天使門 2 一階層と日傘と子犬
エイプリルフールに嘘をつくのを忘れてしまった・・・
~1階~
門に入ると頭上には丁度いい日光の白い太陽があり、白い月が頭上にポツンとある。この足元の雲が無ければ塔の中にいる事を忘れてしまいそうになるほど瓜二つの別世界がここには広がっている。
「亜空間・・・此処まで完成度の高いものは初めて見ましたよ」
「しかしこう晴天だと、キツイものがあるな」
日傘の中でも日差しの影響を受けるティアの表情は傘に隠れていても不機嫌なことが分かる。まあしかし、不機嫌な顔をしていようと、怒りに眉間の皺を寄せていようと、ティアはソレでも子犬のような愛らしさを放つため、俺の感じる空気のようなものが悪化するようなことはなかった。むしろここにきてほのぼのするぐらいだ。
「どうしたアスク、考え事か?」
「いえ、良いものだなぁと思っただけです」
(犬との初めての散歩時間のような、ウキウキやワクワクと言ったものが混ざって、心を様々な方向から刺激している)
犬を飼ったことは一度もない俺が言うのは何か違うような気がするが、気分的には似たようなものだろうと思う。
「・・・?ああ、そうだな。確かにこの景色は絶景だな。亜空間の中だと言うのに、地平の彼方までこの空が続いているようだ!」
いつから景色の話になった?俺はさっきからティアの話しかしていない・・・が、ここで態々訂正するのも本気度が増したようでそれもそれで余り好ましくないな。
「え・・・?景色?・・・ああ、ハハハッ・・・ティアは大袈裟ですねぇ」
「この傘がないと日光が強すぎるのが問題だがな!」
傘を上下に揺らしながらガミガミと文句を垂れ流すティアといると、本当にこの地平の彼方まで続いているかと思われる道中も暇ではなかった。
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■サタン印の日傘 超越系
効果:自動防衛プログラム 破壊不能 指定反射 自動修復 スキルブレイク
所持者認証システム カステラ創造 紅茶創造 スキル製造
材料:ナゾです
説明:様々な異世界の頂点に位置する生物からはぎ取った素材でサタン自らが自作したもの。異世界の様々な技術が濃縮された兵器。友好の印として吸血鬼の王へ送った至高の一品だ。
現在の所有者 ティア・ゼパル
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長い空を旅し続けて、階段のある場所までやってくると、この塔で初めて見る魔物、天使の群れがその階段を守護していた。
「アイツらが天使・・・・・・・・・羽のついたオッサンですね」
「羽のついたオッサンだな・・・・まだ服を着ているだけあってマシか」
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ステータス
名前:
性別:男
称号:
種族:天人族
レベル:100
HP:25000
MP:25000
攻撃力:7500
防御力:7000
素早さ:5000
幸運:70
通常スキル
槍術8
エクストラスキル
ユニークスキル
加護
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あのオッサンたちを鑑定していなければやられていたのはこちらかも知れない。ステータスはとても高くスキルのレベルも高い。何よりも数が数だ、百匹・・・いや、百五十匹はいる。
小学生のような大きさのオッサンが百五十匹・・・三十人で一クラスなら、五クラス分の小学生と戦うことになる。戦いにおいて数は力なのはこの世界でも変わらないはず・・・ならここは遠回りをして裏側に周って階段にワープで飛ぶか・・・?
「うっし、やられる前にやるか」
やる気満々な彼の目には、一触即発の状態だというのに恐怖も焦りも感じられない。慢心と蛮勇が片方の目に一つずつ宿っているようだ。そんなティアに触発されたのか、脊髄反射で考えもなしに、
「そうですね、どうします?」
などと言っている。
「アスクのワープは、二回続けて使うことはできるのか?」
やられる前にやるとは逃走の事だったのか?それなら全力でその案に乗ろう。
「はい、MPの消費が激しいのであまり使いたくないですが・・・四回までなら余裕をもって使えますよ」
「なら瞬間移動で真っ先に相手の指揮官のような奴を狙って叩けば。統率が取れなくなるはず」
逃走ではなく奴らを迎え撃つための闘争に使えと――――つまらんことを思い付く今日という日はきっと厄日だろう。ティアがいなければ部屋に一日中引き籠っていた。しかし何事もそう上手くはいかず、ティアの要望を結果的に答えることにした。
「なるほど・・・わかりました」
毒薬をあまりティアや他の生徒の前で使いたくはないが・・・手元さえ見られなければ毒よりも毒の魔法が主流の世界だから怪しまれないだろうか?
「ではティアは僕が戻った後に、正面から敵を叩いて下さい」
「任せろ」
敵司令官を先にこの世界から解き放ち、残りの天使達を風魔法で毒を送って痙攣させる。毒の製造には今回ハナシバを使用した。この毒は前世でも取り扱ったことがあり、記憶の断片ではお寺にあったハナシバを、団子の材料に加えて住職を昏倒させたというものだったが・・・今度の餌食は僧侶ではなく天使となった。
五分後には既に全てかたづき、全身返り血だらけの真っ赤なティアと真っ赤な俺が立つのみ。そして槍やら羽やらを回収してから俺達は階段を血の雫をポタポタと垂らしながら上がる。
「返り血はどうします?」
「どうするも何もまたどうせ被るだろ」
「・・・・今度も正面突破ですか」
MP管理に気を付けて進むしかないようだ。




