解した、何かあったら近場の警備兵に伝えてくれ」


パンフレットといい、警備体制といい、たった一つの国だけで何も争わず、此処までの成長を可能にしたナニカ・・・・、誰の仕業だ?






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ