Z組の日常 アルバートとメイリオ編
番外編ですー
これから話すのは、アスクレオス・ワイズバッシュが放課後からダンジョンへと姿を消して修行をしている期間に、放課後他の生徒はどのような事をしていたのかという物語である。
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~ケース1 メイリオ・バティスの日常~
「アルバート!、今日は誰が相手だったかおぼえていいるかぁ!?」
「メイリオ、貴殿は少し声のボリュームを落とす練習でもしたらどうだ」
メイリオはZ組の中で最も分かりやすいユニークスキルの持ち主と言える。
「そりゃあ無理な話だぜ、アルバート!俺の気持ちの高ぶりは誰にも止められねえ!自重も難しい!!!」
見ての通り彼のテンションは異様に高く、それは勿論彼のユニークスキルと関係がある。
「なんたって俺のユニークは気持ちが揺らげば揺らぐほど力が出る!!!、俺の力は気持ちそのものだ!!!」
「某も耳にタコができるほどソレは聞いた、分かってはいるがもう少し自重してもらいたいものだな」
メイリオの能力はフィーリングゲイザー、感情によってでる力の振れ幅が常人よりも大幅に高い。つまり彼は圧倒的に勝てる状況でも、絶望的に負けそうな時でも、その感情を力にして力を出す。正虎先生戦では、正虎先生に全く歯が立たなかったが実はとても強いスキルなのだ。
「フワッハッハッハッハッハッハ!!!!、諦めろ!!!俺は今から下の組の奴らの相手してくるが勿論アルバートもついてくるよな!?」
「メイリオがやり過ぎないように止める者がおらぬとイカンだろう、某もお供するぞ」
場所は変わって、学校で全ての組が使える共用の巨大広場。ここでは12ヘクタールという面積を誇る土地を利用して、様々な事が実験や訓練などで使われている。その中でも生徒が目に涙を浮かばせて頑張るのが、4ヘクタールを使った闘技場で行われる格闘技術の順位戦。
以前、正虎先生が話をしていたZ組の生徒がもしSSSクラス以下の生徒に負ければその生徒とクラスを入れ替えるという制度は、この場所で行われる模擬戦のことを言っている。
下の組は上のものに全てをかけて食らいつき、上の者は現状維持の為にその相手をし、防衛する。勿論、全てをぶつけるというだけあって、ナイフに痺れ毒を塗って戦う生徒や、自分の雇った傭兵を使うというモノまで現れるワケだが、そういった者は大体現在この闘技場では下のBクラスどまりとなる。ナイフに毒を塗られたならば、ナイフを魔法で弾けばいい。傭兵が相手にいるなら、逆に買収してしまえば良い。そのようにして、全てを使って戦いに勝つのがこの順位戦となる。
しかしこの決闘にもいくつかルールというモノがあり、ソレを守らない生徒は、執行者(教職員)によって、利用禁止を言い渡される。
大原則として、決闘は一体一で行うものとする。分身はありとするが、初めからいる事は認められていない。召喚はありなので、召喚によって呼び出された精霊などはルール違反にはならない。次に決闘と言っても、教職員立ち合いのもとなので、死に直結する技であったり、時間が立てば死ぬような状況になれば試合はそれで終了となる。
以上のルールで動く無法な闘技場で、主ともいえる存在がいる。それがメイリオ・バティス、彼だった。
「よぉおおおし!!今日の相手は誰だぁあああああああ!?」
「そう一々叫ぶな、そんな事を言わずともおのずと挑戦者は貴様の元に群がってくるであろう?」
「それもそうだなああああああああ!!!!、はよ!!!!はよ!!!!!はよ!!!!!!誰かこーーーーーーーい!!!!!!」
すると先ほどまで戦っていたと思われる、鎧をきた一人の少年がメイリオの前に立った。鎧はボロボロで、顔も傷だらけだ。そして、その後ろには傷を一生懸命に治癒魔法を使って回復させている魔導士と、その体のどこからそんな力が出ているのか分からないほど大きな盾を持つオーガの少女。そしてそんな三人を、ため息をつきながら見ている赤色の髪をした裕福そうな見た目の少女。
「次は、僕が相手だ。チャンピオン、メイリオ」
「おぉおおおおおお、い~ぜェええええええ!!!お前、SSSランクの奴だな!!!!そんで名前は確か・・・・そうそう、リュウとか言ったっけか。変わった名前だよなぁ~、顔もここら辺の奴らとは違う黒目黒髪だしよぉ!!!俺も少しばかり興味があったんだぜ!!!」
「あ、ありがとう。それで例の噂は本当なんですか?」
「なんのことだ!!!知りたいことがあるなら何でも聞いてくれ!!!俺とアルバートに分かる事なら何でも教えてやるぜ!?」
「貴方に勝ったら、Z組に上がって、アスクレオス様に会えるという話です」
「あー・・・・・アスクさんか。いや、あの人は多忙だから午前中の授業内だけなら会えるぞ、放課後はティア様とどこかに出かけてるみたいだしよぉー。まぁあ!?それも俺に勝てたらの話しだけどなぁ!!!」
「勝って見せます!、それがメロエちゃんに認めてもらう第一歩なんだから!!!」
メロエとは、リュウを含む四人のパーティーメンバーの一人である。勿論アスクの幼馴染の彼女であり、本編では分かりづらかったが美少女だ。リュウは出会った頃からメロエにぞっこんであり、メロエもそれにきづいていながら放置である。
アスクは何も言わないため本当に分かりづらいが、メロエはSSSクラスは愚か、他クラスからも注目を浴びるスーパーカリスマモデルのような存在である。勿論、お家柄が料理王兼大富豪ということがプラスになっているのは言うまでもない。
「はぁ~勝手に頑張ってね。私にも勝てない癖に、Z組の子になんて勝てるわけないでしょうに・・・干鰯の代わりにでもなって土に埋まっている方が似合いよ、あなた」
「グェッ・・・キツイ一言・・」
「いや、そこのメロエ君!!!勝てるかどうかが問題なんじゃないんだぜ!!!大事なのは戦う意味を持ってるかどうかだ!!!」
「あ、そう。暑苦しいわぁ・・・・今夜アスクの部屋にでもお邪魔しようかしら。あそこは夜風が涼しいから」
アスクの前ではぶりっ子のメロエは、ここでは一辺して冷徹にして加虐的なオーラを放つ。オーガの少女が慌てたようにメロエに近づきイライラとして針山に刺さった針を抜き差しするメロエを宥める。メロエと同室のオーガ族の少女、屈強な肉体とは打って変わって、内気な性格の持ち主である。
「めめめ、メロエちゃん!男の人の所に夜いくなんてあぶないよ!男の人は夜になるとオオカミさんになっちゃうんだよ!」
そして魔導士もそれに便乗し、メロエにワタワタしながら話す。
「えー!、そうなのですか!?メロエちゃん、そんなところに行くのは危険ですよー!。あれ?でもそれなら僕達も夜オオカミに・・・えぇ!?」
「あーもう、馬鹿ばっかり。早く終わんないかしら、アスクに会いたい・・・」
「メロエちゃん!見ててね!!僕が頑張るから!」
「よぉおおおおおおおおおし!!!!!!!!いくぞおおおおおおおおお!!!!リュウ!!!!いざ、真剣勝負!!!!!!!!!!!!!!」
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~ケース2 アルバート・アナスターシャの日常~
アルバートの家系は少し変わった家系だった。数多くの門下生を持つ剣の学び舎でありながら、上流貴族という変わったものだった。勿論、剣の学び舎で生まれたアルバートも、同じく剣を小さな頃からふってきた。
そして、現在6歳となったアルバートは剣の天才児と言われるようになっていた。剣の太刀筋は美しく、剣を収める姿も凛々しく子供とは思えないほどに整った形を持っていた。そんな天才児と呼ばれた彼にも他の人間同様に、大きな壁と相対することとなる。
それはとある、授業終わりのトイレ休憩の時。この国の最上位に位置する爵位を有する者がどのようなものかと興味がわいた事が始まりだった。
「アスクレオス様、少し話を良いかな?」
「あ、はいどうぞ、それと僕の事はアスクと呼んでください。ティアもそう呼びますから」
「では、アスク殿と呼ばせて頂く。以前アスク殿が正虎先生と模擬試合をした際に使用したあの大きな剣についてなのだが」
アルバートは別に剣の事など別段どうでも良かった。ただ、後にお仕えするであろう主君の技量や器の大きさをつまみ食いのような感覚で、見て見たくなったのだ。
「聖剣サマエルの事ですか?」
「そう、それである。それが某の目にはどうもいきなり現れたように見えたのだが、アレは一体何なのだ。あれほどの聖剣は魔法では作りだせまい?」
あの聖剣は一長一短に出せる代物ではない事をアルバートは知っていた。彼の道場にも奇をてらった聖剣ばかりで戦う門下生は多くいるからだ。しかし、そういった輩をアルバートは身近にある一般的な剣で叩き潰してきた。雷を纏った長剣を、炎を纏った二刀流を、水の滴る大剣を、そんなものは無駄だと剣で語るかのようにして、へし折って、潰して、性根から叩き直した。
そんな彼から見ても、一度だけ見たあの大剣は異質と言い表す他に言葉が見つからなかった。何かの皮と何かの肉、それらに生えたようにして纏わり付く金属片で出来た禍々しいスポンジのような大剣。圧し潰して対象を破壊するように作られたものではなく、逆に繊細に何かを削ぎ落すようにして作られたであろう大剣は話の話題にするにしても事欠かない存在と言えた。
「あれはサマエルの力の一つです、常に装備しているには少しばかり重たすぎるので」
サマエルの話しをアスクがし始めると、それに頷きながら適度な合図地を打ちつつ、アスクの説明を長々とアルバートは聞いた。剣の話しは実際耳に殆ど入っておらず、その惹きつけられるような声で話す自分よりも強いかも知れない相手に純粋に心が躍ってそれどころではなかったのだ。
「アスク殿は面白い物を持っておられるな。今度アスク殿ともぜひ手合わせ願いたいものだ」
「はははは、がっかりするかも知れませんよ?僕は剣を扱うのが余り得意なタイプではないですから」
「ご謙遜なさるな、あの構えは剣帝と言われる公爵様と瓜二つと言っても過言ではない」
「僕は・・・随分と過大評価されてるみたいですね。僕もそれなりに頑張っているつもりですが、お父様の背中は一行に見えてきませんよ」
「ほう・・・・某と一緒であるか、某も亡き師の技を受けついだものの、今だにその技を完全に自分のものに出来ないでいる。師がどれほどの努力をしたのか分からんほどだ」
ボーン・・・・・ボーン・・・・
教室が、静かに樹の最上階にある鐘を共鳴させ、静かに振動する。
「お互い、もっと強くならなければ行けませんね」
「フフッ、そのようであるな。時間がある日は声をかけて貰えると嬉しい、一緒に剣を振ろうではないか」
「僕も楽しみです、時間があれば伺います」
鐘が鳴り、授業が始まった。




