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独学の毒薬で異世界無双  作者: ほふるんるん
夏休み編 
61/185

夏休み メロエ宅 

お腹が減って食い物の話になってしまった・・


読み飛ばし可。

メロエの家のある、この領でもっとも店が並ぶ飲食街にやってきた。この街は料理王ジャバが財を投じて作った、いうなればこの街そのものが料理王ジャバの領地のようなものと考えてもいい。


「領主様のところの坊ちゃん、良いのが漬かってるよ、食べてくかい」


「ありがとう・・・・うん、とても美味しいです」


「あんがとよ!!!今度は新作のコレをだなぁー・・・」


「あーいや、今僕は・・・」


「坊ちゃん、こっちのも食べてってくれや」


「うぐ・・・」


なんだこいつらは・・・買ってに売り物のはずの物を次から次へと持たせて―――なんのつもりだ。俺に貢いだところで何もないぞ?


「坊ちゃんお墨付きの漬物だよぉー!さぁーかったかった!」


後ろでおばちゃんの大きな声が響く。それを聞いて群がる旅の冒険者達。


「ギルマスの息子が食べる漬物だぁー!!」


「最強の理由はこの漬物かー!確かに酸味が程よくて美味いぞぉ!!!」



そんな物がクレウスの力の秘密ならば、俺は『毒師』を傍ら『漬物を漬けし者』になることだろう。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

~メロエ宅 兼 万料理店(よろずりょうりてん)ワールド ~


目の前に立つ要塞のようなその建物が、ジャバが料理長兼オーナとして全権を持つ万料理店(よろずりょうりてん)ワールド。ハイセンスなネーミングセンスだが、確かに名前通り世界級なので誰も馬鹿には出来ない世に二つとない名店だ。


(店の前は長蛇の列が常に並んでいるから、正面から入ることはメロエに迷惑だろう。裏口に周るか)


様子を見ながら、裏手に回る道が出来るのを待っていると、空から馬車のような物体が走ってやって来るのがわかる。段々近づいてくるにつれ、それが本物のペガサスに引かせる豪華な馬車で、一般人が来たのではないということが分かった。


群衆に紛れて空中に静止した馬車は、ガラスの階段を見せの入り口まで伸ばすと、馬車の中から大きなレッドカーペットが垂れ落ちて来た。


《王様がキタゾぉ!》


《王妃様も一緒よ!》


《王様ずりぃぞぉ!!》


《王妃様はいつもお美しいわぁ!》


《俺達だって待ってんだー!王様!!》


今日くることを知っていたかのように声を上げる人々、道理で今日はいつもより増して人が多いわけだ。いかにも王妃という感じの女性と、目を離せばどこにいるか分からなくなりそうな影の薄い王様が、みんなに手を振りながら二階から入店していくのが見える。


(あれは・・・恥ずかしいだろうな・・・)



二人の行動を笑いながら周りを見ると、周囲は階段を降りる二人を仰ぎみている。これはチャンスだと思い、すり抜けるようにして店の裏側へ移動した。




メロエの家は無駄にハイテクで、玄関の扉も生きていたりする。


姉様(ねえさま)に何か御用ですかな」


「飯を食いに来た、入れろ」


この扉は全てを見透かすといった不思議なものだ。本当は審判などに使われる扉だが、ここでは防犯用の扉である。


「かしこまりました、しかしメロエ様は厨房でジャバ様のお手伝いをなさっております、少々お待ちください」


「メロエも手伝っているのか・・・少し忙しそうだな。またにする」


残念だが、家に帰って食べるとしよう。外食の気分だったが、仕方がない。


「お待ち下さい、ジャバ様も利益になる相手は贔屓する方ですので」


「ふっ・・・なんだそれは――――あいからわず面白い扉だな」


扉は済ませた顔で答えた。


「事実ですので」



いつものように生きた扉に消毒液を霧状に吹きかけられた後、扉を開き店の裏側に入った。長い廊下を抜けてチラリと厨房を覗くと、そこにはもの凄い速さで料理を完成させる料理人達と、それを運ぶ数百のウェイトレスさんで、熱がこもっていた。


メロエと目が合う、額には汗をにじませ、髪は落ちないようにいつものロングから今はお団子にし帽子の中に入れている。今のメロエはジャバの隣に立つ料理人だ。ステータスのおかげでその体格に似合わない大鍋を片手で持ちながら温度調節をしている。


「アスク、少し待ってて。あ、やっぱり暇ならコレ切ってちょうだい、ハイこれ包丁。まな板ソレね、後は他の注文通りに斬っていって」


まな板と包丁が、長い金属のテーブルからスライドして送られれてやってくる。しかし、料理人でもない俺が、厨房に入ってメロエ達は嫌じゃあないのか?てっきりこだわりのようなものがあると思ったが。


「俺も手伝って良いのか?」


「大根、さいの目切り百キロ!」


メロエは俺に顔を向けない、それどころか目は左へ右へ嘘を吐いた時以上に激しく動いている。三つの底の深い鍋と、カレーの入った大きな鍋が離れて一つ、フライパンには魚がパチパチと音を立てているが、コレをメロエは一人で担当しているようだ。


(猫の手も借りたいというわけか、良いだろう)


「了解・・・!」


メロエのレベル高いおままごとでは、俺はいつも料理当番をする父役だったんだ。そして母役のメロエにいつもなにかにつけて叱られるという可哀想な役だが、そのせいか、野菜の斬り方や魚の捌き方も一通りのことが出来るようにさせられた。


「ニンジン、細切り、キュウリ螺旋切り、ネギ小口切り!」


そして役のモデルになっていた可哀想な男も今は、熱心に火加減を調整しながら味付けなどの確認をしている。


「細切りのニンジン、キュウリ螺旋切り、ネギ小口切り終わりました!」


「ダーカーカマス刺身、跳躍イサキ三枚おろし、魔ダコは脚だけ上手く飾り切り!」


全部海の化け物じゃあないか・・・ソレを包丁で捌けるのはココにいる料理人達とメロエ達だけだろ。俺は・・・別の刃物でなければ多分無理だ。


「聖剣サマエル!・・・大きさを考えて召喚!・・・それと、切れ味をいつもとは別で上げていくぞ!」


中々出来ない体験を多くした数時間だった。

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