神界でのお仕事 その2
「これは地獄で・・・これは転生だな」
徐々に仕事に慣れ初め、一日で100にん程対処できるようになったある日、書類の中に知っている人を見た。
「これって確かティアの父親の・・・まだ行先が決まって無かったのか」
それはかつて勇者がサタン様と勘違いした時に殺されたティアの父親の生涯の書類のようだ。ティア父であり、吸血鬼の王・・・そして歴代で最も吸血鬼らしからぬ吸血鬼。
彼が父親だったからこそ、ティアは人間に興味を持ち人間の学校に入った。結果でいえば、もしも彼の影響が無ければティアも勇者達に消されていただろう、次代の吸血鬼の王として。それを偶然ながらも阻止したのは、紛れもなく彼の功績によるものだろう。出来れば天国行きにしたい所だが。
「その魔族の男性知り合いだったの?私情はなるべく入れないようにね」
「簡単に言いますね・・・」
(プライバシーという言葉は神界にはない)
「神様が余り地上に顔を出さない理由が貴方にも分かったみたいね。・・・・・・だって嫌じゃない?人間界に降りた時に知り合った人がいつか絶対に書類になって送られてくるんだから」
これが一度二度会った事がある程度ならまだ心配ないかも知れないが、身内だったりすると、書類に目は通すわけだから・・・・・・胸が締め付けられる思いだろう。
「あ、辛かったらこっちに回してくれてもいいわよ?」
「大丈夫です、こっちの心配よりも早くそちらの山積みの書類をどうにかしてください」
「分かってるわよ、心配はいらないみたいね」
「こんな事もあるかと、一応理解はしていましたから」
「あ、ちなみに私情で極悪人を天国に行かせたりしたら裁判沙汰になるからそこのとこほんとに気をつけた方がいいわよ」
「実体験のような迫力ですね」
「実体験だから・・・・・・」
「・・・・・・やんちゃだったんですね」
この後少しばかりの沈黙の後、書類をかたずけながらもぽつぽつと昔話をし始めたので聞き流しながら時間はすぎて行った。
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数時間後・・・
「そろそろ仕事終えて良いわよ、今日はごめんなさいね、暗い話をしてしまって」
・・・・・・・・あぁ、あの昔ばなしの事ね、暗い話だったのか。
「・・・・・・・じゃあ、僕は帰りますね」
俺は神界から元の世界へと戻るためにワープを使い、時間を確認した後、少し長めの睡眠についた。




