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独学の毒薬で異世界無双  作者: ほふるんるん
勇者VS魔王編 
50/185

勇者ケン、ヒロイン華菜、悪役アスクレオス・ワイズバッシュ

主人公が悪役みたいだ。

≪神格開放条件を一つ開放しました≫


不安に思いながらもステータスを開くと、職業欄に毒と知識の神にⅡというローマ数字が薄っすらと浮かびあがり、不気味な余韻を残して消えていった。


(人間から神へのカウントアップか。数字とは逆に俺の気分はカウントダウンしていく一方なんだが・・・)



神格条件とやらも一応閲覧することが出来るようだ。調べていくとどうやら十以上の条件があり、その中でも何個か無理難題が見つかり、いつの間にか人でなくなる心配がなくなったことに胸をなでおろした。


・レベル200以上


・後ろ盾となる神が三人


・自分の子孫を作る


などで、他にもスキルを12まで上げるや支配領域を持つなど、偶然になることがまず出来ないようになっている。子孫ね・・・、今の歳から作るとか笑える冗談だな。それに俺がまず結婚出来るのか?そこから不安になってきた。・・・こういうのは深く考えたらいけないやつだな・・・止めよう。


他の条件は・・・と、


・百万人以上の信者を五年以上信仰させる


(あ・・・そりゃ無理だ。というかあの下級神も凄かったんだなぁ・・・。嫁持ち信者百万人って相当凄いだろう・・・。あ、いや子孫を作るだから別に嫁じゃなくても良いのか。今考えればそっちの方があり得そうだな)


晴れ晴れとした気持ちで、神になることを止めた。神格条件についてはとりあえず記憶の片隅にでも放置しておけばいいだろう。


それよりもだ。それよりもまず勇者の死体が先ほどから目につく。コイツをどうするべきか・・・ティアが見たらまた変な誤解をされてしまうだろうし・・・生き返らせるか?・・・・ゾンビになるだろうけど。


童貞だったら変わるなんて変化があるのだろうか?製作者本人はまだ人体実験の例が少ないために何とも言い難いが、一応他の素材はゾンビにしかならなかった。男も女も等しくゾンビだ。コイツもゾンビになるだろうか?


・・・とりあえず聖剣サマエルに希望の生成者を吸わせて切ってみるか。


《ガキュゥゥゥウィイィィィィイ!!!!》


「さっき魔王の横にいたガキだな!どうやってこの戦いの中俺たちの後ろをとった!!!?」



大剣を横から俺の剣を払い退けてきたのは、先ほどサタン様から回し蹴りを喰らった異界の勇者君。鎧もしっかりと着こんで、防御面もしっかりとしているなぁ・・・俺も見習わねば。それはそうとして、そんな勇者様が何故、俺の偽善行為を邪魔するんだろうか。


「邪魔をしないで下さいよ、彼が死んでも良いんですか?」


「俺の質問に答えろ。俺はお前のような見た目の奴でも油断しねぇ、ここにいる時点でお前は強い。そうだろ?」


お前が思っている以上に弱いし、そんなことは一度置いておくとして、下手にこのまま時間が過ぎればその横たわった死体が永久に動かなくなってしまうが・・・その説明を態々するべきだろうか。


「薄情な勇者ですねぇ・・・此処へは周りこんで来たんですよ。神を倒すためにワープで」


「はぁ!?そんなのチートだろ!チートだチート。俺の能力も転移魔法が使えるとかだったらもっと伸びしろあっただろうによ・・・そういや、そこに転がってるその勇者。ソイツやったのお前か?」


犯人にされているのは近くにいたからか?どちらかというと俺は死んだソイツにもう一度人間のような生を与えようとしているわけだが・・・説明がいるのか?本当に?


「あー、そこのですか・・・はあ、淡泊な勇者ですね。僕が直接手を下したわけではありませんよ」


「そうか。そういえばよ、言ってなかったが今そこで転がってるの俺のダチなんだわ」


説明できるような流れではないような気もするし、剣を構えだしているからもしかすると俺が話を終える前に斬りかかってくるのではなかろうか。


「なんとご学友でしたか・・。それはそれは御気の毒でしたねぇ・・・。ですが僕は彼を―――――」



話しの途中で、勇者の剣から光の剣が次々と出現し俺に襲いかかる。次々とガンガンと音を鳴らして鎧に魔法が当たっている。気分的には大量のラグビーボールが全身を襲っているといったら良いだろうか。滅茶苦茶に痛いというのもあるし、数が数なので光が凄い。異世界に来て初めてグラサンが欲しいと思ったぐらいだ。


数十秒絶え間なく光の剣が突撃し、ようやく終わった頃には守りきれなかったのだろう、太ももの部分などが衝撃で骨折しているのが分かる。骨折している時は何となく自分が骨折しているのが分かるものだ。

本当に何となく、あ、今折れたな。と、軽く思う。そしてジンジンと痛み出してくるのだ。


そうなる前に回復魔法をかける。相手にはただ仁王立ちしているように見えているだろうが、鎧の内側では涙をこらえて必死に回復呪文を唱えているのだ。下手に動かすと更に痛くなるからな。


(ドルン!ドルン!ドルン!ドルン!ドルン!ドルン!ドルン!うぅ・・・響くっ・・・)


「俺の千光サウザントフラッシュが聞かないだと・・・化け物が」


「自分の常識に当てはまらないからと言って化け物扱いするのは止めて頂きたいのですが」


勇者の顔から汗が滲み出る、こちらも鎧の中では痛みからくる熱で顔から冷や汗が噴き出る。今は強がりを言うのが精一杯だ。


しかし痛みの治まらない今、奴も精神的に怖れをなしているはずだ。この隙にテレポートを繰り返して攪乱及び、死角に入らなければ。今ある勝機を失うことになる!


「後ろの方から・・・こんにちわ・・・」


「クソチートがよ!!!!」



勇者はいきなり前から背後に回られた事に驚きを隠せないまま、後ろに出現した俺を薙ぎ払い、押しのけた。俺は勿論鎧に守られ吹っ飛ばされることもなければ傷つく事もない。


「素晴らしい反射神経をお持ちですね。それも勇者になった恩恵なんでしょうか?」


「随分と余裕だなぁ!!?」


その後も勇者の攻撃は俺の足や頭や鎧に弱点を探るかのような攻撃を次々とくりだしてくるものの、鎧は、その探りを受け入れると言わんばかりに丁寧に全ての攻撃に対応していく。自分の剣捌きでは既にステータスの差が開きすぎて太刀打出来ないのが残念だが、鎧のおかげで命を現在進行形で救われている。


この勇者はガード性能だけでいえば他の勇者よりも軍を抜いて最強の部類だろう。ガードをしてから反撃するカウンタータイプの勇者だ。好戦的な性格とは裏腹に自身やその周りを守るユニークスキルを使って来る可笑しなやつだが、戦闘中はそういう矛盾を持つ奴の方が強く感じる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


三時間程だろうか、あれからずっと戦っている。既に太陽が真上に上って段々と涼しくなり始めているこの場所で、俺と勇者は熱のこもった戦いをしていた。


「頑張れ勇者ー君ならーできますー」


「ぶっ殺す!!!」


相手を煽る事で自分の方が冷静な判断が出来るよう気持ちを落ち着かせる。こんなことは糸さえ読めていれば乗る事のない、ちょっとしたおふざけのようなものだが・・・煽り体制の無い若者にはさぞや辛いだろう。


煽りなんてのはため息を相手が付いてからが本番と、どこかの誰かが言っていたような、いなかったような気がするが、まさしく今がその時だろう。煽りのリハーサルを終えた、今からが煽りの本番だ。


「耐久テストもいい加減に飽きましたので、次は薬も使っていきましょうか。年下相手に上から言う割には実力の伴っていない三流さんには硫酸なんてお似合いですかねぇ」


実際には耐久テストなどと言っている余裕などなく、こちらもかなりギリギリの戦いを強いられている。鎧が無敵に近い性能を誇っているとしても、剣で腹を殴られればその衝撃はちゃんと腹に届く。


あれだけ剣をブンブン振り回していればそりゃかなりの箇所に当たる。当然そのダメージは俺に蓄積されてるわけであって。


「そうは言っているが・・・案外お前も余裕が無いんじゃないか?このやろう」


バレたか。まあ、これ以上の演技も厳しそうだ。どうせなら膝をついて休憩したいぐらいだ。


「良かったですね。ちゃんと貴方の攻撃は効いてますよ、はっきり言ってとても痛い」


「カッ・・・痛いで済んでんだ・・・まだマシだろうが。こちとらもう頭の中真っ白だ・・・」


「もうそろそろ他の勇者達も全員捕まっている頃でしょうし、貴方も投降したらどうですか。もう痛いんで寮に帰りたいんですが」


「俺の相棒の敵討ち、させて貰うまで俺は引けねぇ・・・」


「よくもまあぁ、そんなものの為に頑張れますねぇ。そういう人を僕は尊敬しますよ、素直にね」


「人間されて初めて分かる事もあるってことだな・・・・そういえばお前とのお喋りの間に回復魔法をかけたが構わないな?」


「何でそういう事言うんですか。常に回復呪文かけながら戦ってる僕が悪いみたいじゃないですか」


「カッ・・・お前はそういう奴だったなぁ!!!」


勇者が剣を構えた瞬間、俺の視界から勇者が消えた。


「ここだ!!!!」


「しまっ・・・!!!!」


ドスッという音とともに、グラリと視界が揺らぐ。心臓を突かれ・・・・・たのか!


「クッ・・・痛いですよ!!!」


倒れそうになりながらも、左足で踏ん張り、大剣で地面をえぐるように下から上へと斬りあげる。大剣での直撃は勇者に避けられたものの、空中へと勇者を吹き飛ばす。


「やりますね」


「お前の心臓は一体どこにあるんだ!?」


難なく空中から降りて来る辺り、相当この勇者は戦い慣れをしているようだ・・・他の勇者と違ってコイツだけ別の世界から来たみたいに強い。


「中心にありますよ・・・何言ってるんですか。サウザー遺伝子でも持っていると思いました?」


お互い息を切らしながら、剣を交える。


「次で決めます」


「俺は最初からそのつもりだったけどな・・・こい!俺のカウンターとお前の攻撃!どちらが上か勝負だ!!」


そして剣がまた交わると、そう二人共思っていたその時、俺は後ろから射抜かれた。それはもう綺麗に、思い出し笑いしそうになるほど鮮やかに俺の背中に矢は突き刺さった。


「ケン君!」


物語でいう所のヒロイン的立ち位置の人物だろうか、適度に顔の整った美しい乙女。その綺麗な顔立ちの乙女の顔面を今すぐグーで殴り殺したい。戦いは一体一でやっているものではないので、援護射撃があるのは当然のこと。しかし、今のこの戦いだけは俺は純粋に楽しかった。



「華菜!サンキュー!」


「良かった・・・大丈夫だったんだね。皆もあっちで頑張ってる!!こんな奴早く倒して皆の所に行きましょうよ!ケン君!」


「あ・・・・あぁ、そうだな。だが、気をつけろ。コイツはそう簡単にはやられてくれないぜ」


本当に、剣と剣で戦いあう事に目覚めようとしていた・・・・新しい俺を発見するそんなチャンスを・・・奴は妨害してくれた。・・・・このどうにも上手くいかなかった時の鬱憤、どうしてくれようか。


俺を刺した女。さっきから死んだまま動かない壺の勇者。そしてずっと決めてがないまま消耗戦を仕掛けて来る男。



「煩わしぃ蝿共がよぉ・・・イライラすんだよ・・・」





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