神様の資料室で その1
次の朝、俺は残りの神界での仕事を終わらせるために、ワープで神殿の前まで来ていた。
神殿の前では天使達が仕事を片付ける為にばたばたとしており、俺の姿を見ると次々と倒れていく天使たちを抱えながら資料室へとやってくると、そこには徹夜したであろうリョウが死んだ魚のような目をしながらも書類をかたずけていた。
「リョウ、僕が後終わらしとくので、早く睡眠をとって下さい」
「でも片付けないと人が・・・」
何やらブツブツと何か言っているのを見てイライラした俺は手刀でリョウを気絶させた後、残りの天使やリョウの残した書類を全て片付け、目的の一つであった資料の閲覧室へと入った。
「神のいる世界ならばもっと面白い薬を見つける事が出来るはず・・・」
最近弟が出来たり筋トレばっかりで、まともに薬の情報収集が出来てなかったからな。神の世界にならば毒薬に関する書類は少ないかもしれないがそれを毒薬を作るうえでのヒントにでも出来れば上出来だな。
なるべく毒薬に関係のありそうな書類を探していると、資料室の一番奥に『アトレアの危険だった魔物ベスト100』といういかにも都合のいい資料が見つかった。
中には今現在は劣化しているか絶滅した危険な魔物が載っており、その中には勿論過去の英雄が倒したといわれる伝説上の魔物や災害を振りまいた魔物、はたまた疫病を流行らせた害虫なんかも載っていたりした。
その中でも俺を引き付けたのはピーシーと言われていた魔物だった、現在は既に勇者によって討伐されたらしいが、その前に二つの国を滅亡させるほどの強い毒性と感染力も持つ細菌を鱗粉としてまき散らしたらしい。
この魔物は捕食用に鱗粉を出し、感染した相手から出る独特の匂いを嗅ぎつけ捕食するようだが、二つの国が滅亡するほどの食欲・・・はっきり言ってZクラスレベルの魔物が人の土地に降りてきたぐらいにしか検討がつかない。運が悪かったんだな、魔物も人も。
ピーシーの続きには追記として英雄の名前が書かれていた。
追記:討伐者 英雄 ハルデンブルク ワイズバッシュ
自分の家名と英雄の名前が同じことに少し嬉しさを覚えながらも、ハルデンブルクという英雄について興味を持ち、調べてみるとどうやらこの英雄が俺の高祖父に当たる人みたいで、
そして彼の代から俺のワイズバッシュという家名は有名になったらしい・・・知らなかった。
実は英雄の一家だったワイズバッシュ家の事を少し誇りに思い、次の資料へと俺は手を伸ばした。




