勇者VS魔王編 完
不謹慎だ・・・何がって?アスクの行動さ・・・毎回だって?・・・知らないさ
~ティアとは別の離れた仮設テント内~
戦場に転がっていた亡骸を亜空間の中から取り出す。実験前に仕えそうな勇者なら例の薬を使ってゾンビにするのもアリかと考えているのだが・・・さてこれらはどうかな。
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ステータス
名前:折神 秀村
性別:男
称号:勇者
隠し称号:転移者
職業:拳闘士
年齢:17
レベル80
HP:5000
MP:400
攻撃力:12000
防御力:8900
素早さ:9000
賢さ:1300
器用:1300
幸運:10
通常スキル
剣術7 身体能力強化7 斧術8
エクストラスキル
ユニークスキル
・断ち切る刃
断ち切る刃1
手で切断出来ない物が無くなる。
名前:柊 朱
性別:女
称号:勇者 魔女 禁忌を犯すもの
隠し称号:転移者
職業:魔法少女
年齢:17
レベル69
HP:3000
MP:20000
攻撃力:3700
防御力:5000
素早さ:2000
賢さ:10000
器用:1000
幸運:40
通常スキル
棍術7
エクストラスキル
魔法詠唱破棄
ユニークスキル
・完全蘇生
完全蘇生2
レベル1
死人に魂を戻し生き返らせる
レベル2
死人の体に他者の魂を植え付け生き返らせる
名前:天使真黒
性別:男
称号:勇者
隠し称号:転移者
職業:占い師
年齢:17
レベル77
HP:7777
MP:7777
攻撃力:7777
防御力:7777
素早さ:7777
賢さ:7777
器用:7777
幸運:77
通常スキル
遠投術10 身体能力強化4
エクストラスキル
遠投の才能
ユニークスキル
・ラッキーセブン4
ラッキーセブン4
レベル1
一生に一度、もの凄い幸運がやってくる
レベル2
生死を分ける選択肢に成功する
レベル3
相手に起きる幸せを予知することができる
レベル4
自分に起こる幸運を見逃さなくなる
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「死んだ奴でもユニークスキルは見えませんか・・・」
しかし称号などから見て何となく特別個体を見つけ出す。他の奴が勇者だけしか称号が無いのに対し一人だけ、禁忌を犯す者という称号を持つこの柊という女。何か俺と同じ臭いがする・・・というのは腐敗臭のことではもちろんない。人をもてあそんだイケない子の臭いだ。
「勇者 柊、まずはあなたからゾンビにしましょう、称号の意味について喋って欲しい」
ボロボロになった肉体が再び動き始める。それは操り人形のごとく、ぎこちなく、それでいて興味深い個性あふれる動き。しかしこのゾンビのままで話をしてもらうには少し困ったことが増えた。
「ヴぁ・・・ガギュ・・・ヴョ・・・・・ヴャギュ・・・・」
魔法を発動させないようにするためか、コチラの教師がのどぼとけをえぐり取ったようだ。しかも死んだのは昨日のようで、首には蝿が待っている。
「コレは綺麗にしないと・・・駄目っぽいですね」
一度水でゾンビ柊を洗ってから、必要ないとは思ったが獣の皮などで適当に衣類を作って着させる。綺麗になったはなったで目のやり場に困ったからだ。・・・全く、死人の高校生に興奮してしまうとは情けない男だアスクレオス。
最後にドルンでは治らないので、他の皮膚で代用しようかと思ったが・・・・そんな皮膚は何所にも・・・そうだ、コイツゾンビだった。なら炎症とか多少起こっても問題ないじゃないか。
「よしちょっと待ってろ・・・」
痛い・・・・が、何とか俺の皮膚をゲット。血がジワジワと腕を染め上げていくので速い所ドルンをうって、元に戻す。血の通った部分にしかこの回復魔法は殆ど通用せず、少しだけなら切った細胞の中の血液を使って回復魔法が使えるが、それも少しの間だけ。数分もたてば回復魔法は使えなくなる。
が、しかし。今回はその少しの間を使わせて貰う。
「確か喉ぼとけって・・・こんな感じになってたよな~・・・・ここを縫って・・・ここに空洞作って・・・凹凸を・・・」
作業中の工程が時々無意識に口に出る事がある、今のは途中で気付いて止めたが多分他にもあったりするのだろう。しかし言葉に出してやっていったおかげで、間違いなく綺麗にできた。時間ギリギリだろう、回復魔法をかけると、かなり回復力は小さくなったものの、ジワジワとそれとない形にはなった。
数分後には、青白い肌にピッタリとついた異色の皮膚。これで話をしてくれるはず・・・
「あー、あー、聞こえるでしょうか」
「もちろん。どうですかぁ・・・生まれ変わった気分は?」
「動作不全なし、正常に動きます。創造主よ、感謝します」
以外と流暢に喋るな・・・・。まぁ、開発のことを考えるのは後だ。今は彼女に記憶の有無が最優先の問題になる。ここで何も知りませんただ貴方の命令で動くゾンビですってことになったら困る。
「記憶はありますか?」
「イエスでございます。この場所ではないどこかで武装をした大人に首元を切られた所までが記憶に残っております、ご命令を」
人間一人を作れる俺に不可能なんてなかったな。知識さえあればやってやれない事はなかった。あんまりいい声ではないが・・・出るならそれで良いだろう、後から暇があれば綺麗な声に変えてみても良いかも知れないな・・・。兎角生き返ったんだからコイツも文句あるまい。
それより気になったことだが・・・。
「では一つ、その喋り方は何か魔法による制限なんですか?」
「上下の関係作りに、・・・最適な話方はコレかと愚行した次第でございます」
「普通の話方も出来ると?」
「な・・・なにか不都合でもおありだったでしょうか?」
震えているが、この子はそれなりに賢い。彼女も同じように希望の生産者で生き返らせたが・・・この子はいち早く周りの状況を認識して、そして彼女なりに頑張って考えて、自らの振る舞い方を決めたらしい。なら好きなようにさせてやることが一番彼女のためだろう。
「いやいや。別に結構です。気が向いた時にでも戻して下さい。身の振りにとやかくゆうほど僕も小さくないんでね」
「はい、畏まりました」
漂う暗い死人のようなオーラは生前の時からだろう。元から余り話すタイプではないのかも知れない。それともまだ死の恐怖に怯えているとか?・・・まあ、なくはないだろう。さっきまで死んでいたんだ。どちらにせよ、ゆっくり聞いていこうじゃないか。
「貴方のその禁忌を犯す者という称号。他の勇者にはついていない称号でしたが・・・なにか特別な力を持っていませんか?でしたら、こちらとしても手厚い歓迎を約束しますが」
人間というのは、深い恐怖や絶望の時にどうしても甘い言葉に誘われて相手を信用し、口を開いてしまう。今回は人間ではなくゾンビだが・・・。
「コレは私の所有するスキル、完全蘇生を初めて使用した際に手に入れた称号であり、意味はその名の通り禁忌を犯し、人を【蘇生】させた事によるものと愚行いたします」
驚いた・・・人を蘇生させるだと?勇者というのはいつから神より強い能力を持つようになったんだ?あの鏡で喚いていたあの神よりもよっぽど強いじゃないか。どうしてそんなスキルが彼女に与えられたんだ?
「蘇生のスキル・・・ですか。あの下級神の持つスキルであれば、あなたのスキルを奪い使用出来るわけですか、なるほど確かにあの下級神のスキルは凄いスキルですねぇ・・・見くびっていました。ということは、そこに転がった二つの骸、それらを蘇生して見せて貰っても良いですか?」
「スキル発動には膨大な魔力と対価が必要です」
膨大な魔力と対価・・・・ねぇ。逆にそれだけで人間一つの命がまたこの世に降りてくるんだ、怖い話だな。
「対価に何が?」
「動物の生きているままの命。人間に近い物であればあるほど数が少なくなります」
人間の命は道徳抜きで考えて他の命数個のようだ。・・・ふむ、作るよりもコストが掛かるのは当然か。
「生きているままここに運んで来ればいいんですね?」
以前いったゴブリンやらオークのいた森にワープで移動し、毒を使って得物を捕獲し連れて帰る。それらを魔法陣の上に乗せ、後はバランスさえ整えれば、下ごしらえとしては十分のようらしい。既に、もう魔法がかかり始めそうな雰囲気だ。
蘇生の呪文に用意しなければいけないと言われた魔力はたったの一万。魔法陣に魔力を注入する方式の魔法なので、途中魔法薬を飲みながら魔力を送り続ける。
・・・・・・・・・そして、魔法が起動すると面白い物が見れた。
「はは・・・・ははは・・・・コレはコレは・・・出来てしまうんですか・・・本当に」
青白い顔をした二人に徐々に赤みが戻って行っているのが、目で見てわかる。心臓が動き出し、脳が信号を送り、体が動き始める・・・・あたかも何もなかったかのように。なんて気持ちの悪い光景だ。死者の生き返る様がこれ程までに惨いとは想定出来なかった。
「うっうぅうう・・・・あー良く寝たわ・・・そういえばここは?」
「柊さんがいるってことはここはテントの中?・・・でも知らない子もいるし・・・・てか柊さん、なんか顔青いし服もなんかワイルドですね。魔力欠乏にでもなってるんですか?僕達もなんか迷惑かけたっぽいので、肩、かしますよ」
呆れるほど現在の状況を呑み込めていない勇者達だ。事情を話してやると、彼らはものすごく前向きなのか凄くなんか喜んでいる。
「マジ?俺転生先で死んで更に生き返ったの?チョーレアじゃね?」
「チョーレアっていうか、コレはアレだよ。自分中心で物語進められる感じのフラグだよ折神!うっひょー!マジか。最高じゃん、これから俺のストーリー始まっていくんだ!」
「天使、エンジェルとかあだ名つけていままでからかって悪かった。謝るからこれからの道しるべ占ってくんね?」
「ははは、折神は調子いいなぁー!」
柊とは打って変わって陽気な二人組だ。もう少し騒がしくするようだったらまたそこの床で冷たくなって貰おう。
「アスクくん、僕達を助けてくれてありがとうね。柊さんの魔法、凄いのは凄いけど使うの大変だっただろ?それをまだ10歳にもなって無さそうな君がしてくれたなんて驚きだよ。特に生きた生物の数とか・・・・・・・・・あれ?何で君がその条件にあう素材を持っていたの?」
更に事情を説明して彼らはようやく大人しくなった。目の前にいたのがただの子どもじゃないというのがやっと理解したようだ。
「アスクさん、僕らこの異世界を旅します」
「あ、俺も俺も」
「この世界は危険ですよ?今なら他の奴らと一緒に裁判で牢屋送りになった後、死ぬほど働いて数年したら、サタン様が異世界へ返してくれるかも知れないというのに。そうはしないんですか?」
二人は柊と同じレベルまで顔を青くすると、悩んでいた何かに区切りをつけたような、決心をした男の顔になっていた。・・・・そんなに嫌か?牢獄暮らし。青春を牢屋で過ごすなんて滅多に出来ない経験だと思うが。
「いや、あそこに帰ったとして僕はただ平凡な日常を歩むだけだから。せめてこっちで死んでも良いから生きていたいかなって・・・甘いかな?」
「まっいーんじゃね?俺もやれるだけやって死んでやるってな感じで!この手で異世界を切り開く!」
「忠告はしたぞ。後は好きにしろ・・・・そうだ、どのみち異世界でひとりで生きていくには色々大変だろうから良いものをやる。手だせ」
銅貨五枚と銅の剣を二人に手渡す。
「アスク君・・・・君は一体・・・?」
「コレ勇者の旅立ちセットっしょ?ヒュー、やっべえな。まさか王様じゃなくて少年から貰うとか勇者ここに極まりだな、民家の壺とか割って良いのか?」
「お前達は一応死んだことになってる。次捕まったら前の刑も重なってどうなるか・・・分かるな?」
「魔王討伐行って来まーす!」
「俺も俺も!」
二人は部屋から出て行った。勇者達にも分かれを告げず、自分の道を求めて。
「馬鹿野郎共・・・・たっしゃでな」
またどこかで会うかも知れない。新しく独立を果たしたB級戦犯達に幸あれ。今後アイツらが一体どんな生活をし始めるのか、気になるところではあるが・・・それはまたいつか知ることになるだろう。
二人が部屋から出て行った後、ゾンビ柊と俺だけが残った。はっきりいって何をどう始めればいいか考えものだ。今来ているのは獣の皮を巻いたもの、いうなればアマゾネス的な野性的でアヴァンギャルドな恰好の彼女だが、一応人間と遜色ないような見た目ではある(多少青白いが許容範囲だ)。
このめんこいゾンビにナニをさせようか考えていると、扉をけ破って中に入ってくる大柄の男に嫌な汗が出る。
「コレはこれは・・・サタン様様、どうしたんですか?」
「様を強制的につけられるからと言って更に続けて様をつけるのは止めろアスク。様様は非常に不愉快だ」
「コレは失礼。なぜこんな場所に?」
「ティアから君がテントでよからぬことをしていたと聞いてな。他のテントも調べてみれば・・・というわけだ」
「他のテントでもよからぬことをしていたと・・・僕は思った以上に分かりやすい人だ。HAHAHAHAHA」
「ここで何をしていたのだ」
軽く笑ったのを無視された。これではまるで、俺が変な人だと思われる。肩パットマシマシにしている彼の方がおかしいヤツだというのに。
「人体蘇生をすこし」
途端に謎の旋風が巻き起こり、いつの間にかマントの内側にすっぽりと入ったゾンビ柊。
「それ・・・僕のなんですが」
嫌な予感がする。
「貸してくれ」
いやな予感は的中する。
「駄目ですね。今彼女の研究中ですから」
粘るが・・・
「貸してくれ」
やはり・・・
「駄目だと言って・・・」
ゾンビ柊はナニも出来ずにサタン様に連れられてどこかに消えてしまった。
「あの肩パット様様、覚えてろ」
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後日
学校は、邪神と魔王が子の学び舎で偶々戦ったという事にし、ソレを助けにきた異界の勇者と生徒はそれを阻止するために尽力した。という内容に変わった。
ついでに言うと邪神と魔王が戦った設定を考えたのは俺だ。邪神は死んだといったので全体的に責任はサタン様が負う事になるが、俺のゾンビ柊をとったんだ。それぐらいは受けて当然の報いだろう。
他の内容は、勇者というイメージを悪くさせない為と、学校の負う負担を最小限にするためのものらしい。学校の運営が汚すぎる・・・と言いたいとこだが。俺も混乱に乗じてちょっと遊んでたからソレをネタにされて上手い事丸め込まれていた。
そして学校の顔であるZ組はこういう時にもコキ使われ、死んで骨一つ残らなかった彼らの墓の前で今お祈りを捧げている最中だ。
「ここでZ組代表 アスクレオス・ワイズバッシュ様より弔辞をいただきます」
どうやら俺の出番の様だ。一歩前に出て、対面する。何もなく、ただそこにある岩と。
「少し前まで同じように入学し、同じように生活して来た皆が今は石碑となって私の眼の前にいます。なぜ、このような悲しい出来事が起きてしまったのか、それを考えるだけでも胸が張り裂けそうな思いです。私達は決して皆のことを忘れません。皆が真剣に生きようとしていた姿は私達の心にいつまでも残り続けます。どうか末永く私達を見守っていて下さい」
曇り空を展開し、雨を少しづつ少しづつ降らせる。あたかもなみだのように。
「アスク様が泣いていらっしゃる・・・・」
「雨粒が彼の涙の代わりに落ちているようだ・・・・」
次第に雨を微調整しながら量を増やしていき、やがて土砂降りにする。
「さぁ、私達が風邪をひいては皆も浮かばれないでしょう。早く校舎の中へ」
俺を先頭に、教師が生徒を並ばせ校舎内に戻る。その途中ティアが先頭にやって来て、俺に耳打ちでこういった。
「よくもまぁそんなペラペラと心にもない事が言えるものだな」
「何でそんなことを言うんですか」
一番の親友にここまで言われると心が痛む。
「いままでの行動を振り返ってみたらどうだ?」
「鬼というより悪魔でしたか」
「自覚があるようで何よりだ。司祭が祈りを捧げていた時に笑いを堪えていたのは褒めておく。流石にあの場で笑っていたら俺はお前を殴るところだったぞ」
あの重苦しい空気の中笑うくらいなら内側の頬を噛んで泣いた方がマシだろう。
「僕もそこら辺はわきまえていますので」
自分とは関係のない赤の他人の死というのは、本当に親戚が死んだときに感じる悲しみのなん分の一だろうか。こういう時にその悲しみをより大きく感じる事が出来た時、自分は初めて自分の中にある優しさを感じ取ることが出来るのかも知れない。
また夜に書いたから色々不謹慎な物になったあああああああ
編集とかコレ当分出来ないぞ・・・・




