天使門 1 エンジュブラーナ
修行編スタートです。
今回の修行編は残念ながら可愛い女の子は登場しませんが、ゴツイ少年なら出てきます。
竜王との出来事があってから既に数週間ほどたったとある日。俺は、とある塔を登る準備をしていた。無論、特訓のためだ。考古学には興味がない。
基本ダンジョンに単独で進むということは、生還への確率を極端に下げる自殺行為として知られているが、そういった死地に赴き感覚を研ぎ澄ませ続けなければ、五年後に彼女に会う時に碌な成果も挙げられず殺されるだろう。
しかし、こういう考えの冒険者はよくいるのだろう。ギルドが一人でダンジョンに潜るにはある程度の実力を認められているか特別な事でもない限り、パーティでの行動が義務づけられている。
よって、現在そのダミー人形を手作業で作っているワケだが・・・・
(服に詰める魔物の肉が足りない・・・)
・・・・すると放課後は何をすればいい?毒も十分ある、部屋の本も読みつくした。レポートも順調、筋トレなどせずとも猛獣と戦っていれば自然に体にはしっかりとした筋肉が付く。・・・・何もすることがないじゃないか。
料理とかしてみるか?・・いや、下手に触れるとキレそうな奴がいるからパスだな。ショッピングはどうだ・・・いや、必要な物は使用人に何とかしてもらえばいい。学園にあるという部活はどうだ、否、ジャンルが違う。散歩・・・少々爺クサい。一人で食べ歩き・・・・まあアリだな。
そうと決まれば、食べ歩きに必要な金を持って王都へ向かおう。しかしその行く手を遮る刺客が一名、門で日傘をさして佇む一人の中性ボーイがいると誰が予想で来たことだろうか。
「ティア!どうしてこんな所に立っているんです?」
「お前一人で強くなろうとしてるだろ!俺も行くからな」
(これ以上アスクにレベルを離されて堪るか)
「・・・何があっても知りませんよ」
(喰い歩きについて行きたいというわけじゃあないんだろう)
なによりその水色の髪から覗かせる赤い目は、どこからか決意のような物を感じさせ、俺はそれに従うように行先を変更し、例の塔へと足を運ぶことに。
「案ずるな、俺は不死身だ」
「ハハッ、冗談じゃないのがまた質が悪いですねぇ・・」
「行くぞアスク、準備は出来ている」
勇ましいティアの背中は小さく、耳がピクピク動いて羽が体の動作に合わせるようにして歩く姿は、吸血鬼というより子犬を連想させる。この小さい友に不死身と言っても怪我はさせたくないと思うのは、この場にいたなら誰もが思う事だろう。
「分かりました・・・・では、ワープしましょうか」
合図をティアにしてから、その場所までワープする。今回の目的地、【天使門】へと。
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~天使門~
「よっと」
「これが天使門か・・・随分と高い塔だな・・・!」
一度下見に来てはいるものの、改めて見るとやはり迫力を感じさせる。全体が白く、色の原因となる塔の素材に関しては未知そのものだ。
塔の周りには入ることの出来ない窓のようなものが幾つか見ることが出来る。そしてその存在を隠すように巻き付いている金色の雲が、ふわふわと蛇のように螺旋に巻き付くようにして幻想的な塔の雰囲気を引き締めているようだ。
最近になって出現し、既に何百という冒険者が吸い込まれたが誰一人として帰ってきていない。そして誰が流布したのかは知らないが、龍神の住まう禁忌の地と噂されている。あらゆる冒険者を飲み込む不動の魔塔だ――――きっと面白い話が幾つも転がっていることだろう。
「胸が高鳴りますね」
「あぁ・・・!・・・・行くぞ!」
天使門・・・・・いててててててててて、痛いよぉおおおおお。
だが、それが良い。それで良い!




