神様の転生部屋で その1
地震が起きてからの俺たちの仕事は忙しさを極めていた。
「あれはこっちでこれは・・・」
「眷属をもっと増やすことは出来ないんですか!?」
「それが出来てたらアスク君みたいなまだ人の子を雇ったりしないわよ!今は猫の手も借りたいくらい大変ってことぐらいわかるでしょう!?」
「リョウ様!!!一人過労で倒れた者が!」
「ほっときなさい!それよりも早く次の進路を決めてあげる事が私たちが彼らに出来る精一杯の冥福になるんだから」
「はっ、流石リョウ様でございます!」
「口を動かすよりも体を動かせなさい!ほらアスク君のとこの机の書類が溜まっているじゃない」
「仰せのままに!」
「リョウ、なんか一つ光っている書類があるんですけど」
「珍しいわね、それ記憶保持の転生者候補よ、私は忙しいから君が相手をしてきてくれる?」
「いいですけど、人間の僕がやっても良いんですか」
「神界では前例のない事だけど、まあ、アスク君なら何とかなるってことで。よろ~」
結果的に俺がやることになった転生者との面談だが、何をすればいいんだ?候補がいるという部屋に天使に案内してもらい、扉を開けるとそこには前に見た真っ白い部屋に一人の少女がポツンと椅子に座っていた。
「あの、ここは一体どこなんですか?お母さんとお父さんはどこに?」
あー懐かしいなー、そういえば俺もこんな感じで戸惑っていたっけ。書類には・・・ソフィアナか。
「初めまして、ソフィアナちゃん」
「お兄ちゃんどっかで見た事あるような」
「気のせいだと思うよ」
・・・・・・・そういえば俺色々と公の場で顔見られてたな。親父の隣にいつもいるから子供でも分かる子には分かるか。となれば別に気のせいでも何でもないか・・・・・・。
「ここはどこ?」
「覚えてない?」
「お母さんとお父さんと皆でごはんを食べててたらいきなり全部揺れ始めてそれで・・・」
「皆死んだんだよ」
「え?」
「だから、君も君のお母さんもお父さんもみーんな死んだ。瓦礫に埋もれてね」
「もう会えないの?」
「転生した場合は記憶も消えるから普通会えないね。けど天国や地獄に行ったら記憶は持ったままだからお話しぐらいは出来るかな?」
ソフィアナちゃんは椅子の上で涙を流しながら大声で泣いている。話が進まないので睡眠薬で眠らせる、いつかは泣き止んで眠ったかも知れないがコチラとしてはそんなに時間を作ってやれない。神とは無情なのだ。
「え~とこの子の親の書類は・・・これか、平凡な家の平凡な家族だな・・・特に何も無いから普通は記憶を消して転生させるんだけどなぁ」
数時間後、また思い出し泣きで泣くので今度は付き合う。もしかすれば泣き止んで話を聞いてもらえるかも知れないからだ。
何度か繰り返した後、一応泣いていても話は聞けるようにはなったので、説明を始める。他の世界に勇者として転生するか、それとも記憶も全て消して転生するか。
初めは理解できないようだったが、だんだんと理解出来るようになってきたらしい。目は以前のような宝石のような目ではなく、濁った・・・・・・・こういうのを死んだ魚の目の様だとでも言うのだろうか。
唯一の救いとしては、勇者の存在が思った以上に彼女の中で強かったことだ。子供だからか、嫌な事から嬉しい事に変わる切り替えの早さは大人以上で、直ぐに決断を決めた様だった。
「最後にこの勇者になるかならないのか聞いてもいいかな」
「やります、私が救います。救わせて下さい!」
勇者の適正には物分かりが良い事は前提条件だな。うんうん、変にひねくれていない所も勇者向けだ。
「じゃあ詳しい説明を始めるね」
「はい!」
ソフィアナちゃんは今後のお話しにも出る予定です




