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独学の毒薬で異世界無双  作者: ほふるんるん
修行編
43/185

次への準備 1 それぞれの道で。

天使門から数日後のこと。ティアが寮に引き籠ってしまい、俺はまた別のダンジョンにでも潜ろうかと考えていると、そういえば竜海からかなり痛い一撃を貰い危く気絶仕掛けたという悲しい事実がふと頭を過った。


そのあと装備無しで高レベルの塔に入るなんて本当に頭がどうかしていると、後日また訪れた時には竜海には半分説教のようなモノを受けたし、防具というモノの再認識をしなければいけないのかも知れないと、今日この頃思う。


竜海の言うそのゲームの話では、鎧と武器は最高の物を用意してから冒険は始めるべきらしく、道具にしても回復道具の他にもトラップやら水、獲物に合った得物を用意するべきだという話など、外に出た事がないアイツが何故そこまで知っているのかと思えるほどに、沢山のことを教えて貰った。


というわけで、今日はまず防具の調達をして防御力の強化をしようと思っているんだが・・・鍛冶場の町なら鎧とか売っているのだろうか?鎧や剣というのは邸に豪華な服を着て訪問販売にやってくる商人から買うものだと思っていたから、作りたてを買うというのは不思議な感覚だ。



~ミトレス王国 ワイズバッシュ公爵領 鍛冶場の町 アイアン~



ワープでアイアンにやってくるとどこからも武器や鎧を叩く金属音が聞こえる。ここには来たことがなかったから少し不安もあったが・・・


―――トンチンカンチンと魅力ある音を鳴らし―――


―――時々大きく聞こえる蒸気の音―――


―――賑わう市に暑苦しい筋骨隆々の男や女―――


この町は一つの芸術として完成されていた。


「よぉ新米冒険者!ウチの鎧を見て行かないかい!」


「こっちのブーツはトラップを喰らってもへっちゃらだぜ!」


「あたいの作る防具は男女ともに高い人気のある物ばかりだよ!」


歩いているとアレはどうだのコレはどうだのと、競争の激しさがヒシヒシと伝わってくるような客引きの嵐が続き、かといって喧嘩をしているようなところのない治安の良い町だということが分かる。よくあれだけ言い合いになって殴り合いにならない物だと思ったが、お互いの利以上に案外仲間意識の方が強いのかも知れない。


先ほどまで前で言い争いをしていた店主達が前を通り過ぎることには腕を組んで酒を飲んでいる。確かにそれで済むなら治安が悪くなることもないだろう・・・本当に素敵な町だ。今日はこの町で一夜明かすというのも良いかも知れないと思えるほどに居心地が良い。


(でも寮母さんに朝帰りしたら前怒られたからなぁ・・・、小学生で朝帰りなんて聞いた事がありません!って凄い怒る顔は恐いというより泣きそうだったから、迷惑も余りかけたくはない)


中央の広い道を歩いていると、勿論多くの冒険者が色々な店で防具を見たり武器を見たりしているわけだが・・・見た感じ竜の尻尾を喰らって生きていられそうな防具はない。この大通りにある防具全ての耐久地よりも恐らく俺の胸板が勝つだろう。


半分ほど諦めそうになっていたとき、目の前を通り過ぎようとした冒険者に見知った顔が通り過ぎて行ったのが見えた。相手は気づいていないようだったが、俺の目に間違いはないだろう。追いかけて肩を叩く。



「お久しぶりです!C級冒険者のスカッシュさん」


「バッシュだ馬鹿野郎!、・・・って、その特徴的な緑の髪は・・・お前か。この町に来たってことは坊主も遂に冒険者になれたって事かぁ?」


道をそれて端によると、人が多くて気が付かなかったが、顔の無精ひげを剃ったり鎧を変えたりと以前よりも裕福そうな恰好をしている。それにしてもこの男、俺が公爵家の跡取り息子と知ってこの態度、正直好感が持てる。


「バッシュさんはこの町に鎧を?」


「まぁな。装備の手入れもあるが今日は少し酒を飲みに来た。ここの酒がこれまたウメェーんだわ、これが。この町で作られた極上の蒸留酒スピリッツは鍛冶屋と同じぐらいこの国じゃあ有名だからな。ま、坊主にはまだ早いか?がはっはっはっはっ・・・」


「ははは、飲める歳になったら覚悟しておいてください」


「そりゃ今のうちに使っとかねえとな、はっはっはっは」


以前会った時よりも清潔感ある恰好をしている事や、幸せオーラが伝わってくる辺り、何かあったんだろう。


「そういえばお酒を飲んだり鎧が新しくなったりしてますけど、何かあったんですか?」


「分かるか?分かるのか。やっぱりか、ふへへ」


隠していた笑みが溢れたような顔だ、見ていて気持ちが悪い。これが一時の幸福ってやつなんだろう。なんか思わぬ臨時報酬で十万を好きに使えるサラリーマンを見ている気分だ。小さな幸せを噛み締めている所を・・・こう、見ているというか。なんでか哀れみと嘲笑と祝福を混ぜ合わせたような気分になった。


「誰が見ても今の笑い方はちょっと引きますが・・・本当にどうしたんです?」


「いや~、実はEランクダンジョンを一人で攻略できてな。いやぁ~最後の魚の主は豪く強かったんだぜぇ?」


「ほう・・・一人でダンジョンを?危険な事をしますねぇ。命知らずにもほどがある。EランクダンジョンがCランク冒険者なら一人で入れるからといって油断したら命取りになるという事はバッシュさんも知っているでしょうに」


特大の刃付きブーメランを投げた気がしたが、気のせいだろう。


「ま、確かに魔法や、複数人のメリットは多いにある。しかしだな、俺は冒険者ギルドで多人数での戦い方を学んでいないから、パーティーを組もうにも相手に嫌がられたりする。下手をしたら仲間をぶった切ってしまうからながっはっはっは」


「もう勢いだけで笑ってませんか?・・・戦い方を学んでないなら、ちゃんとC級になった今こそ学んでおくべきでしょう。戦いは応用ばかりですけど、基本が大切な時だってあるはずです」


一体どの口が言っているのだろうと、思いながらそういうと気まずそうな顔をして喧騒にかき消えないギリギリの声でぽつりと、


「・・・まあそうだ、あと分け前を渡すのがイヤっていうのもある」


という回答が帰ってきた。


「報酬の問題ですか・・・」


Eランクのダンジョンの報酬を数人で山分けするとしたら・・・確かに碌な稼ぎにはならないか。それにクエストを一日中していた方がまだ稼ぎも安定するだろうし。


「世知辛いですね・・・」


「だがな、それも今日で終わりだ!Bへ昇格する試験を受ける事になったからな、それも踏まえての今日は飲みだ。あっと、そういえばそろそろ行くわ。アイツらだったら俺が行く前に、店の酒を全部飲みほすかも知れねえからな。・・・坊主、次会うときはBランクになった俺を見せてやろう」


「無事に上がれればの話しですがね~」


もう既に歩き出したバッシュの背中に言うと振り返って、「うるせぇ、わかってらぁ!」と、言い残し人混みに消えていった。


「渋いオッサンづらが大声出して返事してんじゃねえよ。あ、俺もそういえば・・・・」


すっかり自分の目的を忘れてしまう所だった、俺は自分の装備を作って貰う職人を探すために探索を再開したのだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


~ティア・ゼパルの寮~


「この風の出る貝とこの火が出る剣を合わせてこうしてああして・・・」


今俺は、武器の合体というものに目覚めつつある。今手持ちあるのは塔を上った際に手に入れた報酬の魔道具と武器が数百。この中から布などを巻いて引っ付けると、一つの武器として鑑定して武器の名前が変わる事がある。例えばこれだ。



■灼熱の剣 特異級ユニーク


効果:攻撃力700 


材料:火の剣 ヒートシェイカー


説明:鍔にあるレバーを引くと火がでる。



「面白いではないか。ク、クク、クククク・・・・・!」




ティアがこの後武器改造に目覚めるのは言うまでも無いのでした。

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